【1000say】


取材:道明利友

ファンタジックだからこそリアルが浮き立つ

現在のスタイルへ行き着いたのは、どんなきっかけで?

MAN

今はいわゆるエレクトロ・ミュージックとかはよく聴くようになったんですけど、もともとそういうのが好きだったり、テクノとかハウスとかっていうジャンルがやりたかったわけではなくて。自分のイメージしたものが“これってハウスっぽかったんだ”みたいに、あとでつながることが多いんですよね。こういうメロディーがあってこういう音があったらいいのにな、みたいなイメージから入って、それを固めていく過程でエレクトロな要素だったりダンサブルなリズムだったりが段々追加されてきた、というか。僕はもともとOasisとかWeezerみたいなメロディーの良いギターバンドが好きで、その好きなものに自分のイマジネーションからどんどん音が追加されていって、それを形にするためにこのスタイルになった感じなんです。

あるジャンルにどっぷり浸かっていないから、逆にジャンルを超える面白さが生まれるのかもしれないですね。

MAN

そうですね。微妙な勘違いとかもあったりして(笑)。“ドラムンベースってこんな感じだよな?”みたいなイメージで曲を作ってみたら“本物のドラムンベースではないんだけど、これ面白いじゃん”みたいなことになったり。

APIさんは、曲作りではどうイメージを広げるんですか?

API

曲を作る時は、何かに刺激を受けて、自分の中で世界観を作って、それを表現するっていう感じですね。本だったり、ニュースだったり、映画だったり、ドキュメント番組だったりとかいろいろなんですけど…。そこで何かに触発されると、曲ができることが多いんです。

触発を受けることが多いのは、例えばどんなもの? 影響を受けたもの、っていうことでもいいのですが。

API

私は音楽よりも映像の方が多いんですけど…。メンバーみんな、ジブリが好きだったりとかしますね。で、例えば…私が書いた曲だと、今回入ってるのは「HAL-002」なんですけど。なんでロボットだったのかな(笑)。

『2001年宇宙の旅』にも“HAL”ってコンピューターがありましたね。そういうちょっと近未来的なイメージを感じる曲も多かったんですけど、その世界観の源って…。

MAN

そういう“ファンタジック”なものを大枠として、自分たちの世界観にしていこうって話したこともありました。バンドのコンセプトとして。僕個人的には、音楽でしか表現できないものを表現していきたいなって気持ちが非常にあるんですけど…。音の中では、きっと僕らは未来にも行けるし、空だって飛べるかもしれないし。そういう自由な観点で曲と歌詞を作るのが楽しいんです。それと、自分が訴えたい何かリアルなものを直接的に歌詞にするより、ファンタジックな世界観を借りて描く方が逆に伝わりやすいのかなって思ったりもして。

ジブリの作品は、まさにですよね。環境問題とか、現実とリンクしているファンタジーっていう感じの作品が多くて。

API

そうですよね。すごく深いものを訴えてたり。

MAN

うん。さっきの「HAL-002」は、友人のロボットがいてそれが人間に見捨てられるっていう話で。ロボットが主人公って設定は現実の世界にはあり得ないけど、それってなんか切ないよなとか、逆に自分はいくら時が経っても友情関係は大切にしてたいなとか、訴えかけるものがいろいろあるんじゃないかなって。ファンタジックなものを使うことによって、逆にリアルが浮き立つみたいなやり方が面白いなと思ってるんです。

1000say

ア・サウザンド・セイ:大学在学中にMANを中心に結成。エレクトロを基調としたバンドサウンドは、デジタルとアナログを包括し、彼らの掲げるコンセプト“次世代ファンタジー”を体現する。

アーティスト