【家入レオ】二十歳になる前にしたか
った“純情宣言”
裏打ちのリズミックなサウンド、しかし刻み込まれた言葉は胸の奥を刺すような響き。苦悩や葛藤をリアルに描く、まさに彼女らしい歌だが、そこには新たな決意を掲げてまた大きな一歩を踏み出した姿も浮かび上がる。
取材:竹内美保
春のツアー、私はNHKホールでのライヴを拝見したのですが、以前の“感情の発露”のような感じではなく、“届ける、問いかける”感じに変化したような印象を受けました。
それはすごくあります。以前はステージで精いっぱい自分を表現しようという、“自分”というところがひとつ視点であったんですけど、今回は“問いかける”というステップにいけたかなと思います。苦しいこととかはひとつの過程にしかすぎないんだなっていうことに気付けてから、何事も“点”ではなくて、大きな視点で見られるようになったというか。それと、その場で生まれたものをステージで楽しむ余裕ができて、それがすごく楽しくて。瞬間を生きることが多くなりました、ステージの上で。
全力投球が軽やかに見えましたし、気持ち良いライヴだなと感じました。
それ、新しい感想ですね。嬉しいです。あのライヴがあったからこそ、新曲の「純情」の核となるものが生まれたんですよ
「純情」はすごく強いメッセージが込められていますね。
強いです。とにかく二十歳になる前の私をかたちにしたかったし、とても私らしい曲になったなと思っています。西尾芳彦プロデューサーに曲のデモを聴かせていただいた瞬間に“歌いたい!”と思って、すぐにレコーディングスタジオに入って、バーっと歌ったんです。その時はラララ〜とかで歌っていたんですけど、その中で“純情”っていう言葉が口から出てきて。無意識に自分の中から出てきた言葉って、一番自分が求めていることだと、歌わなくちゃいけないことだと思うので、この言葉を大事にしながら歌詞は書いていきました。私は人一倍“変わりたくない”っていう気持ちが強かったから、すごく守りに入っていた部分も実はあって。でも、ライヴをやり始めて、“あ、それは違う”って思うことができたんです。自分の中に変わらないもの、譲れないものがあることが分かって、変わっていく覚悟が生まれたというか。それと、宣言とか決意とか勇気って、厳しくてやさしくて静かなものなんじゃないかなと思えた時に、“世界中のみなさん、聴いてください”じゃなくて、暗い部屋でひとりで自分に課題を課すような歌を作りたいと思って…この曲に、その想いを込めました。
1番のAメロで“純情”という言葉が出てきますけど、その形容に《闇に消えてく》という言葉を選んでいて。それでもう、いろんな想いが込められているのが伝わってきます。
そうなんです。自分の核となる音楽を絶対にやり続けるんだ、真っ直ぐ噓偽りのないものを残していくんだっていう、その核となるところがイコール“純情”なんです。でも、例えば…子供って“純粋だ”って思いながら生きていないんですけど、ある時を機に“真っ白でいたいと思わないといられない”って時がくる。“純情”はそういうことも覚悟している言葉なんじゃないかと思うので、あえて《闇に消えていく》と歌ってるんです。もちろん純情に生きないことも可能だと思うんですよ、意志として。でも、私はもがいても、悩んでも、やっぱりこれを捨てたくないし、これを持ち続けて生きていきたいっていう、その宣言を二十歳になる前にしておきたかったんです。“純情宣言”を、うん。だから、すごく自分と向き合って、いつまでも“対、大人”ではいられない…二十歳になったら、そうだった当時の私みたいな子たちの感情を受け止める側になっていかなくちゃいけないから。そういうところも実はいろいろ含んだ曲になりました。
いつかの自分のような子たちに向けて何かを発する。すごく意味のあることだし、大人になったからこそできることですね。
ほんとにそうですね。人って自分のことだけを考えてる時って…すごく言葉は悪いですけど、不幸というか。心の中に誰か、いろんな人たちが住み始めた時に、初めて幸せに気付けるというか。やっぱり十代はすごくもがいていた…ま、今もなんですけど、そこから私を救い出してくれたのは音楽で。で、今の私の心の中に住んでいる人たちと出会えたのも音楽があるからですし。だから、そういう経験から得たものとかを…バトンを渡していく、っていうのかな? すごく責任があると思っているんですよ、バトンを渡すまでのことって。だから、ひとつひとつのメッセージにも、ちゃんと責任を持っていきたいし、そういう思いで届けていきたいんです。どの曲に対しても、そういう思いはあるんですけど、やっぱりこの曲は特に強いですね。あとはもうひとつ…“見とけよ。私はパワーアップして行くところまで行くんだ”っていう気持ちも、この歌には込められています。
《聴こえてる 未来へ繋ぐ足音》はまさにそれですよね。
そうです。絶対に未来へつなげていくんだ、っていう意志がすごく込められているので。
ヴォーカルの語尾にちょっとクセがあるのも、言葉を伝えるのにすごくいいフックになっているような。
曲のテンポが速いので、歌をそれに合わせてジャストで歌っていると、ものすごく速い曲に感じられてしまうんです。だから、楽譜では表せないけど、0コンマ何秒だけ後ろに引っ張って歌ってるんです。バックの音が速くて、歌がちょっと遅いっていうところで生まれる空間が、独特のノリになっているんだと思います。
カップリングの「For you」は浮遊感のある、アコースティックサウンドを基調としたナンバーですね。
曲を聴かせていただいた時に雨のイメージが浮かんだので、その雰囲気を崩さないように歌詞を書いたんですけど。これは何かを掴んだ人たちの、他人の目には映ることのない苦しみや挫折にスポットを当てた歌です。生きるということは何かを掴みたくて歩くということだと思うので、生きて挑戦しているみなさんに聴いてもらえたらって思います。この曲は“歌わないで歌わせる”という歌い方をしているんですけど、これも実はライヴで得たものなんですよ。
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