【ジャンク フジヤマ】もう、僕の人
間性そのままのアルバム
自らの音楽を“パワーポップス”と表現するジャンク フジヤマ。タイアップ曲を5 曲も収録し、大御所ミュージシャンを迎えて制作されたメジャー1stアルバム『JUNK SCAPE』は、耳の肥えたリスナーも思わずうならせる完成度の高さだ。
取材:舟見佳子
制作にあたっては、どういうテーマで臨んだのですか?
このアルバムに関しては、自分のできることっていうか、例えばジャンルに関しても“いろんなジャンルできますよ”ということを世の方に知っていただきたいと。簡単に言うならば、“AORの人”じゃありませんよ、と。そういうことを言いたかったアルバムなんです。だから、いろんな人に曲を書いてもらって、ジャズありーの、ポップスありーの、ファンクもAORチックなものもありーの、ブルース的なものもありーの、っていう。
3 曲目の「誘惑」なんかは、どファンクな楽曲ですしね。
これは、最初にデモを聴いた時に、80's色が強いなと思ったんですよ。それを70 年代に引き戻してやりたいっていうのが自分の中であって、引き寄せようとしたんですけど、これはもうあえて80's な内容でいってやれと。だから、歌詞にも《One Night Love》とか、あえてそういう言葉を使っているんです。まぁ、基本的には日本語が多いように考えていますけどね。例えば、あんまり口語で使わない“真紅”とか“媚薬”とか、そういう強いイメージの言葉を使うようにしましたね。
そういえば、ジャンクさんの歌詞って、日本語多いですよね。
多いですね。
雰囲気ものの英語フレーズとか入れないですよね。
入れないですね。
それは、こだわりがあるのですか?
ありますね。まぁ、要するに、洋楽を日本語でやりたいっていうのが僕の思いですから。「誘惑」も《搔き毟る愛の痛み》とか《狂おしい時を》とか、ほぼ日本語で書いてます。《搔き毟る愛の痛み》っていう部分が、この歌詞で一番気に入ってるかもしれないですね。これは、ちょっと大人の恋愛というか、“本命がいるんだけど、浮気しちゃいました”みたいな歌ですから。その中で何を表現したかったかというと、人間の欲望というかね、そういうものを表現したかったんです、この曲では。
サウンドも、ブラスとかコーラスががっつり入っていて、熱い感じですね。で、次の「Wandering Again」はAORっぽい。
この曲のイメージをひと言で言ったら“闇”ですね、僕の中では。メロディーを聴いた瞬間、これは闇だなと。人間の闇の部分というか、打ちひしがれて、何もやる気がない人を描きたいなと思って。人のことは信用してないし、自分ひとりで生きてるような錯覚に陥ってる人を書きたかったんです。寂しい男ですよね、これ。やることが何もないっていうのは、つまんないってことですよ。目標も何もなく生きているひとりの男を歌ってる曲です。
「パズル」は“Calm Ver.”となってますが。
これは一度アルバムにも収録している曲なんですけど、インディーズの頃にやってたものと違うバージョンでやってみました。穏やかなバージョンというか、鍵盤とちょっといろいろ足したものが鳴っていて、ヒーリングミュージックにちょっと近いんじゃないかなと。コードのアレンジも変えたりしてですね、曲自体は発表していますけど、このバージョンは未発表バージョンです。
「BRAND-NEW DAY」は新曲ですか?
インディーズ時代に配信のみでシングルで出した曲なんですけど、盤(CD)になってなかったので、盤にしようかなと。これ、僕にしたらちょっとキーが低いんですよ。ガンガンいくだけの歌い手じゃないよと、ソフトな感じもできるよっていうのをアピールしたかったんです、この曲では。で、後半になってくるとジャンクフジヤマ節というか、熱~い感じが出てきますけどね(笑)。
「Lonely Days」はメロウで控え目な曲調ですが、すごくいい曲ですね。丁寧なヴォーカルも優しげで。
これはメロディーが完全に洋楽なんです。だから、譜割りも難しい楽曲で。歌詞を付けるのにものすごく苦労して、細心の注意を払って書きました。情景描写から入って、サビの部分では“何で気持ちを伝えなかったんだろう”と自分の愚かさを嘆くと。女々しい感じではあるんですけど、ここは自分でも好きですね。よくぞ上手いこと言ったっていう(笑)。自分の中で一番いい歌を歌えてるんじゃないかなと思って。サックスがまたいいんですよね。あれ、自分が歌入れする時には入ってなかったんです。サックスプレイヤーは、歌を聴いて演奏をしているから、ああいう情感が出るんですよ。
ああ、絡む感じというか、歌とサックスが溶け合っていて。
ほんとにあれはね、本人でも泣きそうになります(笑)。これこそ本当に、自分の真骨頂じゃないかなっていう。これを歌える日本人のシンガー、他にいるなら連れて来いっていうくらいの自信作ですね、自分の中では(笑)。
アルバムの仕上がりも、すごい手応えなんじゃないですか?
この時期の自分の作品としては、これ以上ないものができたかなっていうところですね。これからは分からないですけどね。もっといいものができればいいと思いますけど。でも、渾身の作品として世に出すにまったく恥じない。何かあるなら言ってみやがれくらいな感じですね(笑)。ほんと、堂々とこれだ!と。
デビューアルバムってクオリティーじゃないですよ。
“お願いしまーす”って感じじゃなくて、“どけどけ!”って感じのアルバムになってますよね(笑)。もう、僕の人間性そのままでね。“あ…、すみません…”っていう人じゃないので(笑)。“これでどうじゃ!”っていう感じのアルバムですよね。
初回盤には、9曲入りのライヴ盤も付いてるんですね。
これは、笹路正徳さんが参加された昨年12月のライヴです。ドラムが村上"PONTA" 秀一さんで、パーカッションに斉藤ノヴさんもいるし、演奏は大御所軍団。新曲も1 曲入ってます。この9曲は、ほぼ当日の順番通りのテイクなので、ライヴの臨場感というか、どんな感じか分かると思うんですよね。これを聴いて興味を持ってもらったら、ぜひ5月にあるツアーにも足をお運びください、という感じです。
アーティスト
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