13本目・『プラトーン』:杉作J太郎の
DVDレンタル屋の棚に残したい100本の
映画…連載38
プラトーン〈特別編〉(20世紀スタジオ/販売:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン)※2014年DVD・Blu-ray盤の発売元。2021年の通常版Blu-ray発売元は異なる。
DVDレンタル屋の棚に残したい100本の映画
戦争の悲惨、無情、残酷、理不尽、恐怖を描いた映画である。
青春映画のように見える瞬間もあるがチャーリー・シーンのまっすぐな眼差しが影響している。もちろん観客を本編に誘う装置でもある。
この映画にはおびただしい数の人間が出てくる。が、超重要人物は三人だ。
役名ではなく俳優名で記すことを許してほしい。
チャーリー・シーン。新人の兵士だ。毎日の暮らしに退屈と無価値を感じ、なにか燃えるものを求めて、新しい自分と出会いたくて戦場に飛び込んだ。
ウィレム・デフォー。いい先輩だ。基本、リラックスしている。不良性感度抜群。欲がないかんじ。
トム・べレンジャー。悪い先輩。正しいことをしているつもりだから始末に負えない。出世欲、名誉欲が強そう。
いろんなことが描かれるが人間の構図は簡単だ。
トム・べレンジャーのあまりにも非人情な行為にウィレム・デフォーが怒りが爆発する。いつもは野外フェスにひとりで来て(友達や彼女同伴ではなく、という意味)ぶらぶら、へらへらしているやつみたいな風情があるが芯はある。言いたいときには言うぜ!
だが、それで「はい、そうですか」となるトム・べレンジャーではない。ふざけるなよ、てめえ、いつかぶっ殺してやる、みたいな表情になる。もはや臨戦態勢だ。おとなどうしの激しいぶつかりあいを目の前にして、子供みたいなチャーリー・シーンになにかできることはあるのだろうか……。
戦争ほど無意味なものはない。
この映画は力強く。明解に説いている。
ベトナムの民間人、べトコン(民兵)のひとりひとりに対してなんの怒りも恨みも攻撃理由もない。そもそも知らない人たちである。
憎むべき悪辣な人間は仲間の中にいる。列を組んでる仲間の中にいやなやつがいる。自分が生き延びるために平気で仲間を売るやつだ。私たちの現実社会にもいる。どこの職場にもたいていいる。
敵は外にいない。
結局、チャーリー・シーン、トム・べレンジャーは命のやり取りをしなければならなくなる。哀れなのはウィレム・デフォーだ。戦場が恐ろしいのは背中から弾が飛んでくることである。
私は20代、旅行かばんにプラトーンのシールを貼っていた。
どこかでもらったのか。
なにかの付録だったのか。
両膝を地面につけた人間が大きく両手を上に伸ばしている姿。それを型取りしてシールになっていた。縦横15センチぐらいあっただろうか。
ウィレム・デフォーである。
気に入っていたが、しばらく見てない。剥がした覚えはないのでかばんごとどこかにあるかもしれないし、引っ越しのときに捨てたのかもしれない。
ウィレム・デフォーはまだ元気である。
顔はしわしわになったがチャーミングな笑顔は変わらない。いや、パワーアップしている!
トム・べレンジャーも元気である。秋元才加さんと共演していた。雰囲気まだまだある。
チャーリー・シーンは金持ちキャラクターで大人気だったが2016年、破産した。それも予定に入っていたかもしれない。
出演/ウィレム・デフォー、トム・ベレンジャー、チャーリー・シーン、フォレスト・ウィテカー、ケヴィン・ディロン、ジョニー・デップ
監督、脚本/オリバー・ストーン
撮影/ロバート・リチャードソン
音楽/ジョルジュ・ドルリュー
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・8月16日発売「文藝別冊 高倉健」(河出書房新社)に杉作J太郎書き下ろしの詩が掲載されます。
【著者最新刊のお知らせ】
よるひるプロから「杉作J太郎詩集」が発売されました。よるのひるね店頭、中野・タコシェ、新宿紀伊國屋書店本店、神田三省堂、池袋ジュンク堂、池袋三省堂、松山市モア・ミュージックなどでも店頭販売予定です(在庫切れの場合はご容赦ください)。また、一般書店からも書名と版元を伝えて「地方・小出版流通センター経由で」と言えば取り寄せが可能です。なお通販は「よるのひるね」のBASE通販サイトで。なお、楽天ブックスやamazonにも取扱あり。
https://yorunohirune.base.shop/
https://books.rakuten.co.jp/rb/17001939/
週に4回!! 愛媛・南海放送ラジオで「杉作J太郎のファニーナイト」放送中。火・水・木/19:00~21:30, 土/21:00~23:00。アプリ「radiko」のプレミアム会員なら日本全国でOK、タイムシフト(あとから聴くこと)もできちゃう! ラジオの未来のためにもみんな聴いてね!
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2022年8月分は当記事ポスト時現在は未発表です。予定は発表され次第更新されますので、以下のURLをチェックしてみてください。
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すぎさく・じぇいたろう
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める(男の墓場改め)狼の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
https://books.rakuten.co.jp/rb/15332613/
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