【藍井エイル】
歌を歌う身としては独りよがりでは
絶対にダメだと思うんです
『ミュージックステーション』に出演したことで、多くの人から注目される存在となった藍井エイル。“聴き手に恩返しがしたい”という気持ちで作られたバラエティー豊かな3rdアルバム『D' AZUR』は聴き応え十分だ。
取材:吉田可奈
アルバム『D'AZUR』が遂に完成しましたね。
今年に入ってから、シングルだけでなく、配信を含めて5カ月もリリースが続いているんですよ。毎日が怒涛に過ぎている感覚もありますが、その分、こんなにもさまざまな作品をかたちにできた上に、それを要約したアルバムがこの『D'AZUR』となるので、かなり感慨深い作品になりました。
タイトルにも深い意味がありそうですね。
名刺代わりだった1枚目のアルバムのタイトルが、ドイツ語で青を意味する“BLAU”だったんですね。あの時はマシーン感のあるハイトーンヴォイスで歌うことに集中し、2枚目の『AUBE』ではタイトルの“夜明け”の通り、『BLAU』よりも温度を感じるアルバムで、柔らかさを表現できていたと思うんです。そこを経て今作はフランス語で “D'AZUR”というタイトルにし、“あなたと青い世界を一緒に作りたい”という意味を込めました。改めて藍井エイルのイメージカラーである青に立ち戻り、今の“青”を表現したかったんです。さらに、ジャケットには強さの象徴として青いライオンがバッグに描かれているんです。
確かに、今作からはその“強さ”をすごく感じました。それに、楽曲の幅がすごく広がったとも思いました。
今回はいろんな作家さんがたくさん曲を提供してくださったんです。それに、シングル「ラピスラズリ」以降、歌い方を変えた?と言われることが多かったんですが、そんなつもりはないんですよね。それよりも、曲が私の歌い方をどんどん変えてくれるんです。「ラピスラズリ」は私の新たな部分を導いてくれた大事な曲になりました。
サウンドも歌謡曲のようで、とても新鮮でした。
実は、今までこういうメロディーの曲はあまりなかったんですよ。音符が少ない分、すごく感情を込めやすいし、サビで一気に展開するという日本人の心を打つメロディーラインが歌っていてすごく気持ち良かったです。
「Bright Future」も、その歌謡曲ラインですよね。
はい。哀愁漂うサウンドですし、さらに人間らしい雰囲気があるんですよね。この曲を聴いた瞬間、手を取り合うようなイメージが浮かんだので、その前向きな雰囲気を歌詞に落とし込めたらいいなと思いながら言葉を紡いでいきました。
デビュー当時に比べて、歌詞の書き方はどんなふうに変わってきましたか?
今作の「幻影」ではサウンドからイメージした小説を書いてから、歌詞を書き始めたんです。
先に登場人物を決めた?
そうですね。あとは、その人たちがいる場所の景色や、その人たちが何をしようとしているのかというのを考えるんです。さらにMVを作るとしたらどんな歌詞を乗せようかとイメージしながら書いたりしていて…。
斬新な作り方ですね。昔から小説を書いたりしていたのですか?
昔はよく書いていました! でも、一度書かなくなるとなかなか書けなくなるんですよね。
でも、エイルさんの楽曲はアニメのタイアップが多いから、それをもとに歌詞を書くことが多いですよね。
そうなんですよ。なので、原作を読んでから歌詞を書くとすごく書きやすいんです。逆に、自由に書いていいよと言われるとすごく難しくて…。
その小説を読みたい人はたくさんいると思いますよ。
いやいや! それはちょっと企業秘密で(笑)。
その他、歌詞を書く時に考えることはありますか?
歌詞を書く時に、その物語が自分以外のものに置き換えられなかったらボツにするようにしているんです。というのも、何にも置き換えられなかったら、それはただの自己満足だと思うんですよ。
確かに、そういった曲は世の中にたくさんありますよね。
でも、私は基本的にちゃんと客観的に聴こえるかどうかを一番大事にしているんです。まず、自分が好きなアーティストがどんな歌を歌ってくれたら嬉しいだろう、ということを考えるんですよ。その好きなアーティストを藍井エイルに当てはめた時に、どんな曲を歌ったらいいかが見えてくるんです。
完全にプロデューサー目線ですね!
あはは。歌を歌う身として、決して独りよがりではいけないと思うんですよね。楽曲を書くことはプレゼントを選ぶようなことだと思っているんです。これまで支えてきてくれた人たちがいるから今の藍井エイルがいる。それなら、その人たちにちゃんと喜ぶプレゼントをあげることが私の役目だと思うんです。
もちろん、藍井エイル本人が思っていることがベースなのは絶対として、客観的に見ることが大事ということ?
はい。私はこういう想いをしているけど、同じ想いをしている人はたくさんいると思っているんです。そういう人たちにリアルに気持ちを届けていくために、その気持ちは大事にしていきたいと思っています。
聴き手があってこそ、という想いがすごく強いのですね。
よく、“歌を聴いて元気をもらえました”ってメッセージをもらうんですが、私の夢を叶えてくれたのは聴いてくれた人たちなので。だからこそ、もっともっと恩返しをしていきたいんです。
その恩返しのうちのひとつが初の武道館公演ですね。
はい。武道館は私にとって夢の場所。ここでみんなと一緒に大好きな歌が歌えたら最高だなと思うんです。きっと、あの舞台に立ったら涙だけでなく、いろんなものが込み上げてきそうな気がするんですけどね。今から緊張しているので助けてくださいね(笑)。
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