【ELIZABETH.EIGHT】天国があったら
いいなぁと思って曲を書きました
L→R 菅原俊司(Ba)、いたる(Key)、ミワユータ(Vo)、こふじ(Gu)、和泉大佐(Dr)
女王・ミワユータ(Vo)率いるELIZABETH.EIGHTが6thアルバム『ASK YOU!!』を完成! ギターの深見之春が急性骨髄性白血病、ミワユータが脳炎になり、余命宣告を受けるなど壮絶なバンドヒストリーの中で、妖艶なポップ感が冴え渡る快作を作り上げた。
取材:荒金良介
バンドのホームページに『BETH.8’S AMAZING STORYS』というこれまでの歩みが掲載されていますけど、本当にアメイジングすぎてびっくりしました! 今作が出たことが奇跡に近いというか…奇跡ですよね。
ミワユータ
そうですよね。みんな、“よく生きてたなぁ”と思います。
これまでの活動を振り返っていかがですか?
ミワユータ
初期は私と和泉大佐がメンバーで、うちのバンドが変わっていると思うのは、他のメンバーがみんなもともと今の楽器をやっていたわけじゃないんですよ。私の性格に付いていけるメンバーじゃないとダメだということで、楽器を弾けなくてもいいから性格で選ぼうと。ベースの俊司はただの大学生だったし、こふじは別のバンドのドラマーなのにずっとくっ付いてくるから“ギター弾きなさいよ”って。で、今は急性骨髄性白血病で療養中のもうひとりのギター深見もバンドに入りたいと。いたるはこふじと同じで、別のバンドから“ミワユータの作品になりたい”と言って寄ってきたんですよ。こふじと同じく、ファンでもあったんで。
作品になりたい、とは?
ミワユータ
この子たちは私の犬になりたいと。
こふじ
加入する時に最初は犬のポジションで、この首輪も買ってもらいました(※今も首に装着)。いたるも加入する時に“僕もこふじくんみたいに育てられたい”って。
いたる
ELIZABETH.EIGHTの歌詞や曲がもともと好きだったし、メンバーとのつながりに憧れもあったんです。
ミワユータ
うちはメンバー全員がクレイジーで、羅針盤が狂ってるんです(笑)。この3人(ミワユータ、こふじ、いたる)は同居してますからね。面白可笑しく暮らしています。
ここまでバンドが続いた理由は人間的な結束力が大きいと。
ミワユータ
“死亡NG”というものがあって、死ぬのだけはダメにしているんですよ。
リアルすぎて、どうリアクションしていいか分かりません(苦笑)。ミワユータさんも脳炎になったそうですが。
ミワユータ
脳炎、髄膜炎になっちゃって。熱が40度以上出て、“これは死んじゃいますね”と言われました。余命宣告って、意外とサラッと言われちゃうんですよ。で、ステロイドを打ったら、どんどん話せなくなって、身体も動かなくなって、幻覚を見るようになって。それでベッドに拘束具でつながれたりもしていたんですけど…でも、急に病状が回復したんです。
なるほど。もともとこのバンドの結成時にやりたかった音楽は何だったのですか?
ミワユータ
私は音楽を全然聴かないんですよね。でも、歌謡曲は好きで山口百恵さん、中島みゆきさんとかは子供の頃に聴いていたし、THE YELLOW MONKEYも大好きなんです。もともと前身バンドでは剃刀で腕を切って、血をバーッと出すようなアングラなバンドをやっていたんですけど、ちょっと病んでるみたいな女の子が観に来ていたので、“こういう子たちの力にならなきゃダメだな”って。それでバンド名も歌の内容も変えて、ショーアップされたライヴをやろうと。それが今のELIZABETH.EIGHTですね。
そこで音楽性もガラッと変わったと?
ミワユータ
“もっと頑張ろうぜ!”みたいなメッセージを曲に入れるようにしました。最後は絶対に立ち上がって、不幸なまま終わらせないようにしようと。今は音楽的にポップになったと思います。
ミワユータさんが思うポップとは?
ミワユータ
分かりやすいことがポップだと思うけど…6歳の子でも歌えるメロディーとかじゃないですかね? 実際、うちの最年少のファンは5~6歳ですからね。その子が理解できるなら、大丈夫だなと思っています。
こふじ
昔はおどろおどろしい感じのアレンジだったけど、サウンドはキャッチーになって、リズムや曲の構成もシンプルになりましたね。
いたる
ミワユータはガレージロックも好きみたいだけど、メロディーだけ聴くと、パンクだけじゃなくてソウルっぽかったりもするし、この人は音楽を聴かないのは本当なのかな?って思うくらいで。
では、今作を制作する上で軸になった曲はありますか?
ミワユータ
「ルッキン・フォー・アダム」ですかね。この曲のMVも幻覚で見た世界みたいな雰囲気ですからね。今回は“天国”“神様”という言葉も歌詞に入っているけど、死にかけると、そういうワードが出やすくなるんですよね。闘病中、幻覚の中で死神と出会って、“あなたは死にます”と言われて。死神が手紙を読んでる時に主治医の先生が入って来て、部屋から死神を引っ張り出してくれたんですよ。だから、天国があったらいいなぁと思って曲を書きました。
話はすっごく面白いんですが、文字にしてどれだけ読者に伝わるのか、心配です。
全員
はははははは。
「ルッキン・フォー・アダム」は個人的に好きで、一番ポップな曲ですよね。
こふじ
間口の広いポップな曲ができたから、それを軸にマイナー寄りの曲を作ろうとか、ライヴでもっと手を上げて盛り上がれる曲を作ろうという感じで進めました。「シャーベットの溶ける速度」はレコーディングで化けたんですよ。すごくカッコ良い曲になっちゃって。「ルッキン・フォー・アダム」を越えたんじゃない?と思うくらいで。
「シャーベットの溶ける速度」はカラフルな曲調ですね。タンバリンやティンパニーの音も入ってますよね?
こふじ
そうですね。これはいたるの初作品で、ゴージャスな仕上がりになりましたね。
この曲に限らず、キーボードはいろいろな音色を使い分けているのが特徴的です。
いたる
ストリングスやサンプリングの音を使っているんですよ。あと、ピアノやオルガンの裏で小さくシンセを入れたり、隙間を埋めるアレンジを心掛けました。モータウンが好きで、スティーヴィー・ワンダーも好きなので、音色とアレンジでキラキラ感を出そうと思いました。
こふじ
キーボードがいろんな音を出せるので、僕は攻撃的なギターを意識しました。歪みの音の基本はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのアベフトシさんの影響が大きいかもしれない。ギターは自分のテンションが上がるかどうかが基準です。
今作を通して伝えたいことは?
ミワユータ
どん底にいたとしても、生きていればどんでん返しがくる可能性がある。そういう曲を詰め込んだので、聴いてみてほしいです。
ELIZABETH.EIGHTが言うと、ものすごく説得力があります。僕も明日から頑張ります!
ミワユータ
はははは、そうですね。生きていれば何とかなりますから。死亡NGでお願いします!(笑)
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