【NIKIIE】みんなと想いを共有するた
めに自分をさらけ出している
最初はネガティブに思えるが、それを跳ね除ける力強さが歌声にあり、ポジティブな想いが最後に残るアルバム『*(NOTES)』。自身初のアルバムは、NIKIIEの人間性が垣間見れると同時に、吐露される彼女のリアルな心情に共鳴している自分に気付く作品でもあった。
取材:土内 昇
人前では出さないようにしている胸の奥に追い遣った感情であったり、すでにかさぶたになっている心の傷や未だ生傷の部分に響くアルバムでしたよ。
ありがとうございます。デビュー前から1stアルバムはこういうものにしたいっていう話をしていて、タイトルも“NOTES”にしたいって言っていたんですね。で、なぜ“NOTES”にしたかったかと言うと、中学生時代に引きこもった時期があったりして、誰にも想いを伝えられなかったので、言えなかった感情をノートに書きなぐっていたんですよ。その延長線上に歌詞を書くっていう作業があるんで、ノートたちがあったからこそ今の自分がいるって思うし、そこが自分の根っこになっているから、それを見てほしいなっていう願いからなんです。
なるほど。“音符”のことかと思ってました。
“S”を付けることによって、そこもかけています(笑)。で、もっと自分にとって必要なものだっていうことを強める方法はないかなと調べてみたら、言語学で“()”の前に“*”が付いていると、“()”の内の単語が必要不可欠になるっていうのを見つけたんで、“NOTES”を“()”で囲って、前に“*”を付けたんです。
それだけ思いが込められたアルバムなんですね。収録されている楽曲もずっと歌い続けているものが中心なのですか?
デビューしてから歌ってない曲もあるんですけど、自分の性格とか癖とかに近いものや、すごく葛藤した部分…だから、ヒリヒリしたところにある曲たちを選んだので、作った時期はまちまちだったりしますね。
歌い始めてから今までの集大成っていうよりは、もっと前からの自分が詰まっているという感じですね。
そうですね。曲にした時期は十何年後であっても、その時に感じたものが詰まっているので。だから、23年間の人生のターニングポイントとなっているヒリヒリ感だったり、焦りだとかが入ってます。
でも、その感情というのは外に出したくないものだったのでは?
はい。未だに迷ってばかりだし、日々もがいているし、今も真っ暗な世界が自分の中にあるんです。でも、そこを見せれるようになったのは音楽があるからっていうか、音楽を通して見せれるようになったんですよ。覚悟ができましたね。そういうことを歌うことで、私と同じような状況の人に伝わる…そこを隠したまま伝えようとしても伝わらないので、みんなと想いを共有するために自分をさらけ出しているっていう感じですね。
だから、このアルバムには悩める歌詞が多いのでしょうね。例えば、「魔女」は人の輪に入れない自分が描かれているし。
これは保育園の時のことを思い出して書いた曲で…私、孤立感を常に感じていたんですよ。で、その保育園の遊具のところに丘みたいになっているところがあって、そこでなんとなく太陽をボーッと見てたら、友達から“なんで太陽が見れるの? まぶしくて見れないよ”って言われたんですね。その時に“あっ、私は他の人と違うんだ。みんなには見れないのに見れるということは、私はあの星の人間なんだ”って(笑)。そこから“私は魔女なんだ”って思うようになったというか、“魔女”という言葉が自分の居場所になってたんです。人と違って当たり前って思えて、すごく救いのワードになったんですね。そんな保育園の時代ってトラウマになってるから封印してたんですけど、なんとなく思い返した時期があって…これは上京前に曲にしたんですけど、自分のことを魔女だと思っていた保育園の頃と、居場所を求めて東京に行こうとしている自分が重なると思ったんです。いろんなものを捨てて上京しないといけなかったんで、自分の居場所が東京のどこかにあると信じる…そのパワーをくれたのが“魔女”というワードだったんです。
そういう意味では、「little summer」も人付き合いの苦手さが出た曲?
むしろ人の輪に入ることを全力で拒んでいる感じですね(笑)。この曲はデビュー直前に書いた曲で、アルバムの中で一番新しい曲なんですよ。ちょうど新しい環境に変わった頃で、アルバイトをやりながら音楽をやっていた生活から音楽だけの生活になったんですけど、その環境を作ってくれているスタッフの人たちを信じていたかって言ったら、実は全然信じていなかったんですね。自分だけでやっていたデビュー前って状況がいい時に寄ってきて、悪くなると去っていく人がたくさんいたから、きっと私が悪い時期に突入すると離れていくかもしれないって。だから、自分の本音はなるべくさらけ出さず、相手にも全てを委ねずって感じだったんですよ。でも、そういう気持ちがあるから孤立している気分になっているというか、平和主義っていう言葉に逃げているって思ったんです。状況を良くするためにはぶつかっていかないといけないし、自分の気持ちを伝えないといけない。そのことに気付いた時に書いたのが、この曲で…最初は自分が守りに入っていること自体に気付けていなかったんですけど、そんな自分に気付いて、曲を書くことによって改めて自分と向き合って、周りの人たちに感謝ができるようにっなったという節目の曲なんです。
最初に聴いた時にかなりどん底の曲だと思ったのですが、納得しました(笑)。
全て諦めから始まっている曲なので、どん底と言えばどん底ですね(笑)
でも、アルバムを通して言えることなのですが、そのネガティブな状況を跳ね除けようとしている力強さを歌から感じられましたよ。
それはあると思います。私はネガティブから入ってポジティブに変えていこうとするタイプなので、歌にもそういうものが出ているかもしれない。迷いの言葉だとしても、それをポジティブに伝えようとしているので。
だからこそ、歌から温かさを感じるし、冒頭で言ったような胸の奥に追い遣った感情を突かれたような感覚になるんでしょうね。
私にとっても隠している部分だったりするから、聴いている人も共鳴して、そういう部分を突かれたような感覚になるのかもしれないんですけど、隠しているものだからこそ、共有した時にすごいパワーを発揮すると思うんですよ。弱い部分って隠してしまうんだけど、共感できた時にはプラスのパワーに変わるというか。このアルバムは私の生き方がすごく投影されていて、迷いから始まって、葛藤して、答えを見つけて…そのループなんですよ。それが数年かけてループする時もあれば、1秒単位でループする時もあって、そういうものが全部反映されているので、それらを感じながら聴いてもらえればいいなって思いますね。これを聴いてもらってNIKIIEという人を少しでも分かってもらいたいし、聴いてくれる人の想いや生きている環境に寄りそうアルバムであってほしい。そういう意味でも、自分のノートみたいなアルバムができたと思います。
アーティスト
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