【怒髪天】新春第一弾! 怒髪天、愛
と故郷を唄う
L→R 坂詰克彦(Dr)、清水泰次(Ba)、増子直純(Vo)、上原子友康(Gu)
2016年初となるニューシングル「セイノワ」が完成。今歌わずにいられない、今歌うべき実直で切実な想いが詰め込まれたこの曲について、“一切、説明はしない!”と始まったこの取材。この曲に込めた増子直純(Vo)の覚悟を聞け!
取材:フジジュン
2015年の怒髪天はいかがでしたか?
当初の予定では30周年を終えて、47都道府県ツアーを終えて、2015年は通常営業に戻って、自分たちのペースでやろうと思ってたんだけど。アホみたいに忙しかったね(笑)。8月に出したミニアルバム『音楽的厨房』なんて、最初は出す予定がなかったからね。アコースティックを強化したくて、アレンジを変えてやろうってスタジオに入ったら、面白くなっちゃってさ。“これで1枚出すか?”って話になってリリースして、ライヴもアルバムツアーに組み込んじゃったから。同じ曲のアレンジ違いを交互にやっていかなきゃいけなくて、それがまた大変で!
わはは。30周年で振り返る機会も多かったから、ご自身の楽曲の面白さや魅力を改めて見返すことができて、さらに地盤を固めた期間でもあったのかなと思ったのですが。
それもあるね。自分たちの曲を再構築するってのは、自分たちのトリビュートをしてるのに近いからさ。そういうのも気楽に楽しむつもりだったのに、予想以上に大変だった。
そんな期間を経て、2016年一発目となるシングル「セイノワ」は、怒髪天が今やるべきこと、歌うべきことが明確に見える中で完成した曲だったんじゃないかと思いました。
「セイノワ」に関してはね、来年50歳になるにあたって、自分たちの仲間や後ろから来る者に対して、俺が今一番伝えたいことを書こうと思って書いたんだけど。そこには二重三重の意味があって、どうとでも取れる曲になってるから、内容についてインタビューで答えないって決めたの。
歌詞に特定のイメージや意味を持たせず、それぞれの受け止め方をしてほしいと。
そう。俺も恋愛ではない、もっと大きな愛というものにちゃんと向き合って歌おうと思って作ったし。メッセージソングと言われるものの原点に立ち返ろうと思って、今伝えたいことは全部詰め込むことができたと思ってるから、それ以上の言葉はいらないんだよ。
では、歌詞について訊くみたいな野暮なことはしませんが。僕はこの曲を聴いて、また怒髪天というバンドの本質が見えた気がしたし、歌詞にもある“覚悟”、この曲を歌う覚悟が、歌からひしと伝わってきました。そこで素晴らしいなと思ったのが、8ビートに乗せた伝わりやすいメロディーで。“届ける”ことを強く意識しているというか。
そういう曲にしたかったというのはあったな。言葉や言いたいことに特化した曲にしたかったから、こんなストレートな曲は作ってなかったくらい、ストレートでシンプルになったし。俺もいい年こいてきたからさ、周りの人や先輩に教えといてほしかったことがたくさんあるんだよ。それを周りにいる人くらいには、ちゃんと伝えておかなきゃいけないと思ってるし。自分もいつ、何があるか分からないから。今、やるべきことをもったいぶらないでやろうというのは、何年か前から決めていて。次に出てこなかったら、しょうがねぇだろう! と思って、今持ってるものは全部出すようにしているんだよね。
“愛”を歌うことに照れてる場合じゃないと。
そう。時代的に照れてる場合じゃないというのもあるしな。自分たちの中で禁じ手になってたことを、ここ10年くらいは全部解放している。愛を歌うこともやっておかなきゃと思ってね。“愛”って言葉を使わず、愛を伝えるやり方もあると思って試行錯誤もしたけどさ、“愛”って言葉を使わないと、伝わらないことがあるんだよ。もう、恥ずかしいとか照れとか、ロックには必要ねぇよ。ロックなんて、もともと恥ずかしいものなんだから。“普段、何してるんですか?”“ロックです”って言ってる時点で、十分恥ずかしいんだから(笑)。
わははは! 『M-1ぐらんぷり』でメイプル超合金が“街で見た変わり者に、大人になって自分がなると思わなかった”と言ってましたけど、ロックも一緒ですよね(笑)。
ほんとそうだよ! 俺、近所のガキが“あのおっさん、何やってる人なんだろう?”って言われる人になりたいと思ってたけど、気付いたらなってたよ。近所のコンビニのバイトくんに、絶対“ロック”ってあだ名付けられてると思うもん(笑)。
2曲目「さらば、ふるさと」は故郷について歌ってますが、まだ東京で余所者だって感じることってあります?
あるある。やっぱこの土地に根付いた人とは違うよ。かと言って、札幌に帰っても俺の馴染んだ街ではないんだよな。そこは今を担ってる若いヤツらの街であるべきだと思うし。そう思うと、故郷って何なのかな?ってなるよね。
僕も《故郷は場所のことじゃなくて あの頃の思い出だった》という歌詞にハッとさせられました。
そうだな。ウチの親が最近、“北海道は寒いのが辛いから、熱海あたりに引っ越したい”って言い出して。そうなると俺、実家に帰ろうと思ったら、熱海に帰ることになるわけで、風情も何もねぇなと思ったんだけど(笑)。やっぱり親のいるところが俺の故郷になるのかな?と考えたら、故郷の定義って曖昧だなって思うよね。この曲で歌ってるのは故郷に対する執着心がなくなるってことじゃなくて、もっと広い意味で“時代”とか“空気”みたいなものも故郷になりうるということなんだよ。
愛を歌って故郷を歌って、怒髪天の“R&E”(リズム&演歌)もいよいよ深みを増してきましたね!
それだけ聞くと、どんどん演歌っぽくなってきてるよな。“新春第一弾! 怒髪天、愛と故郷を唄う”だって(笑)。
リスナーの年齢層がグッと上がりますね(笑)。でも、「セイノワ」は若い子にもぜひ聴いてほしいです。
いろんなイベントなんかに行ったりすると、“このバンドが好きな子には響かねぇかもしれねぇな”と思う子に響いてたりするからビックリもして。若い子にも響くものがあると思うんだよ。あと、なんかで“各国で残る音楽は民族性の高いものだ”って読んだけど、俺らもその傾向はあるからさ。普遍性はあるんじゃない?愛と故郷を歌ってるくらいだから(笑)。思うんだけど、向き合って話す時って分かりやすく喋るだろ? 結局、歌で言葉やメッセージを伝える時も、そこが一番大事だと思うんだよな。だから、年々余計な装飾を省いてシンプルになっていて、それはすごく難しいし、ハードルは上がるけど、すごいやり甲斐は感じてる。曲を聴いてくれるのって、ワンチャンスだと思ってて。最初の印象っちゅうか、初めて聴いた時に“おっ!?”と思うか思わないかが一番重要だと思うから。この曲も聴いた人のどこかに引っかかってくれて、いろんなことを想う“足し”になってくれたら嬉しいよな。
アーティスト
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