【ASIAN KUNG-FU GENERATION】この音
が未来をポジティブに変えていく
L→R 伊地知 潔(Dr)、山田貴洋(Ba&Vo)、後藤正文(Vo&Gu)、喜多建介(Gu&Vo)
前作から2年8カ月、ついに届いた最新作『Wonder Future』は、アジカン史上最高にソリッドでハードなロックンロールアルバム。フー・ファイターズの所有するロサンゼルスのスタジオで録音を敢行した、エピソード満載のその中身とは?
取材:宮本英夫
まず自分たちが楽しいということ、それ以外に理由はない
ロックンロールの骨格そのものみたいな、シンプルでソリッドな音。ヤラれました。
後藤
確かに、削ぎ落とした部分はありますね。一応最低限のダビングはして、久々にギターはダブルにしてますけど。ダブルはダサいと思ってたんですよね。音を塗りすぎちゃうと隙間がなくなって、細かいアレンジが聴こえなくなってしまう。でも、最近思うのは、そこを人にアピールする必要もないというか、“僕たち、アレンジ上手いんですよ”と言うために曲を作ってるわけじゃないから。素直に興奮できるポイントに興奮できるギターが入っているほうが楽しいし、気持ち良い。
まさに。それ以外に言うことないです。
後藤
そう。“どうしてこんなギターになったんですか?”と訊かれても、“気持ちいいから”としか言いようがない。“グッとくる”からとか、そういう言葉になっちゃいますね。
もともとラウドなものやシンプルなロックチューンをやりたいという意思はあったのですか?
後藤
そうですね。ラウドなロックが、今アジカンでやるのに一番合うんじゃないかなと思ったんです。(伊地知)潔にそういう話をしたら“俺もやりたい”みたいなリアクションだったんだけど、自分の中で、アメリカンハードロックは通ってきてないから、よく分かんないんですよ。フー・ファイターズぐらいしか共通言語がなくて。例えば、メタリカもガンズも分かんないし、そういうハードロック性みたいなものは、建ちゃん(喜多)と潔に出してねってお願いして。
喜多
潔がアレンジに加わると、そっちのほうにいくので、やってて楽しかったです。
そこのところ、ぜひ語ってください、潔さん!
伊地知
案はいっぱい出しましたけど、そこまで採用はされてないです(笑)。
後藤
全部採用したら、本当にそのままになっちゃうから。
伊地知
そうそう。バランスがすごくいいと思うんですよ。予想してたフー・ファイターズ感よりは、メタル/ハードロックを少し削って、UKっぽさもあるし、そっちになって良かった。ゴリゴリになっちゃうんじゃないか?という想像もあったんで。ゴッチから“メタル/ハードロックのプレイリストをくれ”と言われた時には。
後藤
あれ、1回も通して聴けなかった。首を傾げて、“やっぱダメだわ”と思って(笑)。
伊地知
AC/DCとか、90年代に聴いてきたやつとか、ゴリゴリのやつをいっぱい入れて。
後藤
LAメタルにパンクが混じった、バッド・レリジョンとかは好きなんだけど。速弾きがあって、歌詞も政治的で、高校生の時にすごい好きだった。でも、あそこまで速い感じじゃなくて、ドコドコドコドコ!じゃなくて、ドンパーン!ドドパーン!みたいな、ああいう感じがやりたかった。1回ダサいとされたビートと向き合うみたいな。
シンプルでソリッドなエイトビートを?
後藤
エイトビートやろうぜ!って。だから、「Little Lennon」みたいな曲ができたのは結構嬉しいですね。拍のニ、四にスネアがくるのが恥ずかしいと思ってた時期もあるから、それを克服できたというか。曲が良ければ、こういうのもダサくないんだって思った。「Easter」もそうだし。
2015年のロックの動向とか、そういう方向からの分析もできると思うんですけどね。それよりもさっき言ってた“これが気持ちいいからやった”という紹介をしたい、このアルバムを人に薦める時には。
後藤
“もういいじゃん”と思ったのはあるかな。今これが流行ってるからこれをやんなきゃいけないとか、必要ないんじゃないの?と思うし。
ですね。4つ打ちがどうしたとか、かれこれ10年ぐらい続いたんで。
後藤
そういうものに抗おうという気持ちがあったわけではないんだけど、4つ打ちは意識して今やりたいとはそんなに思わないですね。必要だったらやるけど。誰かと比べてどうとかじゃなくて、普通に激しいものがやりたくて、ドンパーン!って叩いて、ギャー!って弾きたいみたいな。あと、ちゃんとしたラウドロックってどうやったらいいのかな?ということを考えてましたね。昨今の音楽はデジタルだから、もうちょっと生身のヘヴィロックをやりたいという、生身感は意識しました。だから、何回もセッションして曲を作って、真四角じゃない歪なものでも、よれててもいいんじゃない?って。どうしてもコンピューターで音楽を作るようになった以降の耳にならざるを得ないから、最低限の技術は踏まえつつ。だけど、ボカロとかをやってる子たちのタイミングの合わせ方まではやれないから、機械的な感じじゃなくて、“ちゃんと人間がやった揺らぎがあったほうがいいよね”って。そのへんのバランスについては、ちょっと考えました。
なるほど。
後藤
でも、自分らが楽しいということが一番デカいんじゃないかな。それ以外ないよね、理由は。だから今回、どの曲も楽しいなと思って作りました。煮詰まったことも、いつもよりは少ない気がする。
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