【イトヲカシ】不正解こそ正解への近
道
“老若男女に響く音楽”をコンセプトに、2016年9月にデビューしたイトヲカシの2ndシングルは両A面。受験生への応援ソング「さいごまで」に、アニメタイアップの「カナデアイ」と、今回も“ド王道”を貫く彼らに迷いはない。
取材:清水素子
メジャーデビューして、この取材の時点で3カ月が経ちましたが、デビュー前に比べて何か変化ってありましたか?
伊東
あると言えばあるかなぁ。良い曲、良いライヴを作るということは今までの延長線上だけど、イトヲカシに関わる人、僕らの音楽を一緒に広めてくださる方が増えたことに対しては、“あぁ、デビューしたんだなぁ”と実感してますね。
宮田
すごく愛を持って接してくださる方が多いので、もっと自分たちもステップアップしていかないといけないなと。
デビューというひとつのゴールを経ても、まだまだ延長線上にいるというのは「さいごまで」のメッセージにも通じません?
伊東
そうですね。『キットカット』受験生応援キャンペーンソングのお話をいただいて書き下ろした曲なんですが、実は僕、塾講師の経験があるんですよ。当時よく“勉強して将来何の役に立つの?”って生徒にも言われていたし、“どうせ頑張っても叶わない”って思うと人間って頑張れないんですよね。でも、ぶっちゃけ叶わなくてもいいんですよ。大切なのは一生懸命頑張ることで、頑張らずに良い結果を出した人間より、頑張ってダメだった奴のほうが人生成功すると僕は本気で思ってるので。不正解を重ねていくうちに実は正解への地図を握ってるんだよっていうメッセージを、歌詞にも書いているんです。ほんとに悔しい想いって宝なんですよ。
宮田
僕らにしても、お互いいろんな活動をして失敗体験も重ねたからこそ、今のイトヲカシの核を研ぎ澄ませていけたわけですからね。レコーディングの時も路上ライヴを回る中で出会った受験生の方々の顔を思い浮かべつつ、“頑張れ!”って念じながら弾いたので、その想いが音に乗って伝わったら嬉しいです。ただ、失敗を恐れず頑張ることが大事っていうのは受験に限った話じゃないんですよね。そもそも人生はゴールテープの連続で、終わりは始まりですから。
伊東
そこで肝になっているのが《走り抜けてやれ》っていうワードで、ゴールテープは走り抜けてほしいんです! 受験の先にも頑張らなきゃいけないことって続くから、結局は頑張ってる人全員を応援したいんですよね。例え周りが誰も応援してくれない孤独な状況であっても、僕らだけは本当に応援したい!という気持ちで歌っているから、この曲だけは味方なんだって思ってもらえたら最高に嬉しいです。この曲がみんなに“さいごまで”届いたらいいなと。
このタイトルが繰り返されるサビ頭は、言葉といい、メロディーといい、パンチ力抜群で、聴いて一発で頭に残りました。
伊東
今回はイトヲカシなりのS級のパワーワードを作りたかったんですよ。僕の中ではサビってすごく大事で、その中でももっとも大事なサビ頭に、それを放り込みたかったんです。
宮田
自分たちの中に根付いている“王道”をてらいもなく出すのが、イトヲカシのテーマなので。まぁ、ギミックに頼らず奇をてらわないって、逆に勇気がいることですけど…。
伊東
同じ学校の空気を吸って、音楽性の趣味嗜好も同じ方向を向いてるふたりだからこそ、“これで大丈夫”って確かめ合えるんです。曲ができると毎回“また100万枚売れちゃうよ!”って、ふたりでマジで言い合ってますからね(笑)。でも、当初「カナデアイ」は、その第一声が珍しく出てこなかったんですよ。
宮田
前回エンディングを担当したアニメ『双星の陰陽師』の、今度はオープニングのオファーをいただいて書き下ろしたんですが、“オープニング”という柱を意識しすぎて、アニメの世界観とイトヲカシの目指す音楽性という柱を並び立たせることができなかったんです。“老若男女に聴いてほしい”という僕らのコンセプトに反して刺激が強すぎたというか。
伊東
あくまでもイトヲカシは音楽ユニットなのに、バンド色が非常に強い楽曲になってたんですよね。それで1回全部捨ててイチから作り直したんですよ。オープニングらしい煌びやかさを出しつつ、イトヲカシが目指すポップスとして成り立つラインをふたりで引けたので、自分たちを見直す良いきっかけになりました。
宮田
そう。「さいごまで」で歌ってる通り、失敗は成功のもと!
伊東
歌詞もアニメの設定に沿って、重なっては離れ、傷付け合っては乗り越えていく男女の関係性を軸にして。そういった男女の愛って普遍的なものであり、それこそ王道のド真ん中にあるものだから、イトヲカシらしさも活かしつつ全部をひとつの太い柱にまとめることができたんです。
ロマンチックな要素が加わることで、オープニングらしい華やかさも醸し出せていますよね。ただ、言われてみればイトヲカシって王道を目指すユニットのわりに、王道の代表とも言えるラブソングの割合が少ないような…。
伊東
避けてきたわけではまったくないんですけど、徒然なるままに心に移りゆくよしなしごとを書いていったら、どうも出てこないんですよね。我々の人生や人間形成の9割9分を音楽が占めているんで。
宮田
つまり、ちょっと残念な人生を送ってるってことですね(笑)。まぁ、我々もイトヲカシとしてスタートするまでに、いろんなすれ違いがあったので、この歌詞を自分たちに重ねる部分もあるんですよ。いろんな愛がこの世には存在するので、そんなふうに置き換えて聴いていただくのもいいかなと。
「カナデアイ」は“奏で愛”や“奏で合い”とも読めますからね。4月末からは待望のライヴハウスツアーも始まりますが、ライヴハウスって路上と何が違います?
伊東
路上はお客さんの表情がよく見えて、ダイレクトに反応が伝わってくるのが好きだなと思いつつ、やっぱりライヴハウスは良い音で届けられるっていうのが、ミュージシャンとしては誇らしいですね。どちらにも違う魅力があって、どちらもイトヲカシにとっては軸なんですよ。
宮田
ライヴハウスのために路上があるわけでもないし、上下関係もないので、どちらも観てくれたら嬉しいです。僕らは音楽ユニットなので、どちらも柔軟に魅せられますから。
アーティスト
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