【GLIM SPANKY】新たなロックの夜明
け、そして可能性
L→R 松尾レミ(Vo&Gu)、亀本寛貴(Gu)
豊潤で重厚、それでいながら自由度の高い強靭なロックが鳴り響く、堂々たる1stアルバム『SUNRISE JOURNEY』。開放的な精神と揺るぎない魂が生み出した、多彩だが太い芯が全曲を貫いている、誇りの高さを感じさせる作品集だ。
取材:竹内美保
風格を感じるアルバムですね。1stですから、いい意味での蒼さもありながら、ですけど。
松尾
ありがとうございます。このアルバムは“ロック大全”の1ページ目みたいな、そして“始まり”の歌というか…自分たちは意識していなかったんですけど、これから旅に出るテーマの歌が多いので、ここから始まる新たな日本のロックの夜明けを象徴させるものにしたかったんです。
大全、確かにそうですね。重厚な1ページ目ですし。
亀本
この11曲は全部ロックだと僕は思っているんです。フォーキーな楽曲もバラードもポップなものも全て。そこでロックの幅の広さを提示したかったし、同時にGLIM SPANKYの持つ可能性も見える内容にしたかったんです。
ロックの王道を歩んでいるんだけど、その道場がすごく広い、という感じがします。
松尾
すごく嬉しいです。核はしっかり持ちながらも“どんなサウンドをやってもGLIM SPANKY ”っていう…1本のデッカい柱を貫き通して、その周りを変化させる面白さ、飽きない面白さを自分たちも感じたいし、きっと聴いてくれる人たちにもそう感じてもらえるかなって。かつ、アルバムとして、作品としては完成しているけど、GLIM SPANKYとしては未完成であるべきだという想いがすごくあったので、最後に自分たちが今まで作っていたものよりもちょっと開けてた「リアル鬼ごっこ」を持ってきたんです。2ndアルバムの扉をちょっと開くような、“完成しているけど未完成”なイメージで終わらせたかったんですよね。
アルバム1枚を通してロードムービーのような印象を受けたのですが、「リアル鬼ごっこ」が最後にくることで“The End”ではなく、“To Be Continued”になるというか。
松尾
そういうことです!
未完成って目的地へ向かう旅の途中っていうことですね。興味深かったのは、「サンライズジャーニー」の主人公が次々と来るバスにすぐ飛び乗らないことで。普通なら飛び乗ってしまうところを待ち続けているという。
松尾
待ち続けていますね。それだけ自分の乗るバスを見極めるべきだと。見極めて見極めて自分の乗るバスを待ち続けていたら、一番大きくて、一番多く人が乗れて、一番遠くまで行けるバスが来た…そんな希望を歌いたいなと思って。
サウンド面で笑っちゃうくらい楽しかったのは、「大人になったら」での亀田誠治さんのベースに拮抗しながら弾き倒すギターソロで。しかも、間奏だけじゃなくて、アウトロでも出てくるという(笑)。
亀本
どれだけやるんだ!みたいな(笑)。
他の曲ではサビのバッキングですごいソロを弾いているし。
松尾
そうなんです。例えば、「踊りに行こうぜ」は…
亀本
まさにサビの後ろがギターソロなんですけど…これ、ひどい話なんですよ。僕が弾いた間奏のギターソロをサビにそのまま貼付けたんです。知らない間に(笑)。
あ、そういうことだったんですね! それは攻めているはずだ。
松尾
申し訳ないんですけど、勝手にやっちゃったんです(笑)。最初のアレンジは歌だけが立っていて“何かつまらんな〜”と思ったんで、エンジニアさんにお願いしました。自分の歌がバリバリ出てる後ろで変な音でバリバリにギターソロを弾かれている…それって今の日本の音楽にはなかなかないし。
亀本
かなりすごいことになってますけどね(笑)。
「さよなら僕の町」は逆にシンプルな成り立ちで。
松尾
これは大学に合格した時に作ったんですけど、その時の“新しいところへ行く”っていう気持ちが今と似ているので1stに入れるべきだなと思って。で、その気持ちを生々しく表現するために、通っていた高校の美術室でマイクを1本だけ立てて録りました。そこにある空気も録りたくて一発レコーディングで録った、特別な曲です。
高田漣さんプロデュースの「WONDER ALONE」はカントリーの匂いもあって、組み合わせの妙が面白いですね。
松尾
自分の描きたかった世界観と漣さんの世界がすごく合って、いいマッチングでできたと思います。漣さんと話したのは、“60年代のイギリスのバンドがアメリカのカントリーミュージックを初めて知って憧れて、それっぽく弾いてみた”みたいな感じにしようと(笑)。だから、“カッコ良いニセモノ”みたいな。ギターで言ったら、ビーザル・ギター(50〜70年代あたりのメジャーブランドではないメーカーによる、独自性を持ったデザインの珍奇なギター)のような(笑)。
亀本
漣さんはバンジョーやペダル・スティールも弾いてくれたから、アルバムの中でもそこだけサウンドに特別感が出ているかもしれないですね。
ロックの根源的なカッコ良さと、それを今の感覚と表現で鳴らすカッコ良さ、それを堪能できる作品集でした。
亀本
今ってロックバンドよりDJさんだったり、EDMのクリエイターの人たちのほうが頑張っている…受け入れられているように見える中、ロックバンドとして若い人たちに“これ、すげぇイケてるんだよ”っていうものを提示したいと思っているんです。だから、“これ、カッコ良いじゃん! クールじゃん!”って伝わるものを作りつつ、ちゃんとマナーは守っているっていうところを大事にやっていきたいと思っています。
松尾
GLIM SPANKYがロックを継承し、新しいものにしていくことで、根の張ったロックをもう一度蘇らせたいというか。そして、日本人にしかできないロックを母国語で表現して、だけどサウンドはワールドワイドですごく広い風景が思い浮かぶ…日本語が通じない人にも何かを感じてもらえる、ちゃんと伝わるロックを、音楽を、世界に向けて発信していきたいと思ってるんです。もちろん音だけじゃなく、アートワークもカルチャーもひっくるめてカッコ良い音楽っていうのをどんどん発信したくて。それは絶対に不可能じゃないと思うし、人生をかけてやる意味があると思っています。
アーティスト
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