アメリカの日常を骨太に表現するナンシー・グリフィスのグラミー賞受賞作『遠い声』
ナンシー・グリフィスは日本ではあまり知られていないが、一度でも彼女の歌を聴いたら確実に惹かれてしまう、そんな魅力を持ったシンガーソングライターだ。これまでに20枚ほどのアルバムをリリースしており(ベスト盤は除く)、グラミー賞にも数回にわたってノミネートされ受賞もしている実力派のアーティストである。ヒット曲を連発するようなタイプではないが、滋味あふれる良い歌を提供し続ける稀有な存在であり、アメリカではミュージシャンズミュージシャンとして、多くのアーティストからリスペクトされている。今回取り上げる『遠い声(原題:Other Voices, Other Rooms)』は10枚目となるアルバムで、シンガーソングライターとしては珍しく全曲カバー作品となっている。なお、本作は94年のグラミー賞で最優秀コンテンポラリーフォークアルバム賞を受賞している。