【yEAN】△が○になったyEANのポップ
サウンド

90年代エモの影響のもとでスタートしながら、それだけに止まらない幅広いポップサウンドを追求する男女6人組、yEAN。60年代風のR&Bサウンドにアプローチして新境地をアピールした1st EP『BoyBoyBoyBoyGirlGirl!!!!』についてサナキ(Gu&Key&Vo)、キャッチー師匠(Key&Vo)に訊いた。
取材:山口智男

2015年に現在のメンバーで再スタートした時、何か変化はありましたか?

サナキ

それまでサポートだったメンバーが正式加入したのが2015年の4月なんですけど、それまでもちょこちょこメンバーが入れ替わってたんですよ。だから、どのタイミングが再スタートなのか分からないんですけど(笑)、変わったことと言えば、曲を書いていた人たちがいなくなっちゃったんでみんなで曲を作り始めたんですけど、結局僕が作るようになりました。だから、1stミニアルバム『4C』と去年8月にリリースした2ndミニアルバム『NATURAL』では、曲の雰囲気が全然違うと思います。パッと聴いた時に明るい感じややさしい感じをイメージできるようになったというか、△が○になった感じはありますね。

前よりもさらにポップになったのでは?

サナキ

僕が曲を作るようになってからポップを意識するようになりました。もともと、聴くのもやるのもポップな音楽が好きなんですよ。

結成した時は4人編成だったバンドが、今では6人編成になっていますね。

サナキ

もちろん、必要だから増えていったんですけど、最近の僕は暇ですね(笑)。常に6個の楽器が鳴っている必要はないと思うんですけど、3台のシンセの音が必要になる瞬間があるので、そういう時に6人いてくれると、イメージしたものが同期に頼らずできるんですよ。ライヴで同期を入れると、僕ら冷めちゃうんです。だから、できる限り生で演奏するならやっぱり6人いたほうがいいし、それにステージにいる人数が多いほうが観てる人もテンションが上がるだろうし。

曲はどんなふうに作っているのですか?

サナキ

僕がある程度作ったものを持っていって、それをみんなで合わせるんです。1曲ごとに“こういうのをやりたい”って僕がイメージしたものがあるんですけど、メンバーひとりひとりのスキルだったりキャラクターだったりがあるから、もともとイメージしていたものとは違うものになることが多いですね。でも、いい曲だし、yEANっぽいからいいでしょって(笑)。

“こういうのをやりたい”の“こういうの”は結構幅広いんですか?

サナキ

その時々で違いますけど、今回のEPは“このビートをやりたい”というところから作りました。モータウンな感じとかあまり入れられなかったけど、ソウルとかゴスペルをやっている人たちのビートを入れたかったんです。そのふたつのリズムパターンがまずあったんですよ。他にも何曲か作ってたんですけど、たまたまそのふたつができたので、バラバラに出すよりは一緒にしたほうがいいと思って、“シングルとしてリリースさせてください”とレーベルに提案したんです。

あまり入れられなかったとおっしゃいましたけど、「会えたらいいね」「シャッターチャンス」ともに60年代っぽいR&Bの感じは、ばっちり出ていると思いますよ。

サナキ

今回、初めてやってみました。でも、ここでやりたいことはもうやれたので、これが次につながる新しい一面かと言うと、そんなことはなくて。次はまた次で新しいことをやってると思います。「シャッターチャンス」も実はThe 1975を混ぜた感じを最初は意識してたんですよ。

キャッチー師匠

全然、違うものになっちゃいましたけど(笑)。

サナキ

曲のもともとのアイデアになったギターのフレーズは変わらないんですけど、もっと違うアレンジだったんですよ。歌詞も最終的に“私を捉えてほしい”になりましたけど、最初は“お箸を揃えてほしい”だったんです(笑)。

キャッチー師匠

練習の時はずっとそれで歌ってました(笑)。

サナキ

サナキ:そろそろちゃんとした歌詞にしなきゃって考えてたら、語呂で“私を捉えてほしい”って出てきて、私を捉えるって何だろう? あ、シャッターだ。じゃあ、“シャッターチャンスだ”って全部後付けで(笑)。

キャッチー師匠

アレンジももっとゴリゴリというか、最終的にオルガンを使いましたけど、もともとは今っぽいシンセの音で作っていて。

サナキ

今っぽいビートよりも60年代風の跳ねる感じのほうが合ってたんですよ。だったらシンセもやわらかいほうがいいんじゃないかなってなりました。

男女の別れと出会いを描いた歌詞も60年代風のサウンドにぴったりですね。

サナキ

yEANはそういう歌詞が多いですね。

キャッチー師匠

でも、「会えたらいいね」は歌いながら自分でも胸キュンだと思いました。いつもはそんなに歌詞に思い入れはないんですけど(笑)。

どんなところが胸キュンポイントだったのですか?

キャッチー師匠

いやらしくないですよね(笑)。男女の別れを描いているんですけど、生々しくないというか。

サナキ

ああ、確かに赤裸々な感じではない。

キャッチー師匠

フワッとしているというか、これはお別れなのかな?って想像させるところがいいと思います。直接的じゃないところがいい。

サナキ

それは全部そう。嫌いなんですよ、ゴリゴリした歌詞が。さぶいぼが立っちゃう(笑)。「会えたらいいね」の歌詞は、僕よりももっと若いカップルの視点で書いてるんですけど、実はそのストーリーを作る前に歌詞にしたいことがあって、それの設定として別れのシチュエーションを作っているだけなんです。本当に言いたいのは、《この街もいつか変わってゆくのかな》っていう最後の1行だけ。周りのバンドが売れていったり、友達が結婚したり、好きな居酒屋が潰れちゃったりして、“俺だけここに取り残されてるな”って気持ちで書いたんです。それをそのまま書いちゃうと“こいついじけてんな”ってなっちゃうから、そういう気持ちになれる別のシチュエーションを考えました。歌詞はいつもそうやって書いてますね。

「この指とまれ」は他の2曲とは違って、本来のyEANらしいパワーポップナンバーですね。

サナキ

この曲はスタジオで30分くらいでできました。普段あまり使わないコード進行だったので、じゃあ手癖が出る前にシンプルにいきましょうってなったら、メロディーもパッと出てきました。僕ら変に半音上がったりする曲が多いんですけど、この曲ではそういうこともせず、イントロもAメロも同じコード進行で、Bメロはその逆みたいな。ちょっとパンクっぽい考え方かもしれないですね。

今回のEPはyEANにとって、どんな作品になりましたか?

キャッチー師匠

前作の時よりも、みんなが自由になったせいか、それぞれにキャラ立ちしてきたと思います。

サナキ

今回の3曲が加わって、ライヴの幅が広がりましたね。定番のパターンがあったんですけど、それだけに止まらないライヴの観せ方のバリエーションが増えました。ライヴに来る前にEPを買っていただいて、この3曲を聴いてきてもらえると、より楽しめると思います!(笑)

『BoyBoyBoyBoyGirlGirl!!!!』

  • 『BoyBoyBoyBoyGirlGirl!!!!』
    ACW-008
    2016.07.13
    1000円

yEAN

ヤーン:2010年結成。千葉を拠点にライヴ活動を始め、15年4月に現在の6人編成となる。ポストロックやエレクトロ、パンクといったさまざまなジャンルを取り入れた音楽性が特徴の男女ツインヴォーカルロックバンド。16年7月、EP『BoyBoyBoyBoyGirlGirl!!!!』をリリース。

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