【寿君】寿君の三十路と10周年を記念
する11曲
レゲエ激戦区関西エリアを拠点に、各地のダンスホールを揺るがす寿君が、3枚目のフルアルバムとなる『SPECIAL THANX~ありがたや~』をドロップ!
取材:土内 昇
今作はどんな作品にしたいと思って制作に入られたのでしょうか?
このアルバムを作った自分は現在30歳であって、20歳からレゲエのステージでマイクを握って歌わせてもらってから、ちょうど10年が経った、ダブルで節目の年。なので、今まで培ってきたものも振り返りつつ、この作品を40歳 50歳になってから聴いても誇らしく思えるような、寿君の三十路と10周年を記念する11曲たちが永遠にこの世で輝けますようにと心がけて制作にかかりました。あと、毎回絶対に前作超えを意識している自分が、今回の作品ではどのようにすれば前作を超えられるのかという葛藤もありましたが、前作をリリースしてから今までの成長している部分と知識を存分に活かし、曲数も増やしてトピックスの幅を広げてみたりして、前回ではまだできていなかった新しい自分を表現することも今回心がけましたね。
そんな今作に“SPECIAL THANX ~ありがたや~”というタイトルを掲げた想いを教えてください。
僕の名前は寿君なんですけど、その名前からめでたいことには欠かせないキャラクターを貫いていて、毎年GWとお正月に『ありがた夜』『おめでた夜』というワンマンライヴをやったりしているので、寿君のスラングでもある“ありがたや~”という言葉にちなんだニュアンスをうまく絡めたかったんです。普通なら歌詞カードのブックレットの一部分に出てくる“SPECIAL THANX”という気持ちと言葉をタイトルにして、CDを聴いてもらいたい気持ちはもちろん、自分の感謝の気持ちを全国のみんなに受け取ってもらいたくて、このタイトルを選びました。
そんなアルバムですが、主軸はレゲエでありつつも、ダンスホールチューンやスカナンバーもあり、さらにサマーチューンやスイートなラブソングもあって、サウンドアプローチも多彩で聴き応えがありました。
11曲を頭から順に聴いていっても飽きない作品にしたかったので、 CメジャーとかDメジャーとかのキーが得意な僕が、下でとれば低すぎて上でとれば高すぎるAマイナーとかAシャープとかをあえて選んで冒険してみたり、中には録音はしてみたものの、今回のアルバムには不向きなサウンドの曲は思い切って却下したりもして、通して聴いた時の絶妙な聴き心地と表情を求めました。
「JAH JAH KNOW EVERYTHING feat.大地」の威風堂々としたトラックや、 「Ai no Uta feat.MUNEHIRO」の大胆にストリングスを取り入れたドラマチックなトラックが印象的だったのですが、やはりフィーチャリング相手によってサウンドアプローチは左右されますか?
コンビネーションじゃなくても、歌の雰囲気に合わせてトラックを選んだりします。リリックの内容である程度の表情が出るけど、トラック選びは本当に重要です。あと、コンビネーションとはどちらかが秀でているのではなく“自分+相手”の足し算でありたいと考えていて、お互いの得意な部分の主張とバランスやと思ってます。大地というアーティストは地元の奈良の後輩でもあり、ヒップホップ・サイドとのセッションで僕名義の楽曲やったんで、僕は大地の渾身のバースを際立たせるためにサビに徹したし、その逆でシンガーのTAK-Zくんとのコンビの時は、スイートなTAK-Zくんのサビを生かすために僕がバースに徹しましたね。MUNEHIROさんとやる時、卍くんとやる時など、その人と合ったカラーのトラックやテーマに近付けようとしてみるし、コンビネーションは個々に描き始めるやつもあれば、レゲエの独特の各レーベル企画の曲があったりするので、そこには常に新しい発見があっていつも勉強になります。
今作の1曲目は《あの楽な方を選んでて気持ちが晴れるかよ》《挑まなければ勝つ事ない》とメッセージするレゲエナンバー「WHO DARES WINS-イドムモノヘ-」なのですが、オープニングを飾るのは、やはりこの曲だと最初からあったのでしょうか?
この曲を書き始めた時にはまだ1曲目にしたいこだわりとかはありませんでした。でも、この曲を手がけてからアルバム制作がいよいよ始まった感じはありましたね。その時、すでにコンビ集の企画アルバム『コンビイズム』収録のために「JHA JHA KNOW EVERYTHING feat.大地」と、SOUTH YAAD MUZIKからの企画で「ビューティフルカラフル feat.卍LINE」が手元にあったので、この3曲をバランス良く並べるために必要なテーマや雰囲気の曲を上から順に揃えていくやり方で進めていきました。頭から通して聴いて、次はどんな曲がきたら面白いかを考えてから、その曲を克服していく感覚が、まさに“イドムモノ”、そのものやったと思います。
この曲はプロボクサーの大沢宏晋さんに向けて作られた応援ソングでもあるのですが、どんな想いを込めて作った曲になるのでしょうか?
単純に宏晋は同い年の友達なんです。宏晋の試合は仲間たちと応援しに行くし、宏晋も僕のライヴに仲間を連れて観に来てくれます。たまたま僕も宏晋も表舞台に立って自分のスキルを披露する仕事をしている…僕は歌を歌う人であり、宏晋は拳で戦う人で。付き合いもなんやかんやで長く、駆け出しの時期に知り合って、お互い諦めることなくやってきて、今では高次元の役割を果たせるようになってきました。そんな別のステージで頑張ってる仲間たちから刺激や感動を得た時、それを応援することが当たり前やと思ってます。自然の成り行きでできた曲かもしれませんが、この曲がきっかけになって、自分の得意とすることをまっとうしている人たちのプラスの連鎖が生まれて、別のステージで頑張ってるアイツの役に立てれたら最高やなって、宏晋とも話しましたね。
タイトル曲でもある「SPECIAL THANX」は《生駒の懐かしの高架下》という地元が出てくるフレーズもあって、ひとつひとつの言葉がリアリティーというか、説得力がありました。
この曲を書こうってなったのは、もうアルバムに入れたい曲も雰囲気もだいたいまとまっていて、“さぁ、このアルバムのリード曲になる曲を作ろうか”という、1曲目の「WHO DARES WINS-イドムモノヘ-」から始まって、ラスボスに挑む感じでした(笑)。トラックの候補は3曲ぐらいあって悩んでたけど、沖縄での制作合宿で収録したい曲をPCで並べて聴いた時に、このトラックがかかって…歌はできていなかったんですけど、沖縄のサウンドマン友達が“何、このトラック!? ことやんが乗ると絶対良いのができそうだね”って。その時、迷いなく“このトラックでリード曲を、それを沖縄で生み出します!”と決めました。不思議とそれに細かい理由はなかったですね。この気持ちが決まったのは、アルバム制作の中盤に差し掛かったらへんだったんですけど、まるで導かれていくようだったというか。頭から順にこのアルバムを作ってきて、足りないピースを埋めていって、この曲の制作にかかったので、そこには“感謝”の気持ちが一番強く光ってました。ここに至るまでの長かった経路、味わった感情が言葉としてあふれ出てきたし…そんな時ってスラスラ出てくるもんで、この曲のタイトルがまさに自分の“今”の、自分と人にできる最高のギフトやと思います。
収録曲の中で印象深い曲、または思い入れ深い曲は?
いつでも、どの曲に対しても全身全霊を注ぎます。なので、特に印象深いとか、思入れがあるとかは決めかねちゃいます。ちなみに一番最後に書いたのは最後の「ISLAND LOVE」でした。このアルバム制作という大仕事をした一応のゴールという区切りやから、最後のカンカンカンって音が試合終了のゴングに聴こえるところが好きですね。あ〜だこ〜だ突き詰めて最善を尽くしましたが、これは完璧ではないかもしれない。そこに答えはないし、追及にゴールはない。これが歴史に残る大作で思いっ切りヒットするかって言うたら分からないけど、これが心の底から出た気持ちです。やって良かった!
では、最後に読者、リスナーにメッセージをお願いします!
この感謝の気持ち、『SPECIAL THANX~ありがたや~』という作品を全国各地、ひとりでも多くの人に聴いてほしい一心です。今作のリリース記念と挑戦の意味を込めまして、自身初のワンマン全国ツアーを回り、ずっと夢のステージだったZepp NAMBAでのファイナルを計画してます。リスナーのみなさんとはこれからもともに成長していく同士でありますので、元気な顔を見せに現場に遊びに来てください! それが僕の力に変わります。そして、これからも“GOOD MIND”で、今よりも成長した歌詞やメロを生み出していきたいし、まだまだ攻めモードでメディアを揺るがす曲も残していきたいし、ライヴでもカマしていきたい! 抱えている事柄が大きくなればなるほど、ひとつひとつの小さなことに適当になりがちだけど、しっかりひとつひとつ小さなことに感謝したり、感動したりしていたい。いい意味でこの幸せを拡散できるように日々精進します。ファンのみなさん、リスナーのみなさん、僕の家族、全てのサポートしてくれているみなさまへ。“マジで感謝してます Special thanks to Y’all”。そして、これからも寿君とよろしくお願いします。
アーティスト
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