ワンオクTomoya、POLYSICSヤノ、MERRYネロ……実は凄腕なドラマーたち6選
しかし、我が国のロックシーンにおいては、壮絶なドラミングで見る者を熱狂させたX JAPANのYOSHIKIや、Zi:KILL、Die In Cries、L'Arc-en-Cielと一時代を築いたバンドを渡り歩いたyukihiro、そしてシンプルながらも野性的なリズム、キレのあるテクニックでリスナーを魅了したBLANKEY JET CITYの中村達也など、多様なスタイルを提示してきたドラマーも多い。
構造上、単純な打楽器である。しかし単純であるからこそ、自由度も高く、その人なりが良く現れるとも言えよう。バンドにおいてもテンポとテンションを左右する重要な役目でもある。
今回はそんなバンドの要でもあるドラマーを様々なスタイル、ジャンルの中から「隠れた名手」ともいうべきドラマーを紹介していきたい。
●スタイリッシュなドラマー3選
・アグレッシヴなパワーヒッター Tomoya(ONE OK ROCK)
その温和なルックスとは裏腹に大きく振りかぶったショットは一音入魂、まるでパワーヒッターのようであり、外国人ドラマーを彷彿とさせるアグレッシブなドラミング。
力任せに叩けば大きい音が出るものでも無く、そもそも大きい音と力強い音は全く別。そんな“鳴らし方”をちゃんと知っていると思わせる説得力。学生時代は吹奏楽部でパーカッションを担当、音楽専門学校でドラムを専攻。なるほど、基礎が出来ている。型にハマらないロックの世界では人に教わることを良しとされないことだってある。だが、その基礎があった上で自分なりの持ち味を出すことが出来るのなら、まさに鬼に金棒、いや、金棒ではなく鉢、スティックか。
今最も勢いのあるバンドのひとつとして、「日本にもこんなドラム叩くやつがいるんだぞ」と胸を張って言える、そんな誇らしさを感じるドラマーである。
・クリックアンドロイド ヤノ(POLYSICS)
すらっと伸びた背筋、腋を締め、的確に繰り出されるリズムは、そのバイザー(サングラス)に隠れた表情と共に、人間味すら忘れてしまうほどの正確さ。シーケンスフレーズと一体化するドラミングは、“忍び”を思わせるほどの軽やかさで、時にどれが打ち込み音であるか解らなくなることだってあるほどだ。
ヴォーカル、ハヤシのハイテンションなステージングも魅力のバンドであるが、いつだって冷静さを失わずにリズムキープする姿は「常にメンバーの背中を見ている」ドラマーというバンドの監督的ポジションを1番年下ながら解っているようで頼もしく見える。
そんな冷静沈着、クールなヤノもバンドが3人体制となってからはギターを片手に、フロントに躍り出るという新たなキャラ開拓もしているようだ。そんな“芸風”の拡がりを含め、今後も目が離せないドラマーなのである。
・ヴィジュアル系の暴走機関車 ネロ(MERRY)
畳みかけ、捲し立てる、一度観たら忘れられなくなるようなタム回し。熱が入り過ぎて、時として我を忘れるかのように狂い叩く。ただそれはアンサンブルの乱れというわけではなく、バンドとしての狂気を呼び起こすスイッチなのかもしれない。細かい技術云々がどうでも良くなるくらいのねじ伏せる力があるのだ。
上手いと言われるドラマーは数多く居るだろう。しかし、プレイを見ただけで、音を聴いただけで「ネロのドラム」と解ってしまうようなドラマーはそうそうお目にかかれるものではない。誰にも真似することのできない「オンリー・ワン」。それはロックドラマーとして、プレイヤーとしての理想の完成形の一つだ。
●二面性を持つドラマー3選
後半は少し視点を変え、二面性、「二つの顔を持つドラマー」に注目していきたい。
・プレイヤーとドラムテック 有松益男(BACK DROP BOMB)
北九州男児のドラムともいうべき、重厚かつ、ず太い音ながらタイトなドラム。オフビートに乗せ、独特のタメを利かせたスネア捌きはドラマーなら誰もが真似したくなるプレイであり、憧れる音。
そんなサウンド作りの上手さを活かし、ドラムテックとしても名を馳せている。
生楽器であるドラムはそのセッティングもシビアだ。そんなレコーディング現場におけるセッティング、メンテナンスに至るまで細かくチューニングする仕事。それはVAMPSからUVERWorldまで多岐に渡り、ドラマー界の頼れる兄貴である。
・オリジナルバンドとサポートワークス 石井悠也(カムロバウンス)
いきものがかり、ポルノグラフィティ、世良公則、Buono!……自身のバンド、カムロバウンスで活動する傍ら、サポートミュージシャンとして今注目を浴びているドラマーである。
力まずスナップを利かせた切れ味の鋭いショットから放たれる正確無比なリズム、バラード調の楽曲では完全にドラムが歌っている。
様々なジャンルに対応する技術はもちろん、その中でいかに自分らしさを盛り込めるかがサポートワークでは重要である。フィルやブレイク、その瞬間にとんでもない“はっちゃけ”をしてくるのも持ち味だろう。正確さと自分らしさ、この絶妙なバランス感覚、ハイセンス極まれりといった感じだ。
・ロックンロールとスラッシュメタル 桐田勝治(ザ・クロマヨンズ)
シンプルでストレートなロックンロール、それを牽引するストレートなドラミング。「安定感のある」という言葉では収まり切らない腰の座ったリズムは重戦車のようだ。時折、爆発的な加速を見せ、手数が多くなる。しかし、それはあまりに見事すぎて他を邪魔立てすることはない。
この桐田、もう一つの顔がある。ジャパニーズ・スラッシュメタルの雄、Gargoyleのドラマー、KATSUJIとして。こちらが本来の姿である。弱冠17歳で加入。四半世紀以上に渡る活動の中で「ライブバンドの帝王」とも呼ばれるカリスマバンドである。
疾走感なんていうレベルではない早さのブラストビート、これでもかと言わんばかりのツーバスとフィルの応酬は、力強さと細やかさを兼ね備えた圧巻のドラミング。リズムがズレることはない、まさに名手という言葉しか出てこない。
日本語ロックレジェンドと言うべきロックンロールバンドと、方や「帝王」とも呼ばれるスラッシュメタルバンド。そんなジャンルも見た目も異なるモンスターバンドを行き来する、まさに二面性を持つドラマー中のドラマーである。
●バンドの熱量をもっとも伝えるのは、ドラマーかもしれない
「じゃんけんに負けたヤツがドラムになる」
バンドを始めるときによく言われた言葉。かつてはそんな時代もあった。
住宅事情含め、手軽に始められるものでもない。ギターやベースと比べれば、その「楽器を演奏している」感覚は薄いのかもしれない。ステージ上を駆け巡ることも出来なければ、客席からは一番遠い場所で座っている。そんな、何となく地味なイメージを持たれるのかもしれない。
しかし、その両手両足を使い、全身を駆使して音楽を表現するそのドラマーの姿は、実にドラマチックであり、アスリートのようでもある。実はバンドのカッコよさ、熱量を一番伝えることの出来るポジションではないのだろうか。(冬将軍)