【Chara】『Chara breaking hearts
Tour 2010』2010年3月27日 at JCBホ
ール

撮影:Hajime Kamiiisaka/取材:ジャガー

舞台上に敷かれた絨毯に寝そべりながら挑発的に歌ったり、“みんなは好きな人いるの? 恋とかしてる?”と何気ない話を観客に投げかけて反応を楽しんだり、バンドメンバーの心地良い演奏に体を揺らし、無邪気に飛び跳ねたりとCharaは自由に楽しむ。その姿は、己を開放することで観客との絆を深めているように思えた。
 最新アルバム『CAROL』を軸に行なわれてきたツアーも残すところ、今日と明日の2日間。独創的な重ね着のワンピースをまとったCharaが颯爽と登場し、1曲目「Gift」から客席にハイトーンな叫びを浴びせると会場が沸いた。そっと寄り添うようなウィスパーヴォイスだけでなく、躍動感あふれる力強い歌声を響かせ、楽曲の世界を広げていく。代表曲のひとつ「やさしい気持ち」はもちろん、メドレーで「call me」「Junior Sweet」などを散りばめ、歳月が経っても色褪せずに存在する楽曲たちにCharaの一貫した愛を感じずにはいられなかった。
 さらに誕生日を迎えたスタッフへのサプライズソングが飛び出したり、気合いの入った舞台監督が目の上にたっぷりとラメを塗って終始ライヴに臨んでいたなど、Charaを囲むスタッフ、バンドメンバーも愛に満ちていると実感。今夜のラストナンバーは出発をテーマにした「Tiny Tiny Tiny」。このステージは終わってしまうかもしれないが、これからも彼女は素晴らしい楽曲を生み出し、その度にこうやってひとりひとりに届けようとする。そう考えると、終わりは同時に始まりを告げる楽しみに変わっていた。



セットリスト

  1. Gift
  2. レモンティー
  3. ミスターロンリー
  4. エレガンス
  5. ひこうき雲
  6. やさしい気持ち
  7. しましまのバンビ
  8. Li Li Co
  9. 片想い10.月と甘い涙
  10. 70%夕暮れのうた
  11. この遊びを恋とわらって
  12. Charaメドレー(・call me ・Junior Sweet ・Happy Toy ・Duca)
  13. 世界
  14. 眺めたい
  15. I miss you
  16. breaking hearts
  17. 小さな手のひら
  18. Tiny Tiny Tiny

Chara

68年生まれのシンガー・ソングライター。彼女の歌のテーマは徹底して「愛」である。90年のデビュー・シングル「ヘヴン」以来、それはずっと変わらない。自由奔放な歌姫チャラが体験したさまざまな愛のカタチ。すなわち、彼女を取りまくサークル(家族、恋人、友人、自然)を通して感じたこと……安堵だったり、孤独だったり、高揚だったり、エロティシズムだったり……。それらをモチーフとしたリアルなメッセージは、ソウル/R&Bを消化したスウィート&メロウな極上メロディを媒体とし、リスナーの胸に突き刺さっていく。
名作揃いの彼女であるが、俳優である浅野忠信との結婚〜出産を経験し、97年にリリースされた極めてパーソナルな6thアルバム『ジュニア・スウィート』は実に素晴らしい。切なくもハッピーな響きをもつ至高の楽曲群は、ありのままのチャラが育てた「愛」の結晶ともいえるだろう。——今もっとも信頼できる女性アーティストのひとり。

アーティスト