その後のAORとメローハードロックの
指針となったTOTOの傑作『TOTO IV ~
聖なる剣』
3年ぶりの来日がスタートするTOTO。メンバーの死や闘病で、一時は解散を余儀なくされた彼らだが、そのたびに甦ってきた。彼らの全盛期と言えば、デビューした78年から82年にかけてであることは誰しもが認めるところだろう。中でも、4枚目の『TOTO IV(邦題:TOTO IV ~聖なる剣)』は、ビルボードチャートで全米4位を獲得しただけでなく、グラミー賞の「アルバム・オブ・ザ・イヤー」ほか、数々の受賞を果たした名作である。40歳以上の人なら、このアルバムに収録された「Rosanna」(全米2位。グラミー賞、レコード・オブ・ザ・イヤー受賞)や「Africa」(彼ら初の全米1位)といったシングル曲は、ファンならずとも必ず耳にしたことがあると思う。
かつてのロック少年が成長し、ロック青年となったときに生まれたAOR
TOTO結成から『TOTO IV ~聖なる剣』まで
TOTOはAORという方法論を取ったために、一般のリスナーを取り込むことができ、大きなセールスにつながったのだと言える。ただ、緻密に計算され尽くしたその作品群は、一見メーターが振り切っていないように見えることから、“商業的すぎる”とか“産業ロックみたいだ”といった批判を呼ぶことになるのだが、TOTO出現以降のAOR作品は、その多くが彼らの手法を踏襲したものになっている。というのも、バックを受け持つミュージシャンが、ほとんどTOTOのメンバーで占められているというのが主理由で、いわゆる“一党独裁”みたいなもの。今振り返ってみると、彼らのやり方はやはり間違っていなかったと見るべきだろう。このアルバムは、全米チャートで9位まで上昇している。
この間に時代は70年代から80年代へ突入、AORは既に成熟期に達しており、巷ではテクノやディスコ向けの音楽が流行し始めていた。一方、パンクはと言うと大手レコード会社に取り込まれ、エネルギーを吸い取られるかのように、当初の破壊的なサウンドは影をひそめていく。こんな中で、TOTOは試行錯誤を繰り返していた。次のアルバムはこれまでにないレコーディング期間を設け、多くのゲストやオーケストラの導入など、さまざまなチャレンジを通して作品づくりを行ない、起死回生を狙っていた。
この時期のTOTOは、楽曲の完成度にしても、演奏の緊迫感や存在感にしても、AOR界で最高のレベルに達していたと思う。このアルバムのリリース後、ヴォーカルのボビー・キンボールやベースのデビッド・ハンゲイトらの脱退、ツアー疲れなども重なって、グループのテンションは徐々に微妙なズレを生じるようになっていく。異論はあると思うが、僕はこの作品こそが彼らの頂点だと考えている。
余談になるが、家庭を大切にしたいという理由で脱退したデビッド・ハンゲイトは、カントリー音楽のスタジオミュージシャン兼プロデューサーとなり、大成功を収めている。
『TOTO IV ~聖なる剣』の収録曲について
3曲目「I Won't Hold You Back」は、スティーブ・ルカサーの手になる曲。これまたシングルカットされ、10位となった。しっとりとしたバラードで、彼らの得意とするスタイルであるが、ここではストリングスがふんだんに使われているだけに音が厚い! コーラスではゲストであるティム・シュミット(ポコ~イーグルス)の声がよく聞こえる。
著者:河崎直人
アーティスト
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