【家入レオ】辛かった時期、“愛”を
テーマに書いた作品
熱を内包したシャープな剣でクールに心に斬り込んでくる…そんな瞬殺さが美しくもある「サブリナ」。強い眼差しとリアルな言葉、そして見え隠れするデリケートさも魅力の家入レオ。注目しておいて、間違いない。
取材:竹内美保
カッコ良くて鮮烈な、でもすごくヒリヒリする感覚のあるデビュー曲ですが、この曲を生み出した背景を教えてください。
『サブリナ』は私が15歳の時に作った曲なんです。女子校に通っていたんですけれど、当時は周りの大人の人に不信感を持っていたし、友達にも私の気持ちを素直に言えなくて…すごく辛くて。でもある時、クラスの明るくてすっごい派手な女の子に“どうしてそんなに派手にしてるの?”って訊いたら、“寂しいから”って答えが返ってきたんです。その時に、“私だけが愛を求めているんじゃない。クラス全員が実は孤独を抱えてる。それを笑いながら隠してるんだ”と気付いて、どうしようもない気持ちになってしまって。それで家に帰ってギターを持ったら、このメロディーがあふれてきたんです。
感情が音に直結するかたちで?
そうです。私、何かの思いが強くなるとメロディーが生まれるんです。で、“あ、この曲は愛をテーマにした曲にしよう”と思った瞬間に、小さい頃に観た映画『麗しのサブリナ』の“サブリナ”という言葉がどーんと浮かんで。そこから書き上げていきました。自分を傷付けながら本当の愛を探している…そんな女の子の姿をこの曲では描いています。
ヒリヒリするし、ギリギリだし。でも、個人的にはあまりきれいにバランスをとろうとしない生き方のほうがいいな、とも改めて思ったり。葛藤しながら何かを自分で見出していくと言いますか。この主人公もそうですし、レオさんにとってはそのひとつの手段が音楽だったのかもしれないですし。
本当にそうで(苦笑)。もう気持ちがギリギリで苦しかったので、授業中も教科書の下にノートを敷いて、必死に自分が思っていることを書いていましたから。『サブリナ』の歌詞も、そうやっていろんな言葉を書いているからこそできたものだと思います。
《偽りの町に 真実は似合わない》の一節はハッとしました。
わっ! うれしい!! そこは私自身も気に入っているんです。みんな傷付きたくないから空想の世界で夢見たりしている。そこで魔法を解いてしまうようなことを言うと、“何で!?”って言われる対象になってしまう…そういうイメージで書いた言葉ですね。
苦悩や葛藤があって、これだけの楽曲が生まれた。結果的にはもちろん良かったわけですが、その過程を考えると辛そうだなと…。
(笑)。でも、私だけじゃなくて、たくさんの人が通ると思います。誰にでも思春期はありますから。それに、“本当の愛”というテーマはどの年代の方にも共通するテーマだと思うので。多くの方に聴いていただいて、共感していただけるとうれしいです。
入魂の一曲ですね。レコーディングも気合いが入ったのでは?
ブースを真っ暗にして、サブリナになりきりました。あの当時に感じていたものをぶつけながら、噛み付きながら、歌いました。
アレンジもすごくカッコ良い、イントロからアウトロまで。
あ、うれしいです! リリースにあたって、原形から少しアレンジを変えたんです。間奏の部分にエレキのソロがあるじゃないですか。あれは私の希望で入れてもらいました。サブリナはこの歌の中で自分の意見をはっきり言ってないんです。強い感情はあるけど、不器用だから。その心の叫びをエレキに託して、言葉の代わりに表現していただきました。
カップリングの「ripe」は、まったく異なる表情を見せていますね。
これは、弾けた自分と苦しんでいる自分という“ふたりの自分”がいた時に、どちらかと言うと明るい時に書いた曲です。春、授業中に窓の向こうに見える桜が美しくて、でも授業中だから桜に触れられないもどかしさがあって…数学の時間に書いた歌詞なんです(笑)。桜の風景を描きながら“君に会いたいんだ”という素直な気持ちを書いたのと同時に、でも“側にいてほしい”と素直に言えないところを“Be in a side.”と英語にあえて置き換えて表現しました。
甘酸っぱくて、切なくて、儚げで。ピンクとかブルーにちょっとグレーがかかったトーンに感じました。
おっしゃる通りだと思います。この歌にも葛藤が表れていて、それを越えて人は誰かとつながれる。だから、ピンク一色ではなくて、グレーが混ざった楽曲になっているのかなと思います。
コーラスワークも素晴らしいですが、これはこだわったのでは?
こだわりました。『サブリナ』みたいな強いメロディーはないけど、思いはあふれている…それがあのコーラスにつながったんです。
両A面でもいいくらいの、パッケージ。思い入れも手応えも、ずっしりと感じられているのではないですか?
すごいな、と思います。『サブリナ』も『ripe』も、自分の部屋でひとり悶々として作っていた曲ですから。でも、私自身だけではできなかった…力を貸してくださったたくさんの方たちの愛が詰まった作品、パッケージだと思います。
では最後に、レオさんにとって今一番近くにある目標と、将来必ずやり遂げたい目標、このふたつを挙げていただけますか。
まず将来の目標からお話していいですか? 私の“レオ”という名前は、世界的に大ヒットした映画『レオン』からとったものなんですね。あの映画のように、私自身もいつか世界に向けて歌が伝えられたらいいなと思っています。音楽は言葉の壁も時代も超えられる、無限大の力を持っている…そう信じているので。近い目標は、ライヴを通してそんな音楽のパワーをみんなで共有したいので、私のファンになってくださる方ができたら、ぜひ積極的にライヴをやりたいです。それもワーッ!って盛り上がるというよりは、『サブリナ』の痛みを共有できるような盛り上がり方…そういうライヴをしたいな、と思います。
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