【THE MUSICAL LOVERS】『ミス・サイ
ゴン』 ~最終章:キャスト論・その
他の役編~ by 町田麻子
~最終章:キャスト論・その他の役編~
作品の偉大さに観客のリピート率が追い付いていない気がする『ミス・サイゴン』を、重いストーリーそのものを楽しむ方法と、キャストによる各役の演じ方の違いを楽しむ方法の紹介によってゴリ押ししてきた本連載も、今回で最終回。演じ方の選択肢を紹介するって、演じたこともないくせになんと不遜であることかと、キムとエンジニアでやってみて痛感・反省していたりもするのだが、そこは各執筆者の愛ある独断と偏見によってミュージカル作品の魅力を語ることが目的のこのシリーズに免じて許していただくことにして、最後まで続けてみよう。以下(も以上も)、すべて私見であることを念のため、改めて申し添えておく。
エレンに関しては、クリスよりも先にキムに会ってしまったあとのソロが《いま彼女に会った》から《メイビー》に変わったことで、誠実さが表現しやすくなったように思う。《メイビー》は《メイビー》で、歌詞もメロディーもまるで禅問答のようなつかみどころのない歌なのだが、ソロがまるごと新曲になったという事実そのものに、エレンの印象を変えたいというクリエイティブチームの強い思いが見てとれる。実際《いま彼女に会った》時代には、キムを召使のように扱うアジア人差別者的なエレンも散見されたが、最近では海外版を含めてもそういうエレンは見かけない。そう考えると、結局のところこの役に必要なのは、難曲《メイビー》を“聴かせる”ことのできる歌唱力と表現力だと言えるかもしれない。
最後の最後に、タム。歌もセリフも一切ないが、キムに呼ばれたら元気よく飛び出し、キムが《命をあげよう》を歌っている間おとなしく絵を描き続け、エンジニアにキスをせがまれたらほっぺにチューをしてその口を袖で拭うというちょっとしたコメディ演技を、3歳(に見える年齢)にしてこなさなければならない“難役”だ。というわけで、うちの子は歌もセリフもダメそうだけど一度くらい子役の経験させたいわぁと思っている、お利口な乳幼児をお持ちのオタクな親御さんは次回、ぜひご応募を!――書けば書くほど、中止になった今年の公演にはベストキャストが潜んでいた気がしてならず、悲しい思いが募るばかりだったので、今回はこんなふざけた結びとさせていただく。ああ~観たかった!
おすすめ記事
-
『OKMusic』サービス終了のお知らせ
2024.02.20 11:30
-
音楽ファンの声、エールを募集! music UP's/OKMusic特別企画 『Power To The Music』 【vol.89】公開
2024.02.20 10:00
-
今年でデビュー50周年の THE ALFEEが開催する、 春の全国ツアー神奈川公演の チケット販売がいよいよ開始!
2024.02.13 18:00
-
音楽ファンの声、エールを募集! music UP's/OKMusic特別企画 『Power To The Music』 【vol.88】公開
2024.01.20 10:00
-
宇多田ヒカル、 初のベストアルバム 『SCIENCE FICTION』発売決定& 全国ツアーの詳細を発表
2024.01.15 11:00
人気
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第1回 『自己紹介を。』 -
2014.12.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第5回 『新年度を。』 -
2015.04.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第16回 『巡り合いを。』 -
2016.03.20 00:00
-
Sexy Zone、Kis-My-Ft2 、A.B.C-Zらが興奮&暴走!?『BAD BOYS J』男祭りロングレポ
2013.10.25 17:30
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第2回 『忘れられていることを。』 -
2015.01.20 00:00