【スコット・マーフィー】


取材:道明利友

切ない時に曲を書くのが、僕にとっては一番のセラピー

今回も選曲がすごく面白いです! まず、尾崎 豊はどんなところが好きになって「15の夜」をカバーしたのですか?

尾崎 豊は、どの曲もメロディーとか歌が好きで。声もすごいパワフルだよね。インターネットで調べたら映像も観れたんだけど、なんて言うんだろう…オーラがあってカッコ良いなと思った。

あの人のカリスマ性は外国の方にも伝わるんですね。それと、「15の夜」は日本の若者の心情を描いた物語ですけど、こういう世界観にはどんな印象がありましたか?

僕の15歳の時は…ウチの両親は、僕が15歳の時に離婚して。その時はすごい傷付いて、僕にとってはヘヴィな時期だったんだけど…。ちょうどその時、ギターの勉強を始めたり、ニルヴァーナを知ってすごい助けられたというか。ニルヴァーナとか、いろんな音楽に。日本のティーンエイジャーも、その時の僕が感じたのと同じようなインパクトがあったのかな、って。『15の夜』の歌詞を読むと、そういうのがなんか分かるというか。もちろん僕は今ティーンエイジャーじゃないけど、なんかすごいインパクトがある歌詞だった。

音楽に心が救われることってありますよね。その対象が、僕たち日本人には尾崎 豊でアメリカ人のスコットさんにはニルヴァーナで、っていう…。そういう感覚は万国共通なのですね。

そうだね。文化は違うけど、やっぱりみんな同じ人間だから。どんな人でもそういうことを感じるのは、どこでも同じかもしれないよね。

もう一方のカバーは、大塚 愛の「プラネタリウム」ですが、この曲を知ったのは、どんなきっかけで?

大塚 愛は、ALLiSTER時代に初めて日本でツアーをやった時にたまたま耳に入って。でも、誰が歌ってるかは分からなくってCDショップに行ったら、大塚 愛のCDがあって…カワイイなと思いました(笑)。ネコがいて、風船を持ってて(「ネコに風船」のジャケット写真)。それで『プラネタリウム』も聴いてみたら良い曲だなと思って、カバーしてみようって。

あの曲の雰囲気も残しつつ、パンクにアレンジしているのが面白いですね。今回収録されているオリジナル曲を聴いても、そういうものをちょっと感じたんですけど…。楽しくてノレる曲の中で一瞬センチメンタルなパートが入ってきたり、歌詞もシリアスだったり。そういうギャップも興味深いというか。

オリジナル曲の『Things I Should've Said』も元彼女のことを歌った曲だから、『プラネタリウム』とちょっと似てる気がする(笑)。何かで嫌なこと、辛いことがあったりした時に、僕にとって一番のセラピーになるのは曲にすることで。ハッピーだったらそれを曲にしようとはあまり思わないけど、切ない時にいろんなことを考えて、それを曲に書いたらちょっとセラピーになるから。

音楽を聴くことで心が救われることはあるし、自分の気持ちを吐き出して曲にして歌うことでも救われる部分があるのですね。

そうだね。だいたい僕はバーとかに行って、飲みながら曲を書いてるのが多くて…。そういう時は友達も一緒にはいなくて僕ひとりだけだから、いろんなことを考えて、そういう思い出とかが出てきたりするからかな。自分の曲では、僕の人生のことを書いてるというか。曲はアップテンポでファストだけど、歌詞にはそういう気持ちが書かれてたりするギャップも面白いんじゃないかな、って。

英語の歌詞も辞書で意味を調べて読んでもらえたら、日本のリスナーはもっと楽しめそうですね。また、この『BattleGround』と同じ日に、オレスカバンドをバックバンドに迎えたライブツアーのDVDもリリースされますが、日本でのライヴのオーディエンスには、どんな印象がありますか?

ALLiSTERの時はやっぱり若い人が多かったんだけど、今はいろんな歳の人がいるのにちょっとビックリした。たまにね、なんか…前回のツアーは、60歳ぐらいの人が目の前にいて、“すっごいなぁ…”って(笑)

その人、気合い入ってますね!(笑)

ねっ! 目の前でモッシュしてて、危ないなぁと思ったけど大丈夫だった(笑)

カバー曲をきっかけにしてスコットさんのことを好きになった大人のリスナーも、きっと多いんでしょうね。

うん。あと、テレビとかも最近出させてもらうようになったりしたから、その効果かなって。いろんな人が増えたのは。それは、すごい良いこと。基本、僕はチャレンジャーだから何でもやってみたい。何でも経験したい!

スコット・マーフィー

スコット・マーフィー:アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ出身、在住のロックミュージシャン。95年にメロディックパンクバンド、ALLiSTERを結成。01年の初来日時から日本に傾倒し、独学で日本語を勉強。現在ALLiSTERとソロ活動を両立して活躍中! 

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