【家入レオ】愛と向き合うことは自分
の環境と向き合うこと
赤裸々な事実の吐露でもあるし、前進することへの宣誓でもる「Bless You」。ヘヴィだが、確実に心を泣かされること必至! そして、カップリングの友人に捧げた「イジワルな神様」、“隠したい記憶は作らないことができる”というテーマの「心のカ・タ・チ」も佳曲です。
取材:竹内美保
先日の『お台場合衆国2012』での『めざましライブ』で「Bless You」を初めて聴いた時、ズキズキするような重い切なさを感じました。斬り込み方もズシッとくるような感覚がありましたし。レオさんご自身は、この楽曲をライヴで初披露してどのような手応えがありましたか?
私自身すごく思い入れのある楽曲なんですけど、『めざましライブ』は野外で遮るものがない分、“届けー!”という気持ちが強くあったので、自分でもいろいろな思いが浮き上がってきて真っ直ぐに歌えました。で…今、“重い切なさ”とおっしゃっていただきましたけど、実はこの楽曲は幼少期の自分と向き合って書いたものなんです。前シングル『Shine』で《高い壁だって 乗り越えられる 君ならできるから》という歌詞を書いたんですけど、“私にとっての高い壁って何だろう?”と考えたら、小さい頃の記憶だったんです。家庭のいろいろな事情があって、親と離ればなれになって親戚の家を転々としたことがあったんですけど、やっぱりその時に“いい子じゃなきゃいけないんじゃないか”と思っていて…
あぁ、当時からその考えが付きまとっていたんですね。
そうなんです。親と子の間に存在する無償の愛が欲しかったし、抱き締めてほしかったのに、その気持ちを封じ込めてしまって。その後、親と一緒の生活に戻ったんですけど、やっぱりギクシャクしちゃって。一緒にいられなかった時間を取り戻そうとすればするほど。だから、すごく辛かったし、愛ばかり渇望している自分が正直ちょっと嫌だったし、“いい子だね”って言われると“中身は空っぽなのになー”と思ったり…。でも、そんな自分を埋めてくれたのが、音楽、歌だったんです。しかも、私が音楽スクールに通うことを決めた時、母が車を売ってギターを買ってくれて。それがあって、今私はここにいるんですけど。
おぉ! お母さまが…。
はい。そして、東京に出てきていろんな人の優しさに触れて、やっと分かったんです。小さい頃の私は、自分はただ邪魔な存在で必要とされていないと思い込んでいたんですけど、実はそうじゃなかったんだって。“家族は最初から家族なのではなく、だんだん家族になっていく”って言うけど、本当にその通りだと思って。だから、いい子にならなくてもいい、ちゃんと“愛が欲しい”とか“寂しかった”と叫べばよかった…と思って書いたのが、この曲なんです。そして、お互いにいろんな想いをぶつけることによって、泣いて、苦しみを一緒に受け止めて、愛を信じ合って、分ち合って歩いていきたい…そういう人たちみんなに幸あれ、っていう思いを込めて“Bless You”というタイトルを付けました。
でも、やっぱり愛への否定から入る歌い出しは結構ショッキングでした。
そうですよね(笑)。やっぱり子供って無力で、大人が用意した環境から逃げられないのが現実だし、祈ることしかできないんですけれど…でも、っていう。
“祈る”というよりも、“すがる”に近いような。
そうなんです。すがっても叶わないから、“愛なんて祈る価値ないよ”って思い込むことで愛を遠ざける。そうしたらもう傷付かないじゃないですか。だから、書いた時は痛みが蘇ってきたんですけど、今ここでちゃんと当時の自分と向き合って、その頃の記憶を吐き出さないと大人になれないと思って。で、《僕は愚か者》というワードが歌詞にあるんですけど、その言葉を今の私が小さい頃の自分に言えたことで、少し前に進めたと思っています。愛と向き合うことは自分の環境と向き合うということだとも感じていますし。
よく書き切りましたよね。
いや、もう正直…レコーディングの時も泣きながら歌っていたので、しゃくり上げるような息が入っていると思います。痛い感じが思いっ切り出てますね。
ビブラートが効いているのは、泣いているから?
たぶんそうだと思います。それでも歌い切る、出し切る、ということこそが、私にとって“歌う”ということなので。とはいえ、私はまだ17歳なので、全部が拭い切れたわけではないんですけれど。でも、この曲は歌うたびに何かが違ってくるんですよ。うん、そういう楽曲だと私は思っています。
浄化されていくような感じでしょうか? 少しずつ。
きっとそうだと思います。“痛い!”と泣きながらも前に進んでいく。これが本当に“痛みと向き合って前に進んでいく”ということだと思いますから。そして、私が書きたくて仕方がなかったテーマの楽曲ですし。そう…この歌、最後には両親に対しての…“ありがとう”っていう気持ちもあるんです。そして、この歌を書こうと思わせてくださった周りの方々への“ありがとう”も。
ちょっと思ったことなのですが。“悩むことも傷付くこともない。毎日ハッピーです!”という人も、この歌を聴いた瞬間に“思い当たる節が…”と感じるかもしれないなって。
本当にそうだと思います。人って“満たされている”と思って生きていても、どこかに必ず影の部分ってあると思うんですよ。だから、人間である以上はどこか引っかかる歌なんじゃないかなって。
人間…あぁ、そうですね! 人として生きているのならば。
もう人間として聴いていただけたら。男女年齢関係なく、人間というありのままの自分で聴いていただけたら。そこで引っかかることがあれば、それが“今、自分と向き合う”ことだと思うので。そうして、そこから一緒に進んでいけたらいいなと思います。もう、這いつくばってでも!
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