【ハルカトミユキ】私たちが向かうべ
き先が分かってきたような気がする
L→R ハルカ(Vo&Gu)、ミユキ(Key&Cho)
2015年は1月から12月まで新曲を毎月発表することを宣言し、さらにミニとフルの2枚のアルバムリリースも併せて発表したハルカトミユキ。その言葉通りに1月より毎月新曲が発表されており、そしてミニアルバム『世界』が届いた。そんな彼女たちの創作意欲の裏にあるものとは?
取材:油納将志
ミニアルバム『世界』についてお話をうかがう前に、13年11月に発表した1stアルバム『シアノタイプ』から今回に至るまでを振り返ってもらえますでしょうか。
ハルカ
なんともう1年半くらいですよね。もう封印してたんですけど、その間には本当にいろんなことがあって、何を歌おうとか、どういう作品にしようかとか、そこまでもいかなくて…実は最悪の状態だったんですよね。そんな中、昨年5月に3rd EP『そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。』を作ってリリースしたんですけど。その時は必死でしたね。自分では力を振り絞ってるんだけど、今聴くとどこか弱々しいかも。弱々しいけど、ものすごく必死で死に物狂いではある。だから、私にとっては、100パーセントあの時の自分なんですけどね。頑張れ!って言ってあげたくなりますね(笑)。リードトラックの「その日が来たら」も“終わり”を歌っていますし、終わることばっかり考えてました。気持ちの上ではハルカトミユキは一旦終わったとまで考えてたし。音楽をやってる意味が分かんなくなっちゃってましたね。このEPを出さなかったらハルカトミユキは本当に終わってた気がします。でも、逆にそこでリセットできたことで、新たに始まる感じも自分の中に出てきたんですよ。必要な苦しみだったし、必要な“終わり”だったと今では思えてます! そこから匍匐(ほふく)前進ではあるけど、確実に何かが始まったと確信できてるんで。だから、このどん底タイミングで、無理してでも作品を作らせてくれたレーベルのスタッフには本当に感謝してます。
その何かが始まった感じのある曲が、このミニアルバムに収められているのでしょうか?
ハルカ
はい、やはり1曲目の「世界」ですね。2015年は毎月新曲発表という方針が決まって、ミニアルバムのリリースも決まって、よしっやるぞ!って時に、その第一歩、スタートの曲を作りたかったんです。
ノイジーなギターがリードしていくシューゲイザーサウンドの曲ですが、ミユキさんはいかがでした?
ミユキ
キタ!という感じでしたね(笑)。まだハルカの歌詞がない段階の仮歌を入れた瞬間に、コブシ握りました。レコーディングではストレートな曲にあえてノイズを入れて汚したり、轟音ギターを入れるためだけに西川さんに来てもらって、爆音ノイジーギターを弾いてもらったりと、私たちらしい味付けをしました。この曲で目の前が開けたということを実感させてくれましたね。
そんな「世界」を含めて3曲、miwaやケツメイシを手がけてきたNAOKI-Tを迎えて制作されていますね。
ハルカ
ブランクの間にミユキとふたりで書き溜めていた曲がかなり多くなってきて、ちょっとデビュー前みたいな感じになってきていたんですね。私の状態がだいぶ元に戻ったのをしっかりと見守ってくれていたレーベルのスタッフがリリースの話を持って来てくれたんで、レコーディングに関しても新たな人たちと出会いたいっていう希望を出したんです。今でも放っとけば何でも閉ざしちゃう私ですから、私を引きずり回して、解放してくれるような人と出会いたかったんです。でも、NAOKI-Tさんのスタジオで3人で和気あいあいとするまでは、かなり長時間がかかりました。肝心の私が黙ってるんで(笑)。でも、少しずつ分かり合っていきながら、断片だけですが、何曲も作っていって。企画が決まった段階で、私の中にものすごく強く、2015年の1曲目にこんな存在感の曲を出したいというイメージがあったんですけど、それをかたちにできたのは3人だったからという実感がありますね。NAOKI-Tさんが提示してくるサウンドに呼応するように出てくる言葉も変わっていきましたし。ケミストリーが起きたと思います!
一方、同じくNAOKI-Tが手がけた2曲目の「tonight」は80年代の雰囲気を漂わせるエレクトロポップに仕上がっていますね。
ミユキ
実は私がフォスター・ザ・ピープルが本当に好きで好きで…『フジロック』でも一番前で観たくらい(笑)。フォスターからルーツを遡っていったら、クイーンのフレディ・マーキュリーに行き当たって、さらにボーイ・ジョージやワム!へも行き着いて、その時代の音楽に夢中になって。“今、私、この音が好き!”というのをみんなに主張したくて、まずはNAOKIさんに熱く語ったんです。とにもかくにも80年代のシンセを再現したかったから、楽しみながら遊ぶようにレコーディングしていたら、いつの間にか完成してましたね。ハルカトミユキの楽曲は言葉が刺々しくて、ひとりひとりに突き刺さるような曲も持ち味だけど、それを強いものにするために私の好きな音楽の要素がもっと入っていてもいいと考えたんです。そういう意識が、この「tonight」にはありますね。
今回の『世界』を作り上げたことで大きく変化し、前進したことが話を聞いていてすごく伝わってきました。
ハルカ
幼稚な言い草ですけど、私はスターになりたかったんですよね、子供の頃。この間、それを思い出しちゃって(笑)。小さい頃の私の夢は、華やかなステージで歌ったり踊ったりすることだったんです。実際、今の私の表現や作品はその頃に抱いていたイメージとはかなり違うけど、そのモチベーションみたいなものを、改めて思い出しちゃったのかもしれません。どん底の歌かもしれないけど、そのどん底で消えていってしまうその感覚を、ちゃんと誰かに伝えたいんだ、ってことを思い出しちゃったんですよ。だから、これからの私たちが向かうべき先がだんだんと分かってきたような気がする。まだまだ実験して、試行錯誤しなきゃいけないこともいっぱいあるんだけど、とにかく今はその先をかたちにしていくために、今のライヴをどうする、曲をどうする、というひとつひとつを考えるのが楽しい。早くライヴやりたいですね! さらに変わっていく予感がすごくしていて、頭の中にある曲のイメージとライヴの風景が結び付くことで、また新たな風景を見ることができるはずだから。そこからまた次のアルバムへと向かっていけるんじゃないかって、今強く思えるんですよね。
アーティスト
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