【DJ片平 実（Getting Better)】日本
のロックで思いっきり踊っちゃおう！

UK、US、日本など、世界中でリアルタイムに進行しているロックを中心に、長きに渡りスピンし続けるDJ 片平 実。ロックフェス『ROCK IN JAPAN FES.』『COUNTDOWN JAPAN』のDJ BOOTH公式RESIDENT DJとしても知られる彼は、94年からDJ活動をスタート。96年の2月から下北沢Club Queで始まった自身がオーガナイズするパーティ『Getting Better』は、今年で12年目を迎えるほどの人気ぶり。まさに、キッズの心をガッチリ掴み続けてきたロックDJなのだ。

そんなDJ 片平 実が、日本のバンドの楽曲をDJミックスしたCD『ROCK THE MIX』をリリースする。これがまた“国内初のオフィシャル・ロックミックスCD”というキャッチに負けない、全31曲74分というCDに収まるギリギリいっぱいまで曲を詰め込んだ大ボリュームの作品。片平が全国のフェスやパーティで行なっているDJを、そのままパッケージしたかのような本作は、レコード会社の枠、新旧の時間枠をも超えた、アーティストたちの楽曲がずらりと並んでいる。

メジャーのフィールドで日本語4つ打ちロックを定着させるきっかけにもなったASIAN KUNG-FU GENERATIONの「君という花」から幕を開けるCD上のDJパーティは、そのままACIDMAN「FREE STAR」、OCEANLANE「Light UpMy Soul」と間髪入れずに突き進んでいく。Dragon Ash「Fantasista」からBRAHMAN「Handan's pillow」という意外性たっぷりの流れも、DJミックスだからできること。そして、BEAT CRUSADERS「FEEL」から渡邊 忍×小泉今日子「DRAINED CHERRY」といったあたりは、楽曲のサウンド面だけでなく、アーティスト同士のつながり感でばっちりミックスしている。

CDを聴いていくと分かるが、VOLA&THE ORIENTAL MACHINE「An imitation's superstar」からPOLYSICS「PEACH PIE ON THE BEACH」のエレクトロニックなライン、GRAPEVINE「大脳機能日」からScoobie Do「What's Goin' On feat. RHYMESTER」のファンキーなラインなど、近いサウンドがパートごとに点在している。そこを違和感なく、ナチュラルに聴かせられるのがDJのスキルでもあるのだ。LA-PPISCHのジャパニーズスカロッククラシック「パヤパヤ」、TOKYO No.1 SOUL SET「Sunday」、サニーデイ・サービス「魔法」といった懐かしい曲が入ってるのもグッと来るポイント。また、東京スカパラダイスオーケストラ「DOWN BEAT STOMP」、SOIL＆“PIMP”SESSIONS「マシロケ」など、ロックバンドではないが、ロックのマインドを感じさせる曲ならプレイしてしまうところにも注目したい。変にジャンルに凝り固まらず、自由度が高い選曲も彼の魅力のひとつだろう。そして、くるり「ワールズエンド・スーパーノヴァ」からラストのGOING UNDER GROUND「ハミングライフ」にかけての流れは、ダンスビートから心地良さへと向かっていく、まさに一晩のパーティが終わったような清々しさを感じるほどだ。

さて、世の中の多くのミックスCDは、ヒップホップやテクノ、ハウスといったクラブミュージックが中心。だが、日本語ロックでもアップリフティングに踊れるんだということを、この作品は教えてくれる。クラブミュージックよりもBPMが速いロックだけに、短いタームで曲が次々とチェンジしていくスリリングさは、ある意味、ロックの持つ爆発力を最大限に引き出していると言ってもいい。さらには、こうしてつなげて聴くと、もともと知ってる曲も違って聴こえるという新たな発見もできる。ロックで踊る日本のパーティといえば、80年代から現在も続く大貫憲章の『LONDON NITE』がパイオニアだが、そことはまた違った視点で繰り広げられる、ロックのダンスミュージック解釈がここにはある。片平のパーティが好きな人はもちろん、未体験の人も、本作でロックで踊る楽しさを体感してほしい。