【鈴木康博 ライヴレポート】
『鈴木康博 LIVE2022
~おかげさまで50年+2~』
2022年1月15日
at かつしかシンフォニーヒルズ
モーツァルトホール
2022年1月15日 at かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
同公演はもともと50周年を迎える2020年に行なわれる予定だったが、コロナ禍の影響により延期となり、開催が危ぶまれていた。それだけに今回の公演の実現を喜んだリスナーは多かったに違いない。チケットはソールドアウトとなり、本公演は華やいだ空気に包まれていた。
ステージ前に降ろされた幕に、デビュー当時から現在に至るさまざまな鈴木の写真が写し出されるオープニングに続いて、アコースティックギターの煌びやかな音が響き、ライヴはオフコースのデビュー曲「群衆の中で」から始まった。ステージにスッと立ち、ギターを奏でながらエモーショナルな歌声を聴かせる鈴木は圧倒的な存在感を放つ。歌声とギター1本だけで深みのある世界を作り上げるのもさすがのひと言で、ライヴが始まると同時に場内は彼の色へと染まった。
“ようこそ、おいでくださいました。やはり50年という年は長いですし、“よくここまでやって来れたな”というのもあって、ずっと聴き続けてきてくださった方々と一緒に50年という時を分かち合ってもいいんじゃないかと、今日のライヴを開催したわけです。ゆっくり50年を振り返ってみたいと思いますので、よろしくお願いします”
そう語ると、ピアニストの細井 豊が加わった「汐風のなかで」やバンド形態による「夜はふたりで」「愛をよろしく」などを歌唱。弾き語りに加えて、AORが香る「夜はふたりで」やウォーム&メロディアスな「愛をよろしく」と幅広さを見せつつ、どの曲も良質なのは実に見事。リリース当時の時代感がありながらも古びた印象を与えないこともポイントで、鈴木が創作する楽曲が時代を超える魅力を備えていることをあらためて感じることができた。
その後はゲストコーナーに入り、杉田二郎とともに絶妙のヴォーカルハーモニーを聴かせた「戦争を知らない子供たち」、オフコースの盟友・松尾一彦(Gu)を迎えてパワフルなサウンドを鳴り響かせた「一億の夜を超えて」、透明感を湛えた白鳥英美子(ex.トワエモア)のヴォーカルをフィーチュアした「さよならが始まり」を続けて披露。15分の休憩を挟んだあともゲストコーナーは続き、岡崎倫典(Gu)を迎えてアコースティックギターの華やかなアンサンブルを聴かせた「時代を超えて」、ピアニストの榊原 大とともに煌びやかな世界を構築した「夕山風」、作詞を手がけた林家木久蔵が登場した「現実ってヤツは」が届けられる。邦楽トップクラスのアーティストの競演が生む音楽は“至宝”という言葉が似つかわしい素晴らしさだし、ゲストそれぞれとの交流関係や思い出を語るトークも楽しい。客席からは何度となく拍手や笑いが湧き起こり、ライヴはいいムードで進んでいった。
ライヴ後半では陰りを帯びた歌中と光を感じさせるサビの対比を、細井 豊のハーモニカとともにアコースティックギターと歌声で表現してみせた「挽歌」や、躍動感を放つ「Believe In Our Smile」、鈴木のクールかつ硬派なヴォーカルを配したロックチューン「孤独」、ロックンロールテイストを活かした「夢キッスR70」などを相次いでプレイ。活き活きとした表情で歌い、ギターを奏でる鈴木の姿と心地良く気持ちを引き上げるサウンドに客席の熱気もいっそう高まり、場内は一体感と温かみにあふれた盛り上がりを見せた。
“僕が歩んできた道は、決して平坦ではなかったです。活動していく上で、なかなかうまくいかないことがたくさんありました。でも、その度に手を差し伸べてくれた人たちがいまして、こういう記念ライヴとなりますと、その方々の顔が浮かんできます。今日集まってくださって、たくさんの拍手をいただきまして、本当に嬉しく思います。感謝の気持ちでいっぱいです”というMCに続けて、鈴木は本編の締め括りとして「映画」を弾き語りで披露。噛み締めるような歌声と青春時代の思い出を綴った歌詞を活かした同曲の聴き応えは圧巻で、総てのオーディエンスが深く惹き込まれていることが伝わってくる。ずっと味わっていたくなるしっとりとした余韻を残して、鈴木はステージから去っていった。
『鈴木康博 LIVE2022 ~おかげさまで50年+2~』はアニバーサリーに相応しい充実した内容で楽しめた。オフコースという名前に頼ることなく、常に自身にとってリアルな楽曲を作り、楽しむと同時にストイックな姿勢で音楽と向き合ってきた鈴木が生み出す音楽は大きな魅力や説得力に満ちている。だからこそ、半世紀を超えて多数のリスナーを魅了してきたことをあらためて痛感させられるライヴだった。
もうひとつ、50周年を迎えたアーティストでいながら若々しさを放っていることも印象的だった。まだまだ続いていく鈴木の物語に注目していきたいと思う。
取材:村上孝之
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