【BRAHMAN】1曲分のアイデアが5秒の
フレーズになったとしても本望
3rdアルバム『THE MIDDLE WAY』から約4年。今作『ANTINOMY』に込められた思いとBRAHMANの音楽観には我々の考えをはるかに超えた思慮深いものがあった。TOSHI-LOW(Vo)が思うBRAHMANの姿とは?
取材:高木智史
前作の『THE MIDDLE WAY』から今作『ANTINOMY』まで約4年経ちましたが、その間の活動が今作にはどう影響していますか?
この4年の中で単純に音を奏でてるだけでは、自分たちが成長しないなっていうことは思っていました。大人になって作業を要領よくまとめようとしていた少し前の自分があったんですけど、そうではなくて、苦汁にまみれても自分たちがそこに入って進んで行くことで…例えば、傷ついて血が流れることで生きてることを確認するみたいな、そういうことをやっていかなければ進めないなと思っていて。どうしても大人になっていくと無駄な労力を避けたいと思ったりするけど、そうじゃない、その中にいろんなものが詰まっているわけであって…。賢く進むことではなくて、一個一個傷付いてもそこを進まないとダメだなっていうことをもう一回ちゃんと見直す何年間かではあったかなという気はします。
だからか、今作からはすごくもがいている印象を受けました。歌で叫びながらもその裏のメロディーでは逆に泣いているような。
20代の頃は無理して自分を押し殺してしまう部分があって、その頃はそうするしかできなかったんですけど、今それをやってしまったら嘘になってしまうし、自分ではないものになってしまう。やっぱり自分の中にあるものは出さないといけない。それが温かく感じたり、冷酷に感じたり…自分の中では白か黒かじゃなくて、もっと複雑に絡み合ってるものがあるんです。そういうものを今作には隠さないで入れたつもりではありますね。ハードな曲を作るのも、死にたくなるような詞を書くのも、カバーをするのも全部フルスウィングしてますよ。
そのカバー曲「You don’t live here anymore」ですが、なぜこの曲を入れようと?
意味はないです(笑)。超有名な曲をカバーして売れたいっていうバカバンドとは違うんで(笑)。自分はこういう初期のパンクから影響を受けてパンクに入ったんで、ルーツ的なものでもあるし。だから、すごく自然なセレクトなんです。カバーに対する考え方としてみんなで曲を共有して楽しむっていうのもあるんでしょうけど、個人的にはもっと音楽に対して深く入っていくためのカバーの方が面白いと思っているんです。自分もそうやって、クラッシュとかの原曲を聴いてみたいと思ったりして探っていったから。そういう方に楽しみを感じています。
曲によっては、例えば「Handan’s pillow」はリアレンジがされていますが、シングルの時よりもサウンドがタイトでより歌の部分が強調されているように感じました。それは意識的なものなのですか?
シングルとして出した時はそれがベストだと思っていたんですけど、なんかしっくりこない部分もあって…。それは何かなって。アイディアを新しい曲に持っていくことも可能だったんですけど、こうやってもう一回録れるチャンスがあったんで。自分たちはそれこそ10何年も前の曲を手直ししながら今でも歌っているんで簡単に捨てられない。今ある最良の姿でありたいなと思っているから。自分たちにとっては、それだけの価値のあるものにしてるかしてないかどうかが問題なわけですよ。それをしていればみんなが飽きていても、何百回も同じ歌を歌ってもいいと思っているし。
BRAHMANの楽曲は一聴してグッとくるものもあるし、それこそ1stアルバムの『A MAN OF THE WORLD』の楽曲で今改めてグッとくるものもあるし、生き物のような印象を受けました。
それはバンドが持ってる曲のイメージと近いかもしれないですね。楽曲に対して自分自身の子供のような感覚なんです。一個一個違うから、中には始めからすごく賢い子もいるし、全然ダメだと思っていても3年後とかに遊びでやってみたらすごく良かったり。あとは自分たちがもっとこういうふうに手を掛けてあげれば、こうなったのにということに何年後かに気付いたり。自分たちとしては、まさに生き物のような感じでひとつひとつの曲を見ているんですよ。
昔の楽曲に対してもそのような試行錯誤があるということは、アルバムという、ひとつの作品に仕上げることは相当大変ですよね。
自分たちの満足のいくものに持ってくるまでが大変ですね。1曲分のアイデアとして作ってたものが落とし込んでいくうちに5秒のフレーズになってしまったりとか。でも結果、1フレーズだけになったとしてもいいんです。たった5秒になったとしても本望なんです。だから1曲に4曲分くらいの労力が入ってる感じですかね。中くらいのものをたくさん作ることができないんです。例えるなら、丹念に叩き上げてきた刀が折れてしまうか、鋼のような強い刀ができるかどっちかでいいんです。
アーティスト
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