【スネオヘアー】シーンに長くいるこ
とが僕の最大の目標です
アルバム『スネオヘアー』以来、約1年2カ月振りの新作となるシングル「slow dance」を完成させたスネオヘアー。収録された4つの楽曲への想い、そしてメジャーデビュー10周年を迎えた今の心境を語ってもらった。
取材:田中隆信
切ないところに落ちていく感じがどこか初期っぽいなって
ニューシングル「slow dance」が完成しましたが、この曲はどういう発想から生まれた曲なのですか?
『好きっていいなよ。』というアニメのエンディング曲になっているんですが、タイアップありきで作った曲です。高校生のつたない恋愛が描かれているアニメなので、自分の過ぎ去りし時代の“甘酸っぱい”感じを思い出しつつ。アニメでは女子が対等というか、女子主導的なところがあって、そこは自分の時代にはなかったところかなって思うんです。それでも高校生の恋愛ですからね。人間模様が激しく交差するというよりは、転がっていったり、逆転したり、ゆっくりと踊るようなイメージが浮かんできたので、そういうイメージで書いて、タイトルも“slow dance”にしました。
広がりがありながらも、結構シンプルなサウンドアレンジになっていると感じたのですが。
そうですね。アニメの製作陣から曲に対するオーダーがあったんですけど、“ズバリ‘スネオヘアー’みたいな感じで、テンポのある曲にしてください”っていうだけだったんです。“あとはお任せします”って(笑)。結果的にエイトビートで刻んでいくシンプルなサウンドになりましたけど、デビューした頃の初期の作品に近い感じかもしれませんね。ギターのダビングが何本かあって、エイトビートで刻んで、疾走感で転がっていく。最近、シンプルな方向に行ってることは行ってるんですけど、突き抜けないけど、切ないところに落ちて行く感じがどこか初期っぽいなって。デビュー10周年なので、久しぶりにこういうのもいいなって思ったんです。
メジャーデビュー10周年という気持ちが多少なりとも影響しているのでしょうか?
かもしれません。まぁでも、スネオヘアーがどうのこうのっていうより、曲を聴いてもらって“これ、いいな”って思ってもらえるのが一番嬉しいかな。
ミュージックビデオも観ましたが、今回も面白い作品になってますね。
『逆境ブリッジ』と『赤いコート』のミュージックビデオを撮ってくれた須藤カンジくんに今回もお願いしたんですけど、須藤くんからアイデアをもらいました。自分の場合、デビュー当時から伝わりづらいバカなことというか、楽曲のイメージとはまったく違うこともやってきてますから、今回もこういう内容になっています(笑)。さっきもデビュー10周年というお話を少ししましたが、デビュー曲のミュージックビデオが『太陽にほえろ!』のショーケンさん(萩原健一)のオマージュみたいな感じで殉職する作品だったんです。で、10周年なので久しぶりにミュージックビデオの中で死んでみたいなって(笑)
“死にたい”というのはスネオさんからのオーダーだったんですね(笑)。
はい。でも、面白い作品になったのは須藤くんのおかげです。スネオの曲に寄り添うためにクリエイターとしての自分の発想を封印するんじゃなくて、クリエイターとしての個性をちゃんとぶつけてくれてますから、いい感じでかけ算みたいな感じかと。
スネオさんと須藤さんの個性がぶつかり合ったコラボレーション作品になっているということですね。ロボットも登場しますが、撮影は大変でしたか?
スゲェ大変でした! ちょうど台風が来ていた日で、暴風雨の中で撮影しました。“普通、こんな日に撮影しないだろう”って思ったんですけど、その日しかないってことで決行して、結局撮り切れず、もう一日別日を設けて撮影しました(笑)
そんな状況だったんですか!? でも、こういうストーリー性があって映画みたいなミュージックビデオって、最近はありそうであまりないような気がしますし。
そうですよね。バンドが増えてることもあって、カッコ良い演奏シーンで観せていく作品が多くなっているので、そんな状況だからこそ、こんなバカバカしい作品があってもいいんじゃないのかなって。ミュージックビデオって、昔とは役割が違ってきてると思うんです。CSの音楽専門チャンネルとかはありますけど、地上波ではミュージックビデオを流してくれる番組は多くないですよね。だったら、曲のイメージをそのまま映像化するんじゃなくて、別の表現としてあるほうが面白いと思うんです。
観た人たちの反応、反響も楽しみですね。
そうですね。まぁでも“あ、スネオ、まだやってるんだ”って思ってもらえればいいなって思ってます(笑)
カップリング曲のことも訊かせてください。「ユニバース」は映画『ハイザイ~神さまの言うとおり~』の主題歌ですが。
サウンドトラックも担当させてもらったんですが、まずは主題歌としてこの曲を書いて、監督に聴いてもらいました。作る前に監督に訊いたんです。“どういう映画なんですか?”って。そうしたら、説明的なドラマがあるわけじゃなく、感動というよりは、どちらかと言えば表情がない映画だとおっしゃってたので、“これはいいな”って思いました。というのは、このお話をいただく前から無機質なものを作りたいと思っていたんですよ。リリックのところでドラマとかの意味合いを持たせるんじゃなく、シンプルな構成で洋楽っぽいものを。そういう曲がこの映画にも合うんじゃないかなって思ったんですね。全編沖縄で撮ってるんですけど、沖縄の自然とかをフィーチャーしたり、沖縄らしいシーンがあったりするわけじゃないというのも監督から聞きまして、なんか面白い作品だなぁって感じました。ザッピングするように場面がパッパッパッと変わっていくような作品なので、音楽もあまり温度感を持たせたくないなって思ったんです。
次の「スコール」はどういうテーマで作ったのですか?
ライヴで盛り上がる曲が欲しいなって思って作りました。去年、『スネオヘアー』というアルバムをリリースしたんですけど、じっくりと聴いてもらう曲が多くて、全体的に大人しいアルバムだと思うんです。そういう流れから、あのアルバムにはないようなライヴで盛り上がれる曲、騒げるような曲が欲しいなって。
スネオさん的に、ライヴで盛り上がる曲に必要な要素って何だと考えていますか?
僕にはスポーツができるみたいな曲がないので、メロディーがいいとか、歌詞がいいとか、そういうことを考えず、フィジカルにワーッと動ける曲ですかね。今まで、僕の作品でそういうのはほとんどなかったと思います。
これも新しい挑戦と言えそうですね。
はい。でも、すごく矛盾するんですけど、僕自身、ライヴ自体はそんなに盛り上がりたくないと思ってるんです。盛り上がってくれるのはすごく嬉しいんですけど、スポーツする場にはしたくないなという気持ちもあるんです(笑)
盛り上がりたくないけど、盛り上がれる曲が欲しかったという相反する気持ちがなんか面白いですね(笑)。
僕がライヴを観に行って、“この曲、カッコ良い!”と思った時って、ただ突っ立ってるだけなんです。演者から観たら“なんだコイツ、全然盛り上がってないじゃないか”って思われるかもしれないんですけど、ワーッと騒いでその場で消費して“あぁ、いい汗かいたなぁ。飯食って帰ろうか”みたいな感じじゃなくて、自分の中に刺さったものによって、その後の生活の中でいろいろ考えさせられたりするほうがいいなって思うんです。
その気持ちも分かります!
ホント、矛盾しててすみません(笑)
もう1曲、ボーナストラックとして収録されている「鷹の空~ルテルテ主坊~」は、i-depさんの曲にスネオさんがフィーチャリング・アーティストとして参加された作品ですよね。
はい。最初、歌いづらそうな言葉とか、ものすごく生活感のある言葉とか、デコボコした言葉が入っているのですごく面倒臭いなって思ったんですよ。でも、聴いてるうちに“相当いいな”って思うようになって、今はすごく好きです(笑)。自分で作る曲だとヴォーカルの位置を遠いところにしちゃうんですけど、i-depさんは全然違ってて、聴いててすごく近くに声が聴こえるんです。それがすごく新鮮でした。また一緒に何かやりたいですね。
ボーナストラックを含めて全4曲。それぞれタイプも違いますし、かなり内容盛りだくさんなシングルになりましたね。
アルバムだとトータルで聴かせるところがありますけど、シングルの場合はそれぞれがまったく違っていていいですし、いい意味で責任感がないので、アルバムとは違った楽しさがあります。今回もかなりボリュームが出たと思いますね。
上がりも下がりもせず大きな変動もなかった10年
先ほどからお話の中に何度か出てきましたが、今年メジャーデビュー10周年を迎えられたということで、そのことについても訊かせてもらいたいのですが、10年って節目的な感じですか?
そうですね。夏が終わって秋になって、最近ようやく“節目なんだな”って思うようになりました(笑)。15周年とか20周年とか、たくさんの先輩がいますよね。“早く引退してくんないかなぁ”って思う人たちがワーッと元気にカッコ良いことをやってたりするわけですよ(笑)。そんな先輩方を見てたら、10年なんてまだまだだなって。でも、10年やってこられたこと自体、ありがたいことですし、これからもっといい作品を作りたいなって思ったら、節目なのかもしれないなって感じたんです。
続けていくこと自体、難しいことでもありますからね。
はい。シーンに長くいること。それが僕の最大の目標ですから、長く続けていきたいんです。聴いてくれる人たちと付かず離れずというわけではないですけど、リリースした時に“そう言えば、スネオがまた何か出したよね”って思ってもらうぐらいでいいので、とにかくシーンにいるというのが大事だなって。
この10年の活動の中でいくつかターニングポイントを挙げるとしたら、いつになりますか?
アルバムをリリースするということが僕にとって大きなことなので、それぞれのアルバムをリリースした時ということになりますね。特に大きな意味があったのは、メジャーでの3枚目のアルバムとなる『フォーク』かな。自分が出したい音を出せましたし、アートワークを含めて、より自分らしさを表現できたと思えた作品でしたから。あとは去年リリースしたアルバムですかね。
タイトルも“スネオヘアー”でしたし。
そうなんです。作り込んだようで作り込んでないというか、制作の後半ではドキュメンタリーを意識するようにもなったんですけど、私生活を含めて、ひとりのシンガーソングライターとして言いたいことをちゃんと言えたという意味でも、今までで一番大きな作品でしたし、重要なターニングポイントになりました。本当はもっと大きな出来事があったら良かったんですけどね。“いきなりデビュー曲がミリオンヒットを記録して、はっきり言って訳分かんなくなってました。3作目ぐらいでようやく自分を取り戻すことができました”とか(笑)。そういう意味では、上がりも下がりもせず、大きな変動もなかった10年でした。
言い換えれば、デビューの時からやりたいことが見えていて、やりたいことをマイペースでやられてきたということでは?
31歳でのデビューでしたからね。確かにそうかもしれません。こういうふうにやってこられた環境にほんとに感謝してます。
最後に、今後の展望などを教えてください。
自分自身、もっと揺らいだりしながら新しい発見をしたいので、新鮮な部分を出していきたいとは思っています。あとは、やっぱり長く続けていきたいので、50歳、60歳になってもやりたいことをやっていけたらいいなって思ってます。
アーティスト
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