【家入レオ】大人になっていくために
必要な区切りの曲
切々と、ゆっくりと染み入ってくるような歌声。透明感のある、映像的な詞世界。夏の終わり、もの思う夕暮れ時にとても似合うバラードナンバー。別離と、そこにある永遠。「君がくれた夏」は彼女の深化が美しく表れた一曲だ。
取材:竹内美保
今作で10作目のシングルとなるのですが、一作一作積み重ねてきての10枚目、何か感じるもの、思うことはありますか?
気が付けば10枚目という感じですね。なので、“これからだな”という思いと、自分発信がこれからどれだけ大事かということをすごく感じています。デビューから3年目まではすごく守られていたし、ある程度のレールの上を走っていたなって、3年間を走り切って初めて分かったんですよね。でも、4年目は本当に自分がどうしたいか、どういうアーティストになっていきたいか…そこを改めて考えているというか。だから、ここからが本当の意味での家入レオのスタートですね。
新しい道を自ら開拓していく? 新しい風景を見るために。
はい。だから、ワクワクしていますし、ドキドキもしています。一緒にやっていこう!って思ってくださっているスタッフさんたちとも頑張っていきたいですね。特にライヴはより大事にしたいです。制作に関しても、“ライヴでこの曲を伝えたいからリリースする”というところにも重点を置いていけたらなって思ってます。ライヴでの手応えは感じやすいし、ライヴがあるからアーティスト活動をやっている意味があると思っているので。
そういう意味では、「君がくれた夏」はいいかたちで届けることができたのでは? 先日のツアーファイナルで初お披露目でしたから。
そうですね。嬉しいです。しかも、ライヴの雰囲気をある程度作っていけた中、アンコールでの披露だったので、力まず自然体の私で伝えられたなって思ってます。
ライヴで聴いた時にも感じましたが、余韻もすごく残る、じんわりとくる曲だなって。
ありがとうございます。ボディブローの連打のような曲ではなく、“え、なんか切ないんだけど!?”っていうタイプの曲なので、そのじんわり感はすごく嬉しい言葉です。
どういうイメージから世界観を広げていったのでしょう?
ドラマ『恋仲』の主題歌のお話をいただいて制作したので、台本に描かれたストーリーが軸になっているんですけど、そのストーリーが私にドンピシャだったので、イメージはスムーズに広がりました。建築家になる夢を抱いて上京してきた主人公の男の子がとりとめのない日々を過ごしながら、いろんな波に揉まれて少年から大人になっていく、というストーリーなんですけど。その子供が大人になる瞬間って喜びもあるけど、切なさもあって…日常にあるものや人がパッと切り替わる…“また明日ね”って言ってた子たちに“また今度ね”って言わなくちゃいけない切なさとか。あと、“あの子が語っている未来の中に自分はいないんだな”とか。今まではそれぞれの未来の中にお互いがいたから、いろんな計画もできたし、いろんな話もできたけど、これからはちょっと離れたところからこの子の人生に関わっていくことになる…それってすごく切ないと思って。その切なさをギュッと閉じ込めました。
埋められない距離感ってできちゃうんですよね、人って。
そうなんですよね…。永遠の別れではないんですけど、でも守るものがお互いにあるからこそ一緒にいることなんてできない、というのもあるし。なんか…そういう旅立ちの歌というか。自分もそうだし、ドラマの主人公の葵くんもそうだし。だから、まず同世代の人たちが1歩を踏み出す時に背中を押せたらいいなって。うん、ある意味、応援歌かもしれないです。私にとっては本当に大人になっていくために必要な、区切りの曲でもある気がします。
歌詞に“教室”というワードが出てくるのも、ひとつの決別の表れかも。
あー、そうですね。ギリだったんですよ、自分の中でも。でも、“教室”ってワードを書きながら…前だったら“教室になんていたくない!”って感じだったのが(笑)、“あ〜、懐かしい。むしろ、守りたい!”って思っちゃって。だから、今まで使ってきたワードでも、全然違う響きになっているというか。
2番の《その片隅で》と歌っているところで音がミュートしますよね。この瞬間って時が止まっている感じがするし、でも止まっているからこそ永遠のような気もするし…。
私、終わったものにしか永遠はないと思っていて。もともとはハッとする瞬間を表現したいと思って音をミュートしたんですけど、確かにそういう解釈もありますね。あと、切なさや名残惜しさ、何か掻き立てられるような感じを表現するために、サビは上のハモりを4.5で出して、主旋を5.5にして、どっちが主旋律か分からないところで歌いました。いつもだったら上のハモりは3で、主旋は7くらいにするんですけど。
ちょっと空気成分多めの歌唱でもあるような。
あ、そうです。声成分よりも空気成分のほうを多くしました。
そして、カップリング「Shooter」は対極の熱くクールなナンバーで。
これ、実は原型は高校生の頃に作った曲なんです。十代特有の自分の可能性を全部消し去りたくなる、壊したくなる瞬間ってあるじゃないですか。そういう十代の頃の自分がそのまま表れています。《花の命は 短すぎて》のところは、ほんと自分の十代を象徴するフレーズですね。
十代の時の破壊衝動、破滅願望はすごいですからね。
すごいですよね! でも、当時から時が経って、今はこれをポップに歌うからこそクールさも生まれた気がします。
そして、3曲目には「I Feel The Earth Move」のカバーがライヴバージョンで収録されているという。
キャロル・キングはピアノで歌っていたんですけど、ギターでやってみてもはまりが良かったので、自分はギターで歌いました。
ギターの音、すごくいいですよね。
ありがとうございます! テイラー・ギターで、上京した記念にいただいたものなんです。大事に使い続けていきたいなって思っていますし、これを皮切りにカバーもまたやっていきたいなとも考えています。
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