ASIAN KUNG-FU GENERATION『ループ&
ループ』 ボーカル後藤の言葉はなぜ
心に刺さるのか?
2004年に発売された「ループ&ループ」は、スズキのCMに採用されている。今回はその「ループ&ループ」を通して、なぜ『ASIAN KUNG-FU GENERATION』の歌詞が他のバンドより心に刺さるのかを考える。
「光る明日を」数々の楽曲で使用されていそうなありきたりな言葉であるが、彼らが使うとリスナーに違った印象をもたらす。その理由の一つは、そこにたどり着くまでに紡がれた言葉が秀逸だからだ。
「右手に白い紙」この白い紙は自らの素直な心を象徴しているものとして書かれている。時に人は、理屈では説明できない「理由なき僕の絵(=素直な心)」を投げ出してしまう。
その一方で「左手汚して」他人の絵を描いているのだ。ここでは「自分の素直な心を投げ捨て、人に合わせ誰かに迎合しようとしてしまう」そんな人間の心理を描いている。
「白い紙」と「汚して」という言葉を使い、描写をより浮き彫りに表現している。ここの歌詞で注目すべき点は、どちらも締めの歌詞が「その光る明日を」という言葉になっていることだ。
作詞を担当したボーカルの後藤正文は肯定や否定をしているわけではない。「その光る明日を」どちらの道にも光が差すと解釈しているのだ。
なぜ、どちらも光を浴びれるのか。続きの歌詞を見ると、その理由は明白になっていく。
「所詮 突き刺して彷徨って塗りつぶす 君の今日も」一種のあきらめにも似た言葉が紡がれている。素直な自分と人に合わせている自分の狭間を彷徨ってしまう。
一つの迷いから抜けたと思うと、また新たな迷いがやってくる。そうやって、終わりと始まりを繰り返していくのだ。しかし、それは前に進んでいない訳ではない。
心が彷徨う中でも、“弱い魔法”という経験を積み上げているのだ。
心が揺れて迷ってしまうことを認める。
すると、彷徨いながらも僕の今日を、今という瞬間を、垂れ流したままで生きられるのだ。
迷いがあると自分で認めることによって、初めて目標などが動きだす。それを彼は「走り出したエンドロール つまらないイメージを壊せそうさ」と表現している。
「人に合わせる」「素直である」どちらが良い悪いという問題ではない。その両方を塗りつぶすのではなく、垂れ流すのが大切なのだ。
どちらであろうと光は差し込む。前出の「その光る明日を」という言葉はその想いを元に書かれたはずだ。
心の葛藤や迷いはループして当たり前のもの。
何よりも彼自身が葛藤のループの中で生きてきたのだろう。そうして彼は『彷徨う心を垂れ流す強さ」を知った。そこから溢れ出てきた言葉を拾い集め歌詞を作る。だからこそ、彼の言葉には意志が感じられリスナーに刺さるのだ。
TEXT:笹谷創(http://sasaworks1990.hatenablog.com/)
アーティスト
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