【たむらぱん】答えはないけど可能性
はある
だから、“ナクナイ”
“自分は意識する、みんなには何か意識される一枚になれば”。そう彼女が言葉を添えた、ニューアルバム『ナクナイ』。愛すべき心と姿が映し出された歌詞とワンダーランドのような音世界に涙も笑顔も誘われる、珠玉のポップ作品集。
取材:竹内美保
先行シングルの「ラフ」で取材させていただいた時、3rdアルバムについて“不器用に生きている感じが表れている”とおっしゃってましたが、まさにそれが伝わってくる作品集でした。そのビジョンは最初から意図して描かれていたのですか?
そんなに意識してなくて…かたちになっているものの中から、今一番ベストだと思える楽曲を選んで収録したんですけど、結果的にそういう方向というか、“すごくぎこちなく頑張っている”というものが集まったな、という感じですね。
でも、結果的とはいえ、そういう作品が集まってしまったことの要因は何かあるのではないかと思うのですが。
そうですね。今回は、3枚目ということでいろいろ思うことが多くて。曲ひとつにしても、“曲が入った作品”という大きな括りで考えてみても、気持ちの変化だったり、前と違う何かを感じられるものにしたい…そこでひと考えしたというか。自分はそもそもこれまでどういうものを作ってきたのか、どういうことをよく言ってたのか…とか、それを改めて考えながら作っていったので、自分自身の気持ちの整理というか、そういう部分もすごく強い感じがするんですよ。で、そういう自分の気持ちがちょっと入っているので、“何が言いたいのか分からないけれど、何かいろいろ思っているんだな”みたいな楽曲が集まったのかなと思います。
再確認や再認識の作業をすごくされている気がしました。いろいろなところに心配りをしながらと言いますか。
再認識というのは、私も結構感じています。前作は勢いで“エンターテインメント”というところにより近付ける曲を選んだりしていたけど、今回は再認識、再確認するとか、音や歌詞の内容も含めて、どういうところが伝わるのかひとつひとつを丁寧に扱った感じがします。で、選んだ曲にも“改めて”みたいなところがいろいろな部分に浸透しているといいますか。それと、今回のタイトルにつながるんですけど、聴き方によって“自分を開拓する”みたいな作品になるかなー、ならないかなー、とも思っているんです。“ナクナイ”というのは、さっきの不器用にもつながるんですけれど。最終的にどういうところが結論になってるかと言うと、やっぱり“答えがない”というのが大きくて。でも、“答えはないけど可能性はある。出口はある”…その100パーセントじゃない部分が多いなと。だから、“断言できる絶対的な自信はないけど、そこに向かっているんだ”という、ちょっとした希望や可能性は信じてみたいなって。そんな思いを込めて“アル”じゃなくて、“ナクナイ”というタイトルにしたんです。不器用な曲たちが集まっているアルバムとしては、すごく適確なタイトルになっているんじゃないかなと思ってます。
確かに、アルバム全体を通して“ナクナイ精神”があらゆるところに織り込まれていますね。
アハハハハ。そうですね。“ナクナイ”は“アル”に向かうための、“前に進む”という行動を起こすための重要な部分というか。で、100パーセントではない、その欠けている部分は進歩するための隙間だと思っているので。
答えがない、その余白があることで、聴き手は自分なりの進歩の仕方を考えることもできますし。
うんうん。人によって答えの種類が違うと思うので、その余白のところを楽しむ要素として扱ってもらってもいいなと思いますし。サウンドとか、ノリとか、雰囲気が楽しい…そういうのもエンターテインメントだと思うんですけれど、余白を作ってそれぞれの人がいろんなことを考えられる余地があるというのもエンターテインメントのひとつかなと思うので。
想像することってエンターテインメントですしね。ただね、最後の「とんだって」は“何の為に人間っているのだろう”というワードを持った究極の問いになっていてウッ!ときました。
ハハハ。私、好きな曲なんですけれど。“これを言っちゃったら、元も子もないだろう”という言葉ですよね。でも、“何なんだろう?精神”は結構好きで。これ、規模はすごく大きい感じで…その大きさを感じてしまったら、身近な問題は小さいことでどうでもよくなるかもしれないし。そういう意味では、この曲が最後にくることで、“自分の周りにはもっと大変なことがいっぱいあるんだから、このくらいだったら何とかなるか”っていう前向きさで終われればいいなと。この曲が自分の再認識、再確認作業を含めての一番の結論の曲なのかなと思っています。
自分の中にある開けたい扉が開く、開けたくない扉が開いてしまう、ということは音楽を聴いてよくあることなのですが、このアルバムは“こんなところに扉はなかったぞ”っていうところが開ける感じがすごくあります。
いいですね、それ(笑)。そういう気持ちが起きてくれたら、今までの人生であり得なかった部分が開いたりとかしてくれたら、私としてはすごくうれしいです。
サウンド面では、ひたすら楽しみました。たむらさんの頭の中で鳴っている音がより具現化されたのかなと思いますし。
あっ、それはすごく思いますし、私自身もうれしかったですね。
「ごめん」は楽団風ですし、「スポンジ」はアウトロでいきなりメタルになりますし(笑)。まー、油断ができない(笑)。
そう! 『スポンジ』の最後は全員がバトルしてほしくて。“ツーバスは絶対やりたい!”とか(笑)。私は、そのちょっとウケちゃう感じが大好きなので、『ごめん』はアコーディオンやクラリネットとか普段は入れない楽器を入れているし、音色も他の曲とは違っていて。新しい試みがあって楽しかったですよ。サウンドやアレンジの面は、純粋に楽しんでいただけると思います。
心でいろいろ感じながら、でも耳では“なんじゃこりゃ!?”的な音が飛び込んでくる。何層もの楽しさがやってくるアルバムでした。
あー、いいですね。そうやっていろいろな部分で要素を感じてもらえるのは。そして、“何だかんだ言っても楽しい!”と最終的に思ってもらいたいですね。
アーティスト
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