【栗林みな実 インタビュー】
戦った感覚になれる
楽曲かもしれない
栗林みな実
TVアニメ『回復術士のやり直し』のOP主題歌として書き下ろされた「残酷な夢と眠れ」は、デビュー20周年を迎える2021年の幕開けに相応しい、パワーあふれるインパクト大のロックナンバー。同曲が生まれた背景にはどんなものがあるのだろうか?
その世界観に寄り添うことを
一番に考えて制作している
「残酷な夢と眠れ」はTVアニメ『回復術士のやり直し』のOP主題歌として書き下ろされましたが、お話をもらった時のお気持ちは?
またアニソンを作ることができるということが嬉しかったです。お話をいただいてすぐに原作やシナリオを読んだのですが、今まで読んだことがない…本当に目が覚めるような激しい世界観のお話だったので、アニメでどんな描き方をするのかが楽しみになりました。アニメの主題歌を手がける時は、その世界観に寄り添うことを一番に考えて制作しているのですが、『回復術士のやり直し』は救いのない恨みや復讐のお話だったので、その1ミリもいい人になろうとしない感じを(笑)、曲で表現できたらいいなと思いました。
「残酷な夢と眠れ」は畑 亜貴さんの歌詞を先にもらってから、栗林さんが作曲されたということですが。
はい。アニメのオープニング曲なので、テンポの速い曲にしようという想いは初めからあったんですけど、畑さんが書いてくださった歌詞にもリズム感があって、自分が原作を読んだイメージと畑さんの歌詞だけで、もう頭の中で曲の方向性が固まりました。
その畑さんの歌詞の中でお気に入りのフレーズは?
1番のAメロに《最初から闇の中を/生き抜くつもりで》という歌詞があるんですが、2番の間奏明けでも《最初から闇の中を/生き抜いてやる》と同じ言葉が引用されているんですね。その着眼点に、畑さんのすごさを改めて感じました。Aメロのこの部分を歌った時に“覚悟が強い言葉だな”と心に残って、歌の方向性を決める部分としてここが一番ポイントになるところでしたね。その迷いのなさもあって、迷わずに激しく表現ができました。レコーディングの段階でライヴでのイメージできるぐらい、エネルギーを発散するというか。
では、作曲の際にどんなことを意識されました?
歌う時に“これからサビが来るぞ!”という感覚って心地良いと思うんです。だから、歌っている方も、聴いている方もワクワクする感覚を表現できたらいいなと思って、それはすごく意識しました。キーは自分でも苦しいぐらいまで上げることで表現が活きる場合もあるんですけど、この曲はみなさんが歌いやすいほうがいいと思ったんです。結果、自分も楽に歌える、苦しくないぐらいの低めキーになりましたね。
歌唱の際のポイントはありますか?
歌う時に言葉の子音をはっきりと言って、突き刺すような響かせ方を意識しました。ドラムのリズムと合わせて言葉をちょっと強めに言ったり、いつもよりはっきり言ったりすることを心がけましたね。
その歌唱も含め、力強いアグレッシブなギターロックチューンに仕上がりましたが、菊田大介さんの編曲を聴かれてみていかがでしたか?
自分が欲しかった音がここにあると思いました。菊田さんには昔からお世話になっていて、こういうロックっぽいアレンジもお上手だというのが自分の中にあったので、編曲をお願いしたんですけど、本当にイメージ通りのもので感動しました。レコーディングまでの歌の練習の段階で楽しい気持ちになりましたし、本番の歌い方もイメージしやすかったです。歌を録ってからも、さらに手が加えられて振り幅いっぱいにパワーアップしたので、仕上がった時はもう本当にカッコ良くて! 歌を録る前の段階で、すでにカッコ良いアレンジだったんですけど、それが何倍にもなって仕上がるまで、そのプロセスの中で何回も感動がありました。
聴き応えも十分です!
そうですね。戦ってないんですけど、戦った感覚になれる楽曲かもしれないです(笑)。
本当にパワフルで、今の時代を生き抜く人たちに活力を与えてくれそうな一曲になりましたね。
人の心に寄り添う音楽っていろいろな種類があると思うんですけど、この曲は本当にどうしようもない状態で“やらなきゃいけない!”という時に聴くといいかもしれないですね。ギリギリの中で“今、集中してやらなきゃ!”みたいな時に、グッとテンションを上げられると思います。
一方のカップリング曲「深い蒼の森」はスケール感あふれるドラマチックでたおやかなナンバーで、まるで「残酷な夢と眠れ」と対になっているかのように聴こえました。
『回復術士のやり直し』は復讐がテーマになっているアニメだし、表題曲がダークなので、カップリングは明るい曲でも良かったと思うんですよ。でも、なかなかこの世界観を音楽にできる機会はないからカップリングでも掘り下げてみようと。この世界観を一枚で表現してみたいと思って書きました。表題曲の構成がわりとシンプルなので、「深い蒼の森」は歌が入っている曲ですけど、サウンドトラックに近いイメージを持って制作しましたね。アニメの中で流れていてもいいぐらい、歌がなくてもサウンドやメロディーだけで成立するようなものにしています。
この曲は栗林さんとしても挑戦だったのですか?
今までやっていないことをやりたいという想いもありましたね。リズムを変拍子にしたり、サビも1番と2番で違っていたりと、自由に変化させて作りました。世界観も森を彷徨っている感じをイメージしています。森に入り込んで抜け出せない…それぐらいのマイナスな感情をひとつのかたちにしました。
壮大なストリングスや繊細なピアノサウンドによる小高光太郎さんの編曲も「残酷な夢と眠れ」と同じぐらいダイナミズムにあふれたものになっていますね。
小高さんの編曲は感動しました。ピアノとストリングスを軸に使っていただきたいとリクエストしたんですが、特にバイオリンは自分ともうひとり歌い手がいて、まるでデュエットしているかのような入り方をしているので、聴いていてすごく世界観に入り込めましたね。面白いし、情緒があるいい仕上がりになったと感じています。実は、両曲ともGRANRODEOのe-ZUKAさんがギターを弾いてくださっているんです。魂がこもっていますよね。
なるほど。「残酷な夢と眠れ」の間奏のギターソロも圧巻です!
「残酷な夢と眠れ」は“ギターソロを間奏に入れてください”と菊田さんにお願いして、e-ZUKAさんに弾いていただいたんです。まさに、e-ZUKAさんが“ここで生きている!”みたいな感じですよね(笑)。
アーティスト
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