【D'ERLANGER】種も仕掛けもないリア
ルな“現在”の音

L→R Tetsu(Dr)、kyo(Vo)、SEELA(Ba)、CIPHER(Gu)

バンド名を掲げた前作から約10カ月。メジャーデビュー20周年を迎える今年の新作は、なんとセルフカバーアルバム! どんな想いで本作を作り上げたのか、またそんな作品を完成させた現在のバンドのテンションがどんなものなのかを直撃した。
取材:土内 昇

今作はセルフカバーアルバムなのですが、やはりデビュー20周年ということで?

Tetsu

資料には"20th Anniversary Album"と大きく書いてますけど、特にそういう意識はなくて…去年ぐらいから海外でライヴをするようになったんですね。台湾と韓国でやって、今年も台湾が決まっていて、アジアにちょくちょく行くようになったんで、隙あらばアメリカやヨーロッパにも行きたいと思っているんですね。だから、名刺代わりのものがあればっていうところで作った感じですね。

なるほど。前作『D'ERLANGER』にも過去のライヴ盤のみに入っていた曲をセルフカバーされていたので、モード的にもそういう感じだったのかなと思ってました。

Tetsu

そう言えば、入ってましたね。ぶっちゃけ、その場しのぎなんですよ(笑)。単純に日本だけじゃなくて、いろんな国でも売られるといいなっていう感じだったんですよね。新しいアルバムっていうのはどうにか入手できるじゃないですか。だから、昔の曲を録るのもいいかなって。

CIPHER

聴きたかったんじゃないですかね、お客さんも。だから、やってあげたっていう。ちらり、やさしさです(笑)。俺がD'ERLANGERのファンやったら聴きたかったし、喜んでくれる人がいるだろうから、"良かったっしょ?"って(笑)。

どの曲もオリジナルよりも荒々しくて、尖ってました(笑)。でも、リアレンジするのではなく、ほぼオリジナルのままなんですよね。

CIPHER

逆に、なんでそう思うんですか? "あの頃じゃない"というのを見せつけたい…という意味で?

単純に"今のD'ERLANGERの解釈で昔の曲をやるとこうなる"みたいなものが詰まっているのかなと思ってたんですよ。

CIPHER

復活してからも昔の楽曲は当たり前のようにライヴでやってるんで、それをスタジオ盤でガラリと変えるっていうのは…まぁ、十何曲もあるうちの1曲とかだったらそういうことをやってもいいかもしれないけど、基本的にはそういうものではなしに、"きっと、この感じのものをCDで聴きたいやろな"っていう。だから、種も仕掛けもないリアルな感じ…"現在"の音ですね。

「LA VIE EN ROSE」が英語バージョンになっているのは、海外を意識してやってみたという感じですか?

Tetsu

そうですね。そういうのもあっていいかなっていう感じで。なんかね、多国語で歌いたかったみたい(笑)。

CIPHER

普段も日常会話は英語ですからね(笑)。

…とのことですが、kyoさん(笑)。

kyo

英語ですか…。やっぱり、日本語で歌う感じとは違いましたね。

CIPHER

そらぁそうやろ!(笑)

kyo

なんかね、気持ちの持って行きかたが違うっていうか、取り組みかたが違うんですよ…って、それもそうだよな(笑)。

CIPHER

ええよ、英語でしゃべって(笑)。

kyo

まぁ、遊び心っていう感じかな。そのわりにはプレッシャーはあったけど(笑)。海外でリリースするっていうことも考えて、英詞っていうのもあっていいんじゃないかっていう意見もあって、それでトライしたんですけどね。英語バージョンを一番聴いてみたい曲だったし。

そんな今作のレコーディングはどんな感じでしたか?

Tetsu

やり慣れた曲なんでパッとやればパッとできるんですけど、ちょっと待てよと。やっぱり20年ぐらい経た曲だから、いろんな思い入れもあったりするんですよ。でも、それを考えたらキリがないんですよね。だから、そういうことを考えるのはやめて、"なるようになるかな"ってやったというか。

SEELA

意識して、こだわらないようにしたかな。深く考えずに。レコーディングはレコーディングの感じがあるから、ライヴでやってるからって変に考えずに、その時の感じでやったっていうか。

kyo

歌を録るのは最後なんで、歌を録る前までは個人的にいろいろ細かいことを考えていたんだけど、出ている音のテンション感や温度だったりにすごく強いものがあったから、純粋にそれに乗っかりましたね。

確かに、それが音に出てますものね。そんなD'ERLANGERなのですが、復活してアルバムを3枚出して、コンスタントにツアーも行なっていて、さらにセルフカバーアルバムも完成させた現在のバンドのテンションはどんなものなのでしょうか?

kyo

やりたいことがたくさんあるし、それを実現させようとする力もあるし、この4人で出す音が楽しいからやっている…"再結成します"ってちょっとやって、また何年後かにちょっとやるっていうんじゃないんで、バンドとして当たり前のことができているっていう感じですよね。

SEELA

やっている側は"再結成"とか意識してないっていうか、普通にバンド活動をしている…再結成した時もブランクを全然感じなかったしね。だから、"もう再結成って言われんでもええんちゃう?"って感じですよね(笑)。

CIPHER

復活ブームになってるから"再結成したバンド"として見られてしまうけど、そこもフラットに"まあまあ、そういうのはええやん"っていうところで、普通に当たり前の活動がやれてますね。まだ達成できないこと、実現できてないこともあるんで、まだまだこれからですけど。満足してないんでね。復活後のD'ERLANGERっていうのは、基本的に自分たちで事務所を立ち上げてやっているから、制作にしても、何にしてもメンバー発信なんですよ。だから、知らないこともあったり…この世の中、黒いところっていうか、政治力やお金とかで簡単にできたりするじゃないですか。そういうものがあったら俺らも使いたいんですけど、西川きよしばりに小さなことからコツコツと自分たちでやってます(笑)。

Tetsu

今のバンドのテンションは海外に向いてますね。去年、海外でライヴをやってみて楽しかったんですよ。想像できないことが起こる…善くも悪くもサプライズがあると刺激されるんでね。アジア圏だと近いから日本からもお客さんが来るんだけど、初めて観る人もいるわけじゃないですか。きっともっと遠い国に行けば、その国の人だけになるだろうし、その初めてっていう感覚っていうのは日本でやっている限りないことなんで、その反応が楽しみなんですよ。自信があるから何の怖さもないんでね。

『a Fabulous Thing in Rose』 2010年09月29日発売
cutting edge

  • 【初回生産限定盤】
    CTCR-14690 1200円
    (Image Photo Book等付)

  • 【通常盤】
    CTCR-14691 3150円

D'ERLANGER

デランジェ:1983年の結成後、幾度かのメンバーチェンジを経て、88年にkyoが加入し、現在の4人がそろう。89年に発表した1stアルバム『LA VIE EN ROSE』がインディーズでありながらも3万枚のセールスを記録し、鳴り物入りで90年1月にシングル「DARLIN'」でメジャーデビューを果たすものの、同年12月24日解散。しかし、17年の時を経て、07年に復活! 08年5月には日本武道館公演を成功させ、結成10周年イヤーとなった17年にはオリジナルアルバム『J’aime La Vie』、そしてトリュビートアルバム『D’ERLANGER TRIBUTE ALBUM ~Stairway to Heaven~』を発表した。

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