【フラワーカンパニーズ】


取材:フジジュン

少年時代の自分に後ろ指差れる自分にはなりたくない

まず、ニューアルバム『たましいによろしく』で、フラワーカンパニーズが7年8ヶ月ぶりにメジャー復帰しますね。資料には“男たちの敗者復活戦が今、始まる!”などと書いてありますが…負けたとは言っていないですよね?

マエカワ

言ってないし、何も変わってないです(笑)。インディーズになった時も別に落ちたとは思ってないし…。

鈴木

負けてはいないよね。ただ、勝ってないだけで(笑)。でも、メジャー復帰というところに、お客さんはあまりピンときてないというか。どこから出そうと音源は聴き続けてくれると思うし、それがメジャーであることはあまり関係ないんじゃないかな?

竹安

“ライヴの本数が減っちゃうかも?”とか心配してる人がいたら、“それは大丈夫!”って言ってあげたいですけどね。

マエカワ

僕らもいろいろ経験もあるから。メジャーになっても、変わらずにできると良いなと思いますからね。

本人たち的にも、単純にアルバムが出ることがうれしい?

マエカワ

そうですね、2年半ぶりですからね。ま、それも年間100本くらいライヴやって、“新曲も作らなあかんね”って言うんだけど、作れないまま時間だけが経って。気付いたら2年半かかっちゃった感じで。そこに焦りもなかったですけどね。

で、完成した新作ですが、今回は圭介さんが弾き語りで演奏していた曲から、形ができてきたそうですね。

鈴木

冒頭の2曲、「大人の子守唄」と「この胸の中だけ」は弾き語り用に作った曲なんです。音源に残すつもりもなかったんですが、メンバーが“バンドでやってみようか?”って言ってくれて。

弾き語りの楽曲が入口だったからか、今回は歌モノ色の強いアルバムになったと思います。シンプルだからこそ、何回も聴きたくなる作品に仕上がりましたよね?

マエカワ

あ~、ありがたいですね。そういうアルバムを作ろうって言ったわけじゃないですけど、何回も聴きたくなるような作品を作りたいっていうのは最近、常々思っていたことなので。

鈴木

“こういうアルバムにしよう”って打ち合わせもなく、良い曲をそのままぶち込んでいっただけなんですけどね。

歌詞の面では、“生きるとは?”“大人とは?”というテーマを一貫して歌ってて、自分と真正面から向き合う曲を作り続けていて、辛くならないかなと心配もしてしまいます(笑)。

鈴木

いや、作ってる時の方が楽ですよ。B型なんでね、良いところだけ見て、悪いところは捨ててますから。自分がものすごいカッコ良いと思って作ってますからね(笑)。歌詞が浮かばない時は苦しいけど、ここ何年かは苦しいこともなくて。むしろ、曲を作っている時が一番楽しいかもしれない。

弾き語り用の曲ということで、今回はよりパーソナルに迫っているところもあるのですか?

鈴木

意識してないけど、そういうところはあったかもしれないですね。ま、昔から個人的なことしか歌ってないですけど(笑)。

マエカワ

でも今回、他の曲を聴いた時もより自分のことをさらけ出しているような気はしたけどね。普段喋ってることを歌えばいいやくらいの世界観の歌詞が多かったから、それはすごく面白かったですね。それが良い曲だと思ったから、それがバンドでできるっていうのもうれしかったし。

「この胸の中だけ」は同時発売でシングルとしてもリリースされますが、この曲ができた経緯について聞かせてください。

鈴木

いや、本当に気軽に作った曲で。何の時間もかけずに作りましたね。ただ、いつもと違ったのは弾き語り用の曲だと、言葉がないと何が言いたいのか全然分からなくなってしまうので、言葉と同時に曲を作った。今回のアルバムは言葉も付いた段階で持っていった曲がほとんどなんです。

「この胸の中だけ」は胸の中の少年時代の自分と対話している設定ですよね。少年時代の自分に向けて歌うというのは、圭介さんの基本スタイルなのかなとも深読みしたのですが。

鈴木

どうだろ? でも、少年時代の自分に後ろ指は指差れたくないですね。“なんだ、大人になってそんなふうになっちゃったのか”とは言われたくないです(笑)。少年時代の自分に胸張るとまではいかなくても、あの頃の自分と目を見て、対等に話せる大人にはなれていたいですね。この曲を書いた時も、“なんだよ、あんなに好きだった怪獣の名前も忘れたのかよ! それで、よく平気で39歳とか言ってんな!!”って。“怪獣の特性や足跡まで覚えとったのに!”って言われたら嫌だから、復習し直しましたよ、ウルトラQから(笑)。そういう思い出し作業をしつつ、新たな情報も得て今の自分を活性化させて、忘れたらまた思い出し作業をする。その繰り返しで良いんですよ。

小西

アハハ。忙しいね、それ!(笑)

フラワーカンパニーズ

名古屋出身のたいへん素晴らしいロック・バンド。鈴木圭介(vo)、竹安堅一(g)、グレート・マエカワ(b)、ミスター小西(dr)という個性あり過ぎの4人から成る。
彼ら最大の魅力は、鈴木圭介のやんちゃくれなパンク・テイストと演奏陣のオールド・ロックへのオマージュが混ざり合い生まれる、何とも風変わりな味わい。すなわち、攻撃性とイナたさが同居したとでも言おうか、とってもワン&オンリーな風情である。また、日本男子の哀愁を醸すペーソスに充ちた詞作も聴きどころ。楽曲にいっそうの深みをもたらしている。もっと売れるべきだと心の底から思う。

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