【ビッケブランカ】矢印を外に向けて
バーンと広げたかった

ライヴを意識しながら、ピアノマンというイメージに限定しないサウンドを目指した2ndミニアルバム『GOOD LUCK』が完成。心境の変化を含め、そこに至るまでの経緯を訊いた。
取材:山口智男

新作には、前作『ツベルクリン』をリリースしてからの心境や音楽への取り組み方の変化が反映されているようですね。

ワンマンツアーが終わってから、『ツベルクリン』を客観的に聴いてみたら、CDの盤の丸い中にきれいに収まってるなって感じたんですよ。もちろん大好きな作品ではあるんですけど、その丸い中から出たくて。矢印を外に向けてバーンと広げたいと感じて、自分ひとりで緻密に作るのではなく、音楽そのものが持ってるパワーを表現してみようってところから『GOOD LUCK』の制作が始まりました。

今回、バンドスタイルでレコーディングするにあたって、ギタリストの佐々木ヤスユキさん(ex.bonobos)をはじめ、メンバーはどんなふうに選んだのですか?

もう長いことライヴをサポートしてもらってるメンバーなんです。いろいろな意見を遠慮せずに言ってくれる兄貴たちですね。その人たちといいライヴをするために、いい曲を作ろうと思いました。ストックから出した曲もあるんですけど、いいライヴをするのに相応しいアレンジに変えたんですよ。自分がやりたいことをやれたという意味では前作と変わってないし、英語で歌うヒップホップのトラックっぽい「You chick over」って曲を入れたり、「TARA」というバラードを入れたり、いろいろな表情を見せられる曲が揃ってると思います。レコーディングも楽しかったですね。自分ひとりで作ったものに信頼できる兄貴たちの力を借りて命を吹き込むというか、自分が作った曲がどんどん色付いていくんですよ。そこから矢印が伸びていって、外に向いたー!!って思えた瞬間は、ほんと気持ち良かったです。

歌詞やヴォーカルにも変化があったのでは?

サウンドに負けないようなものにしなきゃって気持ちに自然になりましたね。みんなが主張できるものを持ってるんですけど、一番伝えたいのはやっぱり僕の言葉だから。オケを録ってから、“この歌詞じゃ弱い、もっと自分の内面をえぐって、引っ張り出さないとオケに負けてる”って思って書き直したものもあります。点となる出来事を想像力で膨らませるという歌詞の書き方は基本的に変わってないんですけど、「SPEECH」と「TARA」だけは…これは初めて言うんですけど、実体験の部分もある(照)。自分の奥底からえぐり出すと、やっぱり強い言葉がいっぱい出てくるんですよね。

1曲目の「Wednesday」と最後の「Wake up sweetheart」のアレンジを佐々木さんにお願いしていますね。

佐々木さんって生粋のギタリストなんですよ。そういう人のアレンジって、僕みたいなピアノ弾きとは絶対に違うから、それを聴いてみたかったんです。そしたらアコースティックギターまで入ってきて、全然違いました。前作同様、ピアノもちゃんと鳴ってるんですけど、その2曲はピアノマンとは違うイメージを持ってもらえると思います。

リリース後の東名阪ワンマンツアーが楽しみですね。

そこが『GOOD LUCK』の最後の仕上げ。当然、気合も入るし、すごく楽しみです。だから、アルバムを聴いたら絶対観に来てくれないと、アルバムが終わらない(笑)。『ツベルクリン』のワンマンツアーでお客さんから反応をもらいながら自分の曲を届けてみて、それ以前とは全然違う感覚でライヴができるようになったんです。ライヴが楽しいんですよ。だから、前回とは全然違うライヴになると思います。

『GOOD LUCK』

  • 『GOOD LUCK』
    NBDL-0029
    2015.08.05
    1944円

ビッケブランカ

ビッケブランカ:美麗なファルセットヴォイスと緻密なコーラスワークを独創性に富んだ楽曲に昇華させ、ポップとロックの間を自在に行き来する、新しいタイプのシンガーソングライター。2016年10月にミニアルバム『Slave of Love』でメジャーレーベルに移籍し、19年に発表したシングル「まっしろ」が日本テレビ系ドラマ『獣になれない私たち』の挿入歌に、同年6月に発表した3rdシングル「Ca Va?」がSpotifyのCMソングに抜擢されるなど幅広い世代から注目を集める。

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