【RHYMESTER】誰かを責めるより、結
果的にポジティブな曲にしたかった
L→R Mummy-D(マボロシ、Mr. Drunk/Rap&Produce)、DJ JIN(breakthrough/DJ&Produce)、宇多丸(Rap)
RHYMESTERが約1年振りとなる新作をドロップ! ニュー シングル「The Choice Is Yours」は、ソウルフルなトラックで、混沌とした時代を生きる人へメッセージする、彼ららしさ全開のヒップホップチューンだ。
取材:土屋恵介
1年振りの新譜となるシングル「The Choice Is Yours」ですが、もともとどんなイメージから作られた曲なのですか?
宇多丸
前アルバム『フラッシュバック、夏。』ができて、ひと段落付いて、例のごとく、前作打ち上げ兼、次作ミーティング兼、飲みっていうのをやったんです。まだ3.11後の生々しい空気があった頃で、その時点で、次に何を最初に言うかって時に、“The Choice Is Yours”ってタイトルやコンセプトは出てたんですよ。で、次のアルバムに向かって音を集めていく時に、Illicit Tsuboiくんからトラックをもらって、これに乗せて、この時期に最初に言うべきことは、やっぱりコレなんじゃないかと思ったんです。
ジャクソン・シスターズで有名な、マーク・キャパニの「I Believe in Miracles」をサンプリングしたトラックといい、時代性を反映したリリックといい、まさしくヒップホップのあるべきひとつの姿だなと感じました。リリックでは政治や社会に不満が募る日本の現状を描きつつ、その中で誰かのせいにしてしまっている自分自身を見つめる、その必要性を問いかけるメッセージが込められていますね。
Mummy-D
そこが一番言いたかったことですね。やっぱ、嘘付けないじゃないですか。ヒップホップはレベルミュージックでもあるから…例えばそれこそ、原発反対とか推進とか歌ってたら分かりやすいんだろうけど、大人になった自分が現状に感じる迷いや違和感は、そのまま出さないと嘘になる。ロックやヒップホップっぽくない言い回しかもしれないけど、こういう考え方もあるんじゃないの?ってくらいに聴こえたらなと思いましたね。嘘のないように、かつインパクトがなくならないように気を付けながら、誠実に書いた感じです。
宇多丸
ついつい自分は100パーセント被害者みたいな顔したくなっちゃうけど、社会を構成している一員として、大人は全員一定の責任がある。もっと言えば、そういう世の中をアリにしちゃってた時点で同罪というか。無責任さって意味では、俺らが責めてる対象も、俺らも、実はそんな変わらないんじゃないかって。そういう中で歌うべきテーマが、“The Choice Is Yours”だったんですよ。
人間って、ついつい何かのせいにしがちですし、こうした時代の中で何を選択していくかっていうのは、ほんとに重要なことだと思いますね。
宇多丸
ただ、曲の中で答えを明確にして、それを人に押し付ける方向にはしたくなかったんです。そこは自分で決めてくださいって、もっと開かれたものにしたくて。
Mummy-D
誰かを責めるより、結果的にポジティブな曲にしたかったんです。ダンスビートを使ったのもそういうことだし。
相手を攻撃するんじゃなく、“君はどうする?”って投げかけは、みなさんの今の年齢の目線からの言葉って感じも強いかなと。
宇多丸
それはそうかも。自分で選択して責任を取る、それが普遍的なスタンスになるのはもうちょっと先かもしれないし。だから、若い世代に向けての歌でもありますね。
DJ JINさんは、この曲に対してどんな思いがありますか?
DJ JIN
個人的な話すると、2人目の子供の出産で女房が里帰りしてたんです。それが仙台で、地震のタイミングと重なって結構大変だったんですよ。そういうことも踏まえて、なおかつ震災以降の状況でグループとして曲にするにあたって、ふたりに俺の個人的な経験も伝えながら、ちゃんと誠実な表現として、人に響く内容の曲になったと思います。
ラップは、わりと激しめですよね。
Mummy-D
盛り上がっちゃってる感じですよね(笑)。結構オケがアッパーだから、重くいくよりは、オラオラッて勢い良くラップしてくほうが、バランスがいいのかなと。
宇多丸
歌ってること自体は、実は以前の「グレイゾーン」って曲に近いけど、それよりもっとすんなり刺さる感じというか、もっとエンターテイメント度が上がってる感じかな。誠実さを保ちながら、派手さと間口を広げたというか。あと、ラップだけじゃなく音の面も含めて、作り手の細かい技術の差っていうのが、トータルの案配の差になってくる。実はそこも大きいですね。聴いてる人は意識しなくても、実は違うっていうのは意識したところかも。
DJ JIN
サウンドで言えば、サンプリングをベースにしつつ、Tsuboiくんのアイディアでcro-magnonのメンバーや三宅洋平ってミュージシャン起用して、音を補強していったんです。
ベーシックでありながら、新しいものになってますよね。
DJ JIN
それは思いますね。ちゃんと今の音として鳴ってると思う。音楽としてメッセージ性もあるけど、ノリっていう部分でグッとくるクラブミュージックにもなってるし。バランス感覚が、最高にいい楽曲になりましたね。
夏フェスで、この曲をすでに披露されてるとか。
宇多丸
やってますよ。評判が良くて助かってます(笑)。この曲は、テレビの生放送で初披露っていう変わった始まりだったし。出してすぐ評判が芳しい曲ばっかりじゃないからさ。ライヴでやって、“ノリやすいし”みたいな評判聞くと、ほんと助かるんですよ(笑)。そこでつまずくとキツいよね(笑)。
(笑)。そういう意味では、エンターテイメント性のある、ダンスミュージックとしてちゃんと機能してるってことですよね。
Mummy-D
そうですね。そこ大事なとこですね。
宇多丸
本でも政治ビラでもなく、音楽なんだからさ。そこにマジック起こさないといけないなっていうのは強く思いますね。
アーティスト
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