【おとぎ話】自分の大切な人に、光や
希望をメロディーに乗せて届けたい
L→R 牛尾健太(Gu)、前越啓輔(Dr)、有馬和樹(Vo&Gu)、風間洋隆(Ba)
取材:土内 昇
曽我部恵一さんのROSE RECORDSより2枚のアルバム『HOKORI』『BIG BANG ATTACK』のリリースを経てのニューアルバム『THE WORLD』なのですが、まずROSE RECORDSで2枚のアルバムを作ったことでバンド及び、ソングライターである有馬くん自身にどんな変化がありましたか?
有馬
ROSE RECORDSでの2枚のアルバムは、もう一度4人組のバンドとしての結束を強くするためにD.I.Y.で制作したアルバムでした。有馬個人のソングライティングとバンドメンバーとの距離が初期3枚のアルバムを作る過程で少し離れてきた気がしていたので、その距離感をなくす意味でも、音楽を演奏する上で大切な季節を経験することができました。変化というよりは、初期衝動にも似た感情を取り戻したように思います。
それは本作にどんな影響をもたらしていますか?
有馬
そこから、よりたくさんの人に届けたいと思う気持ちが大きくなったことが、一番の影響です。
そんな本作は1曲目で《おとぎ話の結末がハッピーエンドとは限らないの》と歌いながらも、愛や希望に満ちていて、厳しい日常の中で頑張っている者に寄り添うアルバムだと思いました。どんなビジョンを持って今作の制作に入ったのでしょうか?
有馬
3.11の地震で友達を亡くして、“生”と“死”というふたつの言葉を、すぐ側に感じるようになりました。その中で自分とおとぎ話は、自分の大切な人に光や希望をメロディーに乗せて届けたいと思いました。それは過去のアルバムを通しても、ずーっとやってきたことなのですが、その気持ちが確信に変わり、強い意志のもとで何の迷いもなく制作に入ることになりました。
久しぶりのアルバムということで、収録候補曲はたくさんあったと思うのですが、この12曲を選んだ視点や基準というのはどういうものですか?2009年にリリースした「GALAXY」も収録されているのですが。
有馬
今この時代に歌うべき曲を選びました。「GALAXY」は歌詞を見ていただければ分かってもらえると思いますが、今の世界の状況を予見していたかのような内容で、今の時代に必要な言葉を歌っていると思ったので、この曲を再度録音して収録したいと思ったのが、このアルバムの始まりです。
サウンド的にはビートルズっぽいものから、オルタナティブやグランジの香りが漂うものまで幅広くありますが、どんな音を鳴らしたいと思っていたのでしょうか?
有馬
もちろんビートルズはメンバー全員大好きですが、『THE WORLD』の制作中にビートルズはほぼ意識していませんでした。おとぎ話は90年代を生きてきた世代なので、すでにオルタナやグランジは血や肉になっているので、サウンド面で手本にする事は今はまったくと言っていいほどありません。鳴らしたかった音は、“バンドおとぎ話の音”なのです。制作前後によく聴いていたのはサザンオールスターズでした。洋楽に影響を受けながらも、それをうまく消化しているバンドだと思って聴いています。
「NO SOS」はパイプオルガンやストリングスの音色が効果的に入っているのですが、曲を作っている時からそういうものを入れようと思っていたのでしょうか?
有馬
曲を作る時に、すでに頭の中でどんな音が必要なのかは明確に答えがあります。個人的に「NO SOS」は、ある種の絶望感をうたった曲だと思っているので、柔らかい音色で優しく包み込むことは必然だったように思います。
本作でのトライやチャレンジなど、収録曲の中で思い入れ深い曲、印象深い曲はどれになりますか?
有馬
全ての曲がトライであり、チャレンジに満ちあふれています。全ての曲に対して、思い入れ深いので選び切れません。トピックとしては、LOSTAGEの五味の兄貴(「OTOGIVANASHI WILL NEVER DIE!!!!!!!!」)やBiSのテラシマユフさん(「BlS」)が参加していることや新進気鋭の映像作家の山戸結希さんによるMVや「逃げんな」が反原発ソングであることでしょうか。
ラストを締め括る8分半の大曲「世界を笑うな」はある意味、本作の核とも言えるような希望を歌ったナンバーだと思うのですが、この曲に込めた想いというのは?
有馬
ひとりひとりの人間の心の中の世界が、広く宇宙までつながっているのだと思った時に作りました。自分の中では、究極のラブソングだとも思っています。
有馬くんにとって『THE WORLD』はどんな作品ですか?
有馬
ようやく、おとぎ話というバンドのアイデンティティが確立したというのが実感です。一過性の流行とは距離を置いた、長い間付き合うことのできる作品だと思います。これが、おとぎ話です。ぜひ、このアルバムを聴いてみてください。
アーティスト
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