【LACCO TOWER】心に訴えかけるよう
な物語が集まった
L→R 真一ジェット(Key)、塩崎啓示(Ba)、松川ケイスケ(Vo)、細川大介(Gu)、重田雅俊(Dr)
メジャー2ndアルバム『心臓文庫』が完成! タイトルのインパクトも絶大だが、1曲目の「罪之罰」から純文学的のように繊細な日本語詞と、感情表現豊かな演奏が響く、唯一無二の力作に仕上がっている。
取材:高橋美穂
もう、前作の『非幸福論』以上にインパクトがあるタイトルは、出てこないと思っていたんですけれど(笑)。
松川
もう出ないですね(笑)。
(笑)。どんな経緯で生まれてきたタイトルなのですか?
松川
僕、毎回、歌詞の前に短編小説を書くんです。そこから歌詞を抜粋していくんですけど、今回、全曲で濃い内容の短編小説を書いていて。胸にある想いを文字に起こして伝えているので、心に訴えかけるような物語が集まったと思うんですよね。心臓って臓器ですけれど、心や気持ちを表してしているので。
いきなり脱線しますが、松川さんはどんな小説や作家が好きなのですか?
松川
一番好きなのは太宰治ですけど、作家さんが好きだから本を選ぶっていうよりは、タイトルで選んだりしているんですよね。ただ、純文学のほうが好きです。
なるほど。わびさびなど、日本語だからできる表現を生かした歌詞が多いですよね。
松川
あぁ、確かにわびさびがある本が好きですね。“いわずもがな”が読み取れるというか。
紙資料にある松川さんのコメントには、“耳に読んでもらう名曲”というキーワードが出てきますけど、これは今作のテーマだったのですか?
松川
いや、僕らだいたい曲先なんで、あとで歌詞を当てはめて、結果として出来上がったものがこうなったっていう。この間、大もとの曲を作る真一ジェットが言っていたんですが、メジャー一発目のアルバムって良くも悪くも構えている部分があったけど、今回ははっちゃけたらしいんです。そういうサウンド面もあって、“じゃあ、俺どうしようかな?”って歌詞と曲との駆け引きを考えたんですけど、とは言え伝えたいことは変わっていないし、ただ聴いてもらうより、耳で読んでもらうようにいろんなことを感じてほしいなって。
曲先ということは、1曲目の「罪之罰」なんて大変だったんじゃないですか?
松川
はは!
塩﨑
これは最初からプログレみたいな感じでした。インストでもいいんじゃないかぐらいの。だから、すごくマニアックになってしまうんじゃないかなって思ったんですよ。まさか1曲目とは思っていなかったし。でも、わりといい出来上がりで。今までの中で一番尖った曲になったかなって。しかも、歌もバシッと出せたし。
全員が自己主張していますよね。
塩﨑
アルバムの1曲目って序曲なので、イントロは長めにして、演出もイメージしやすくしたいんですよね。
インパクトがあるけれど分かりやすいっていう。
塩崎
そうそう。来たよ来たよ!って。
歌詞はどんなイメージで書きましたか?
松川
このアルバムの1曲目はこうだろうなっていうイメージで書きました。シンプルに分かりやすく、とは言え単純にならないように、哲学書の序章みたいな。
序章にしては尖っていますよね。
松川
僕らも環境が変わって、見てくれる人も多くなれば、良い意見も悪い意見もいろいろ入ってきて。そういうことを聞いていると、“いったいこれって何が悪い? どうしたらいい?”って考えることも増えて、その心象が入っていますね。
メジャー2ndだからこそ書けた歌詞ですね。
松川
そうですね。
曲順もいいですよね。尖った「罪之罰」から「薄紅」に向けてポップになっていって、「蜂蜜」を美しく聴かせたかと思ったら、「楽団奇憚」ではっちゃけるっていう。
塩﨑
ふふふ。
松川
ライヴでもそうですけど、下げたら上げる、上げたら下げるっていう。
私は「蜂蜜」と「珈琲」が文学の色が濃く出ていて、すごく良いと思いました。
松川
「蜂蜜」も「珈琲」も僕の机の上にあったんで、そこからタイトルになったんです(笑)。
まさかの生活に密着したアイデア(笑)。「蜂蜜」はひと筋縄ではいかないラヴソングですよね。
松川
本当は不倫の歌なんですよ。
あ、ちょっとエロいと思いました。
松川
でも、それを出しすぎるのもなって。わびさびですよね。
そして、最後は「相思相逢」で壮大に締め括られるという。
松川
感謝を伝えるような歌詞はあまり好きじゃなかったんですけど、こういう領域に踏み込めて、活動を始めて10何年目ですけど、バンドとして成長できたと思います。今まで僕らは結婚式で披露する曲がなかったんですけど…
これ、ぴったりです!
松川
できちゃいましたね(笑)。もともとハッピーな状態を歌うことはなかったんですけど、バンドを長くやっていればそういう場面にも出会うし、お客さんに向けて“ありがとう”や“楽しいでしょ?”って言っているバンドが、曲でそういうことを歌えないのもなって。
「相思相逢」もですけど、喜怒哀楽をダイナミックに鳴らせるアルバムになりましたね。
塩﨑
いやぁ、ほんとキツかったです。スケジュールの中で、やるしかない!っていう日々で。でも、改めてマスタリングを聴いたりしていて、ここから曲が育っていくと、もっともっと色濃くなっていくのかなって。特に「相思相逢」なんて、ライヴでひとりひとりに聴かせて育つのが楽しみです。
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