【Kiyoshi a.k.a freeman × 高木フ
トシ】“ギター1本で、お前は何をや
るんだ?”って自分に問い続けている

L→R 高木フトシ、Kiyoshi a.k.a freeman

MADBEAVERSのKiyoshiとvezの高木フトシがアコギの弾き語りで行なっているシリーズライヴ『二弦の共鳴』が、今年に入って2回目となるツアーを開催する。そこでふたりに『二弦の共鳴』について語ってもらったわけだが、問答形式で歌う理由や、ふたりが一緒にやる意義など、その言葉の節々からは音楽家としての真摯な姿勢が垣間見れた。
取材:石田博嗣

Kiyoshiさんとフトシくんが最初に共演したのが、2014年8月の代官山NOMADでのKiyoshiさんの対バン企画『Friday night freeman』で。その時は今みたいな1曲ずつ代わり番こで歌う問答形式ではないんですよね。

Kiyoshi

その時は普通の対バン形式というか、先にフトシくんがやって、そのあとに僕がやって、最後にふたりでやったんだけど、その時に僕がフトシくんのファンになってしまって(笑)、何か事あるごとに一緒にやりたいって思うようになったんですよ。で、東名阪を一緒に回ろうってことになったんです。僕、ずっとフトシくんの音源を聴いていたから、なんか歌詞にね、言葉のリンクを感じていたんですね。“同じようなことを考えてるのかな?”って思ったというか。それを試すひとつのアイデアとして、ふたり一緒にステージに出て、1曲ずつ問答形式でやるのはどうかなって。それもどの曲をやるかは、相手の曲を聴いてから決めるという。そういうのをやってみない?って相談したんですよ。それも急に(笑)。

フトシ

大阪と名古屋は普通に対バン形式だったんですけど、最後の東京でそれをやろうって。

Kiyoshi

それがすっごい楽しかったんです。“これは面白いことになるな”って思って…その時はまだ“二弦の共鳴”ってタイトルはなかったんですけどね。そのあと何回かやってからだっけ?

フトシ

何回もやってないですね。練習でやろうってなって、その時にライヴのタイトルとして“二弦の共鳴”って俺が考えて、それをKiyoshiさんがカッコ良いって言ってくれて、そのままユニット名みたいに自然となっていきましたね(笑)。

Kiyoshi

“二弦の共鳴”という言葉って、僕らがやっていることを端的に表していると思って、そのうち“どうも、二弦の共鳴です”って言うようになってた(笑)。

(笑)。その問答方式の楽しさってどういうものなのですか?

フトシ

問答方式だから相手の歌詞も聴くわけですよ。で、“あ、こういう歌なのか。だったら…”と思って、自分が持っている楽曲のファイルの中から“じゃあ、こういう歌詞なら、この曲で返そう”ってなるんですね。普通は前もってメニューを考えて、それを練習してライヴに挑むわけだけど、問答形式だとKiyoshiさんから何がくるか分からないから、それができないんです。別にKiyoshiさんから何がきても、前もって練習した曲だけをやってもいいと思うんですけど、それは悔しんですよ。

お互いのやる曲でライヴの流れが作られるわけですけど、演奏する曲数は決まっているわけじゃないですか。最後の落としどころとかは考えてあるのですか?

Kiyoshi

きれいに終われる時もあれば、微妙な時もあるんですよ(笑)。終わりを忘れる時もあるし(笑)。

フトシ

どっちかが“ここで終わろう”っていうふうに持っていかないといけないんですよ。

Kiyoshi

そこは目で合図する。“これ、終わんないよ”って(笑)。

フトシ

“あー、でも、この曲やりてぇ~”ってなりながらね(笑)。

Kiyoshi

終わりが見えないのだけが難点(笑)。起承転結がないんだよね。“起”がきたら、“承”にするか、“転”にするかは勝手に自分で決めれちゃうから。そこがすごくスリリングなところなんだけど。

でも、起承転結の流れにならなくても、ちゃんと一本のライヴとしてのドラマが作られていますよね。

Kiyoshi

そうなんですよ。で、それがお客さんにもじわ~と伝わるのがすごく面白くて。

ふたりを観ていて、相手から来たものに対して返しているっていうのが分かりますからね。予定調和ではないというか。

フトシ

もちろんふたりにしか分からないキーワードとかもあると思うんですけど、それはそれでこっちは楽しいんですよ。最近は多分、一手、二手先まで考えてると思うんです、お互いに。そういうのも面白い。

でも、それが裏切られたりするんでしょ?

フトシ

そうそう。“じゃあ、俺も裏切ります”って(笑)。

Kiyoshi

言葉に対して言葉で返す時もあれば、リズムで返す時もあるんで、ずっしりできたものに対して、あえてポップなもので返したりね(笑)。そういうのがすごく面白しい。

フトシ

まさにライヴですよね。ひとつの物語を作り上げていく感じが、また面白い。

Kiyoshi

ふたりの曲が混ざって、ひとつの生き物みたいになるというかね。さっきフトシくんも言ってたけど、これがバンドだと先に曲順を決めて、それをやっていくから、起承転結が分かっているんだけど、『二弦の共鳴』はそれがないから、毎回どうなるか分からない。終わったあとに“今日はここがすごかったな~”って思う…それって本当はお客さんに与えるものだと思うんだけど(笑)、自分たちが自分たちに与えている感覚が強いですね。あと、これはテクニカルな話になっちゃうけど、フトシくんのアコースティックのスタイルってノイズもすごくあるんですよ。アコースティックギターなんだけど、アンプから音を出して、歪ませたサウンドとコラージュしてたりするんで。それも最初は“すごいな~”って思ってたんですよ。でも、それに対抗するために、自分もエフェクターを並べてノイズを出してって、同じことをやっていたらダメだなって。結局、それだと同じ色を塗るようなことになるから、だったら僕はアコギ1本でやろうって。それのほうがバリエーションが付くし、お客さんも観ていて面白いだろうし。

フトシ

そういうふうにKiyoshiさんに言ってもらえて、俺自身も初めて気が付いたというか。“あぁ、確かに誰もいないかも”って。すごい嬉しかったんです。 “俺はこれでいいんだ”って思えたから、さらにこれを頑張ろうってなるし…完全なるオリジナルって大変なんですけど、それに挑めているのはとても幸せなことだなって。

この『二弦の共鳴』ですが、ゲストを迎えて3人でやるとかはないのですか?

Kiyoshi

それはないかな~。

フトシ

俺らの間に入ってこれる人が想像できないですね。それもまたびっくりなんですけど。

Kiyoshi

だから、とことん閉鎖的でいいと思ってる。ふたりでやれることしかやらないし、ふたりで十分なんですよね。むしろ、足りないものも楽しみたいなって。よくフトシくんと話すんだけど、“ギター1本で何ができるか?”ってところに趣があるから…

フトシ

侍チックなところがあるんですよ。

Kiyoshi

そうだね。そういう感覚も僕らは似ているんだと思う。書く言葉もそうだし、“個とは何だ?”みたいなことを考えてるから。自分の中に何があって、何を発信できるかって。“ギター1本で、お前は何をやるんだ?”って自分に問い続けているっていう部分が近いのかな。フトシくんとやるようになって…ってか、フトシくんのことを知ってから、自分のビジョンが見えたんですよ。ギタリストとして自分が今後どうありたいかってのが分かった。“ロックをやっていくんだろうな”って、それまでは漠然と思ってたけど、今はギタリストとしてどうありたいかっていうのが明確にあるんですよ。正直言ってアコースティックってバンドがやれない時にひとりでやれるものっていう、どこか逃げの発想もあるんですよ。バンドでできないから、アコースティックをやるっていうね。そういう逃げの姿勢でやるのは嫌で。もっと攻めていきたいっていうか、そこにプライオリティーがないとやる意味も意義もないんだよね。それに気付かせてくれたのが、フトシくんなんですよ。そこで自分の指針がはっきりした。『二弦の共鳴』はふたりでやることによって広がる夢があるし、今まで作ってきた楽曲が使えるし、全部を落とし込めるんですよ。

フトシ

ただただ誰も聴いたことのない音楽を作りたいんですよね。

Kiyoshi

あと、誰もやってないこと、誰にもできないことをやりたい。よく“みんなも『二弦の共鳴』をやればいいのに”って言うんだけど、それは裏を返せば、誰にもできないってことだからね(笑)。

フトシ

だからこそ、それぞれのスタイルでみんなも『二弦の共鳴』をやればいいんですよ。そうすれば世の中が自然といい音楽だけになるじゃないですか。って、俺らがやってることがいい音楽だって遠回しに言っちゃってますけど(笑)。でも、ピュアな音楽がこの世にあふれるためには、アーティストサイドがこういう気持ちでやってないとダメだと思うんです。だから、そういうことも示せるといいですね、この『二弦の共鳴』で。“ギター1本あれば、何でもできるんだよ”って。“とにかく、やればいいじゃん”って。それも、今、やったほうがいい。時間は限られてるんだから。

Kiyoshi a.k.a freeman

キヨシ:数々のバンド経験を経て、1992年以降、自身のバンドmedia youthの他、SUGIZO、hide with Spread Beaver等のツアーに参加。今井寿(BUCK-TICK)、岡崎達成とのバンド「Lucy」、HAKUEI(PENICILLIN)とのユニット「machine」など、さまざまなアーティストのプロジェクトに参加。 最近では「freeman」というアコースティックなライヴ活動など、さらに多岐なミュージシャンとセッションを重ねている。

MADBEAVERS

マッドビーバーズ:Kiyoshi(Vo&Gu/media youth、hide with Spread Beaver、machine他)、EBI(Ba&Vo/ユニコーン、電大)、JOE(Dr/44MAGNUM、ZIGGY、hide with Spread Beaver)という猛者による3ピースバンド。1998年、Kiyoshiのソロ活動として“KIYOSHI'S MAD BEAVERS”名義で始動し、その後活動は止まるものの、05年に復活。08年4月にEBIが加入し、現在の布陣となる。EBIの加入により磨きがかかったソリッドなサウンド、そしてメロディアスな楽曲、さらに百戦錬磨の強者たちが繰り広げる圧巻のライヴパフォーマンス…まさに他に類を見ない、最強の3ピースバンドである。

高木フトシ

タカギフトシ:元HATE HONEY/BAD SiX BABiES。2005年よりソロ名義での活動を開始。アコースティックユニット「AKUH」、2007年結成のバンド 「vez」、アコースティックデュオ 「gonvut」等でも活動中。