【木村カエラ】カエラが夢への後押し
プライベートレーベルである『ELA』からの第一弾オリジナルシングルとなる「OLE!OH!」が完成! デビュー10周年を迎え、さらなる夢に向かって邁進し続ける木村カエラが“夢”をテーマに描いた3曲が収録されている。
文:石田博嗣
昨年6月23日のデビュー9周年の日にプライベートレーベル『ELA』を立ち上げ、同年10月に国内外12組のアーティストとコラボレーションし、60~80年代の洋楽をカバーしたアルバム『ROCK』を発表した木村カエラ。デビュー丸10年を迎える2014年6月23日から2015年6月までの1年間を“木村カエラ 10years Anniversary”と題して、さまざまな企画を行なうと先日宣言したことも記憶に新しい。そのVOL.0企画はファンからのリクエストによって収録曲を決定したベストアルバム『10years』のリリースであり、同作は6月25日に発売される。そして、VOL.1企画。それが本作、『ELA』第一弾オリジナルシングルの「OLE!OH!」だ。
まず本作で注目したいのは、改名前のThe Morning Benders時代に初来日した『SUMMER SONIC 2011』で話題を集めたPOP ETCがプロデューサーに迎えられていること。前述のアルバム『ROCK』でもEurythmicsのカバー「SWEET DREAMS (ARE MADE OF THIS)」でコラボした彼らと再びタッグを組み、「OLE!OH!」「MAKE THIS DREAM REAL」「うさぎとお月様」の3曲を完成させた。その洗練されたポップセンスであり、80年代あたりのニューウェイブ/テクノのエッセンスを感じさせつつも現在の流行の先にあるようなサウンドメイキングは脱帽もの。空間的なギターワークとシンセの巧みなアプローチ、多彩なコーラスでもって開放的な音像を構築している。繊細で立体的な音空間を作り出し、そのグルーブは容易く“J-POP”と片付けられない。誤解を恐れずに言わせてもらうが、バックトラックを聴くだけでも十分に刺激的であり、魅惑的だ。そこにカエラのキュートな歌声が乗ることで生まれるケミカル…それはこれまでもさまざまな気鋭のプロデューサーを起用し、さまざまな楽曲を提示してきた彼女の新たなトライがもたらせた成果と言える。
そんな本作に掲げられたテーマは“夢”。まず表題曲の「OLE!OH!」は《YUMEを愛しもちつづけたいの♡ 幸せは自分でえらべばEー》と歌う、対自分応援歌。夢に向かって進むことは簡単なことではない。数々な壁があるし、挫折もあれば、絶望を味わうこともしばしば。しかし、それ以上に一番の障害となるのは、意外に自分自身だったりするもの。あれこれ考えすぎてしまって、不安に押しつぶされそうになってしまうことも…。だからこそ、ある時はタフに、またある時にはラフでいたい。そんな自分へのエールがキャッチーなメロディーに乗って歌われているのだ。歌詞にも《ポンポンDANCEのフレッフレッGIRLS》とあるようにチアガールに応援してもらっているようで(ジャケットのカエラもチアガールだし)、はつらつとしたコーラスのポジティブなパワーが自分を奮い立たせてくれること請け合いだ。
続く、「MAKE THIS DREAM REAL」。こちらも夢への後押しをしてくれる応援歌。《HOW TO MAKE THIS DREAM REAL(どうすればこの夢を現実できる?)》と叫びたい衝動に駆られる時もあるが、クールなトラックに乗って暗示のようにリフレーンする《WE'RE GONNA MAKE THIS DREAM REAL(この夢を現実に!)》という言葉が、もう一歩を踏み出したいと思っている自分の中で渦巻く迷いを次第に浄化してくれることだろう。
ラストはカエラの母性とも言える、大きな愛情を感じさせる「うさぎとお月様」。童謡を思わせるメロディーは子守り歌のようでいて、やさしいアコギの音色とともに心地良く響き、新しい明日に備えて、力んでいた体と疲れた心に安らぎを与えてくれる。サビになると刺のある音使いでもって《時は孤独や欠けた記憶を運ぶ》と諭されるが、すっと夢の中へと誘われる柔らかな感覚に陥る秀作だ。
以上3曲を収める本作は、7月9日にリリースされる。初回限定盤には“OLE!OH! KAELAボタニカルアートチーフ”と名付けられた植物柄バンダナが特典として付帯されることにも注目したい。また、ベストアルバム『10years』とともに購入したファン限定でスペシャル企画も実施。木村カエラから暑中お見舞いのプレゼントが応募者全員に届けられるという内容で、その中には10周年にちなみ、10枚のみカエラ本人による手書き直筆コメントとサインが入った貴重なバージョンが存在するという。応募期間は本作が発売となる7月9日から7月31日までなので、ファンは両作品の予約必至だ。このチャンスを逃すことのないように!
さらに、忘れてはいけないのが、前述の『木村カエラ 10years Anniversary』のVOL.2企画として発表されている、10周年記念ワンマンライヴ『KAELA presents GO!GO! KAELAND 2014-10years anniversary-』だ。横浜アリーナにて10月25日(土)と26日(日)の2日間にわたって開催される同ライヴは、25日は“Rockin' ZOO”、26日には“Poppin' PARK”とサブタイトルが付けられていて、どうやらカエラは横浜アリーナをロックな動物園やポップな遊園地にしてしまおうと目論んでいる様子。そこにも彼女の新たな夢へのトライがあることは言うまでもないだろう。“これまで”の10年の集大成はもちろん、“これから”も体感させてくれるはずだ。ベストアルバム『10years』とシングル「OLE!OH!」をしっかりと聴き込んで、この演出も演奏曲も異なるというアニバーサリーライヴにも参戦してもらいたい。
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