【ビッケブランカ】孤高のピアノマン
がついにデビュー!

ファン待望の1stミニアルバム『ツベルクリン』をリリースするビッケブランカに、今作までの紆余曲折やポップソング満載の作品に込めた想いを訊いた。
取材:山口智男

本名の“山池純矢”で活動していた頃、デビューの話を自ら見送っていたそうですね。

未熟だったから、もっと自分と向き合う時間が欲しかったんです。デビューして有名になれたらいいという気持ちもありましたけど、その前に“自分って何でしたっけ?”って考えたら、自分が理想とするアーティスト像と自分が違いすぎていて。

そのタイミングで、ギターからピアノを弾きながら歌うという現在のスタイルに変えたのですか?

そうです。それによって、ロックに寄っていた曲が自然とポップスに寄って、自分の声がこんなに映えるのかと思いました。まろやかな声と言ってもらえることが多いんですけど、その声がピアノとピタっときて、曲作りのクオリティーとスピードがかなり上がったんですよ。

それと同時に、“ビッケブランカ”と名乗るようになったのですね。

家で曲を作っている自分がそのままステージに上がると、曲のことを分かっているせいか、人が分かろうと分かるまいと、自分の分かることだけをやりたがるという感覚があって。でも、作った本人にしか聴かれず、何の評価も得られずにハードディスクの中にあるだけじゃ曲が可哀相だと思ったんです。だから、曲を多くの人に聴いてもらうために別の人間を立てる必要があった。でも、自分の作った歌は自分しか歌えないんです。他の人に歌ってもらっても何か違う。それで、名前を変えて違う自分が出るしかなかった。今では“ビッケブランカ”は自分とは全然違う人間という気がします。明るい奴ですよ(笑)。彼の影響で山池純矢が作る曲も変わりましたね。外向きになりました。自分の部屋だけに収まり切らないような曲を作るようになったんですよ。

音楽に興味を持ったそもそものきっかけは?

マイケル・ジャクソンの「スリラー」でした。中学に入ってロックバンドの存在を知ってからは、リンキン・パークやリンプ・ビズキットを聴き始めて、大学時代はそういうロックと高校生の頃に聴いていたR&Bやヒップホップが混ざったようなバンドをやってました。ピアノを始めてからはベン・フォールズをはじめ、ビリー・ジョエルやエルトン・ジョンといったピアノマンの曲を、70~80年代にまで遡って聴いてます。

『ツベルクリン』はまさにその延長上にある作品ですね。

ええ。ジャンル分けが難しいと自分でも思います。どんな音楽をやる人?って尋ねられても、曲調が幅広いからピアノを弾く人としか答えられない。とっ散らかっているように聴こえるかもしれないけど、ピアノとファルセットという共通点はある。いろいろな曲を作りたいんです。“あいつなら次も面白いことをやってくれるよ”って言ってもらえるような存在になれたらいいですね。『ツベルクリン』には、“いろいろな曲ができたから聴いて!”って想いを込め、自分が好きな曲とファンのみんなが好きな曲を半々ずつ入れました。

「追うBOY」をはじめ、歌詞が絶妙にリアルでした。「Bad Boy Love」なんて高校時代の思い出みたいですよ。

いやいや、全然ワルじゃなかった(笑)。歌詞は全て妄想。26歳の自分には人生のワビサビなんて分からない。自分の気持ちを書いてもただもどかしいだけだから、1個の心の動きを想像力で大きな話に膨らませているんです。映画のストーリーみたいに楽しんでもらえたらいいですね。

『ツベルクリン』

  • 『ツベルクリン』
    NBDL-0024
    2014.10.15
    2160円

ビッケブランカ

ビッケブランカ:美麗なファルセットヴォイスと緻密なコーラスワークを独創性に富んだ楽曲に昇華させ、ポップとロックの間を自在に行き来する、新しいタイプのシンガーソングライター。2016年10月にミニアルバム『Slave of Love』でメジャーレーベルに移籍し、19年に発表したシングル「まっしろ」が日本テレビ系ドラマ『獣になれない私たち』の挿入歌に、同年6月に発表した3rdシングル「Ca Va?」がSpotifyのCMソングに抜擢されるなど幅広い世代から注目を集める。

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