【高鈴】


取材:石田博嗣

次につながる新しいものができた

2年半ぶりのアルバム『ヒビノウタ』が発表されましたが、制作に入ったのはいつ頃ですか?

山口

昨年の1月末に打ち合わせをして、2月末にはスタジオに入ってましたね。でも、そこから作ったものは1曲もなく…“どういうふうにするか?”ってところから始まったんで。

山本

前のアルバムができてすぐぐらいから曲はあったんで、結構溜めてたんですよ。今までの自分たちが持っているアコースティックなものを残しつつ、今までと違うような曲を作る努力をしてました。

山口

シンプルというか、分かりやすい感じの曲をデモで作って、いろいろ実験的に試したりしてましたね。時間がものすごくあったんで、“どういう曲を求められているのか?”ってことを考えて…それはレコード会社さんはもちろん、リスナーさんとかファンが何を求めてるのかって。

山本

前のアルバム以上に、そういうことについてふたりで話し合いましたね。特に“自分たちにできるポップってどういうもんやろ?”って。一般的に言われるポップなものというのが、どんなに頑張っても、まったく自分たちには作れないんで(笑)。なんか、違和感のあるものになってしまうんですよ。だから、そこはすごく悩みました。でも、結局は“無理する必要はないな”って。きっと、お互いの中に焦りがあったんだと思うんですよ。“ポップなものを作らないといけない!”っていうね。

山口

要するに、自分たちの音楽というものを守ろうとしてたんですよね。それが剥けて、いろんな人に伝えるっていうか、共感してもらうっていうところで心がオープンになって、やりたい音楽が見えたというか。

では、アルバムはどんな作品にしようと? 肌触りもやわらかで、ずっと浸っていたくなる作品に仕上がってますが。

山本

そういう空気感は出てると思いますね。緩い空気の中でレコーディングをやってたんで(笑)。悩みつつもゆったりとしてたから、そういうものが音に出てると思います。

山口

前作は1曲ごとにアレンジャーが違って、すごく展開のあるものだったんで、それと真逆なことをやりたかったんですよ。前作は自分らの足が地に着いてないのに作業が進んでいった感じがあったから、今回は歌や演奏の細かいところまで高鈴をちゃんと埋め込むことを一番に考えてましたね。今回はプロデューサーがひとりだったんで、プロデューサーの伊藤ゴローさんとそこをしっかりと話し合ったし、頭の中に空気感や高鈴の間みたいなものが常にあったから、それをどう音に変えるかって感じでした。

このアルバムを作って得れたものも大きそうですね。

山本

大きいですね。高鈴にとって次につながる新しいものができたと思ってて…ファンの人から今回のアルバムは高鈴が歩み寄ってくれている気がするって言われてことがあったんですね。意識はしてなかったんですけど、ほんとにそうだなって。今までも歩み寄ってるつもりだったんだけど、まだまだ歩み寄れてない自分が出てたなって。でも、今回はファンのことも考えた…例えば、応援ソングもあるし、かと言って昔の高鈴も失ってない。そういうことに挑戦したんで、新しいファンにも昔のファンにも聴いてもらえるような、新しいものができたと思います。

山口

新しい高鈴、これからの音楽人として自分たち…そういうものが始まるのに、すごくいいきっかけになるアルバムだと思いますね。

高鈴

コウリン:1998年京都にて結成。“鈴のように繊細で日本的な響きを大切にしたい”との思いからユニット名を“高鈴”と命名。 2003年にシングル「真夜中の後悔」でメジャーデビューを果たす。

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