【THE PINBALLS インタビュー】
“セルフカバー”というよりも
“リブート”というイメージがある
L→R 石原 天(Dr)、森下拓貴(Ba)、古川貴之(Vo)、中屋智裕(Gu)
10カ月振りにリリースする『Dress up』は全11曲収録のアコースティック•セルフカバーアルバム。“アコースティック”と銘打ってはいるものの、バイオリン、ピアノ、サックスも加えたアレンジは、そんなひと言には収まりきらないジャジーでリッチなものに。メンバー4人の発言が挑戦の大きさを物語る作品の制作背景を探りたい。
うちのエースである中屋と
他のミュージシャンをぶつけたかった
『Dress up』は“アコースティック・セルフカバーアルバム”とのことですが。
古川
もちろん新曲も作っていて、これからレコーディングするんですけど、新型コロナウイルスの影響でライヴができなくなった時間を使って、せっかくだからいろいろやりたいと思って、これまでやってこなかった新しいことをやってみることになりました。
森下
リリースするかしないかは別として、話としては昨年ぐらいからあったんですよ。
石原
でも、いざ作り始めたら結構パンパンで。
森下
時間があったはずなのに、なんだかんだで(笑)。
古川
リハができなかったんですよ。
森下
集まることができなかったから、中屋が考えたアレンジを全員で共有はしていたんですけど、実際に楽器を鳴らして、全員で合わせることがなかなかできなくて。
古川
ゲストミュージシャンもお願いしていたので、リハができないっていうのはすげえ不安でした。
森下
緊急事態宣言が解除されてからようやく動き出したので。
古川
6月、7月とレコーディングして。だから、ほんとついこの間まで作っていたんですけど、思いの外、難航して…途中でやめちゃおうかって話も出たくらいです(苦笑)。
“やめちゃおう”っていうのは?
森下
そもそものリリースを(笑)。
古川
一回、世の中に出しているものばかりなので、前より良くないとダメじゃないですか。全員そこにはこだわりがあったんですけど…特に中屋と俺が違うところでこだわりが強いから、録った曲に対してお互いにダメ出しして、中屋も言うし、俺も言うし、それをディレクターやレコード会社の人たちがなんとかなだめるみたいな。現場は大荒れでしたね(笑)。
中屋
難しかったですね。どの曲もバンドでやっているわけだからすぐにできると思っていたけど、一回やっているからこそ逆にアレンジが浮かばなくて。ちょっとナメてましたね。
確かに一度完成した時点で、“もうこれしかない”というものを発表しているわけですからね。ところで、昨年ぐらいから話が出ていたということは、以前からアコースティックアレンジに興味があったわけですね?
古川
俺は常にありました。欲張りだから何でもかんでもやりたいんです。だから、“こういう楽器を入れたい”っていうアイディアはこれまでもあったんですけど、そのたびに中屋が“じゃあ、バンドでやる意味って何なんだ?”“ロックバンドでいる意味って何なんだ?”って。中屋のそういう首尾一貫したところは好きだし、だからこそ一緒にバンドをやっていて楽しいんで、中屋の意見を尊重してきましたけど、今回はうちのエースである中屋と他のミュージシャンをぶつけてみたかったんです。そしたら、すごく良くて! しかも、中屋のリードギターが他の楽器に全然負けていなかった。だから、“いいじゃん!”って中屋に言ってやりました(笑)。
古川さん以外の3人も興味はあったのですか?
森下
昨年のLINE LIVEではアコースティック編成で3曲ほどやらせてもらったり、リリースイベントでアコースティックライヴもやったりしましたけど、たまにやるぐらいだし、作品としてリリースしようとまでは、正直言って考えたことはなかったです。だから、“1曲か2曲録って、何かの特典で付けるんだろうな”ってぐらいに思っていたから、“フルアルバムとしてがっつりやるんだ!?”って(笑)。
石原
まぁ、チャレンジするという意味では良かったですけどね。
みなさん、普段からジャズやR&Bに興味があるんだと思ってました。実際、そういうアルバムに聴こえるし。
中屋
そういう音楽も好きですけどね。ロックンロールは大好きなんですけど、メインで聴くかと言ったらそうでもないので。特にブルースはすごい好きで、高校生の頃はとり憑かれたように聴いていたし。もちろん、ジャズも大好きだし。
古川
むしろ、やってみたらコード進行を含め、そういうアレンジに合う曲が多かったですね。
森下
さっき古川も言っていたように、基本編成外の楽器を入れたらより良くなるんじゃないかとは思いながら、“でも、ライヴは4人でやるんだから”って、今までは4人で完結させていたんです。今回、そのリミッターが外れて、入れたい楽器を入れてみたら、僕ら4人はしんどかったけど、楽曲的にはすごく活きた…そもそも活きるだろうと思ったから、最初からNOとは言わずに、とりあえずやってみるかってなったんです。
選曲はどんなふうに?
古川
中屋と俺でアコースティックに合いそうな曲を探っていきました。合うと思ってやってみたらダメな曲もあったんですけど、とことん合う曲は合ったんですよ。だから、選曲したというよりは、合いそうな曲を生き残らせていったみたいなところはありますね。あと、オリジナルを作った時、“本当はこうしたかった”という曲もあったので、それができたのは嬉しかったです。
アレンジは中屋さんが考えて、みんなに投げたそうですね。
中屋
何曲かやりましたね。
古川
中屋が打ち込んでデモを作ってくれて。あとは、楽器を鳴らしながら考えたり。
森下
レコーディング中も誰かが音を入れている時は、残りのメンバーが別の部屋でジャカジャカやりながら、同時進行でやってました(笑)。
石原
中屋がアレンジを作ってくれた曲のほうが、全体像が見えてやりやすかったのはありますね。
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