【インタビュー】XERO FICTION、Jun
Gray Recordsより2年ぶりアルバム発
表「耳にこびりつくポップ」
◆ ◆ ◆
■前作まではパンクやハードコアのカウンター
■今回は何も意識せずに自由に作った感じ
──2017年に完成させた2ndアルバム『I Feel Satisfaction』は、Ken Bandでも活躍するJun Gray(B)のレーベル“Jun Gray Records”からのリリースとなりました。メンバー自身も活動の広がりを求めて、そのレーベルを選んだということでしたね。実際にその後の手応えはいかがでした?
ハルカ:手応えはありましたね。
コウイチロウ:具体的に言うと、以前とは一緒にやらかなったようなバンドとの対バンも増えたんですよ。自分たちはもともとハードコア出身なので、ライブのお客さんもそういった人たちがほとんどだったんです。でも、ちょっとずつ変わってきたかなって手応えもあります。
──分かりやすく言うと、コワモテのお客さんから、表情の優しいお客さんに?
コウイチロウ:だから逆に、コワモテのお客さんが来づらくなっているような(笑)。
──XERO FICTIONを2012年に結成したとき、今までに出会ったことのないフィールドのオーディエンスと出会いたかったわけですよね?
ハルカ:そうです。今まで観てくれていた人たち以外にも私たちの音楽を聴いてもらってる感じがしているので、いい方向に向かっているなって思います。
コウイチロウ:もともと広がりを求めてJun Gray Recordsからのリリースをしたというのもあるので、嬉しい状況ですね。
──そうしたライブを通して、3rdアルバム『POP OVERDOSE!』の楽曲アイデアも生まれていったんですか?
コウイチロウ:そうですね。ライブを続けていくなかで“こんな曲があったほうがいいな”とか、そういったところから曲作りに入りました。
ハルカ:歌詞のことで言えば、前作までは英語だったんですけど、今回から日本語詞を中心にしたんです。お客さんに“より伝わりやすく”という考えからで、ライブではお客さんとさらに共鳴ができるかなと思っています。
──『POP OVERDOSE!』の曲作りは、具体的にいつぐらいからスタートさせていました?
コウイチロウ:前作『I Feel Satisfaction』をリリースした2017年3月には、実はほとんどの曲はできていました。
──そんなに前から!? そこから約2年間、曲のアレンジや磨き上げる作業をずっとしていたんですか?
コウイチロウ:というよりはレコーディングをダラダラしていただけっていう(笑)。
ハルカ:楽曲の基盤は出来ていて、上モノを少しずつ足していく作業にちょっと時間が掛かった感じですね。
コウイチロウ:実は前作『I Feel Satisfaction』も、リリースの1〜2年前とかに曲は完成していたんです。それがズレていってる感じですね。なので『POP OVERDOSE!』は5月リリースなんですけど、次の作品用の新曲も出来ているんですよ。
──新作の手応えを感じながら次の新曲を考えるのではなく、かなり前倒し的な?
コウイチロウ:そうです。このバンドが始まってから、もうずっとそうです。順々に自分たちのやりたいことが決まっていて、それを順番にやってるんですよ。
──結成時から数年先の青写真を描いているんですか?
コウイチロウ:そうですね。流行りに合わせるという考えもあまりないんで。自分たちの好きなように進めていくのがこのバンドのスタイルで、曲をどんどん作っている感じです。もちろん、ライブをやりながら曲を考えることもあるんですけど、もともとアイデアがあったものを形にしているという感じ。
コウイチロウ:パンクやハードコアをやってきた過去があるのに、同じ人間だけど、今はこんな感じのこともできますよと。そういうのを見せたくてしょうがなかったんです(笑)。ハードコアやってきたのにXERO FICTIONみたいな音のバンドになる人たちって、あんまりいないと思うんですよ。
──でも、決して単調なポップ感ではないと思います。流れてしまうポップさじゃなくて、引っかかりがある。
コウイチロウ:ありがたいです。レコードを買うとき、店頭ポップに“ポップ・ライクの人はマスト!”とかよく書いてあって、それに惹かれて買ったりするんですよ。でも聴いてみたら、“そうじゃないだろう”って思うこともあるから(笑)。XERO FICTIONは、人の耳につくことを重点に、曲やアレンジを考えていますね。ヒダカ (トオル / THE STARBEMS / 元BEAT CRUSADERS)君にも僕はすごくお世話になっているんですけど、気が合うというか、僕らがやろうとしていることをすぐに分かってくれましたね。「できるんだからやりなさいよ」と言ってくれて。すごく応援もしてくれていますね。
──5曲目「SEVENTEEN(remix ver.)」には、ケイタイモ(元BEAT CRUSADERS / WUJA BIN BIN / ATOM ON SPHERE)の姿が見え隠れするシンセフレーズもあったりして、ニヤッとするポイントでした(笑)。
コウイチロウ:そうです、影響は受けていますね。BEAT CRUSADERSのようなスタイルにも共感できます。見た目は違いますけど(笑)。
──2曲目「The Voice」は、リズムの多彩さや展開などが相当入ってます。その聴きごたえから、もっと長い曲かと思ったんですけど、コンパクトな再生時間なんですよね。
コウイチロウ:そこはハードコア出身なんで、曲の時間が長いのは苦手なんですよ(笑)。それで3分以内とか3分半とか最初から決めて、そこに収まるようにアレンジを調整していくこともけっこうありますね。「The Voice」はもっと長かったんですけど、どんどんそぎ落としながら展開を付けていった感じです。
──3曲目「Round and round」は、ボーカルにオートチューンも掛かっていて、ポップ感を増強させた振り切り方だと感じました。
コウイチロウ:“ちょっと違うアレンジの曲があったらいいな”と思って試しにオートチューンを掛けてみたら、これはこれでいいなと。それで採用しました。今回から歌詞が日本語になったのも大きいんですよね。英詞では雰囲気が作りづらかったアレンジも、日本語だったらハマるようになったのかなと思います。
■そういう面でも日本語詞をやって良かった
──歌詞の言語の違いは、アレンジ面にも影響があったんですか。日本語詞にすることは、だいぶ前から考えていたんですか?
コウイチロウ:曲作りを始める前から、全曲じゃないけど、3枚目は日本語詞でやろうって決めていました。自分たちは同じようなタイプの曲を作りたくないので起爆材としてだったり、自分たちへの刺激としても、日本語詞をやってみたら楽しいかなと。実際に他のメンバーも日本語詞を考えてきて、“こうじゃないか?ああじゃないか?”って。そういう作業も今までやったことないんです。
──日本語だとストレートに伝わるので、英詞以上に気を遣うところもありました?
ハルカ:本当にそうなんですよ。日本語だから分かっちゃって恥ずかしいってのも最初はありました。“この言葉はちょっと言えないな”とか、“英語も少し交えて歌えばいいかな”とか。それでもメンバーから、「それはちょっとないんじゃない」と言われれば、歌詞を書き直して。
──同じようなことをTOTALFATも言ってましたよ。彼らもずっと英詞でやってきて、途中から日本語詞も書くようになったじゃないですか。「突破口を開くまで精神的に大変だった」と。「やっぱり恥ずかしさが最初はあった」と。
ハルカ:そうですよね。日本語だから、すぐ分かってしまうというところで。でも、日本語だからこそ気持ちを込めて歌いやすいっていう部分は、いいなと思います。母国語のほうが相手にはより伝わるから。
──その“伝わる”というのも、ポップさにつながりますからね。メンバーのアイデアで詞の内容が大きく変わった曲もあります?
ハルカ:大きく変わったものはないですね。ストーリーやシチュエーションなどを説明してから、メンバーからアドバイスをもらうので。
──絵が見えてくるようなストーリー、未来に向かっていくイメージが、各楽曲の歌詞から伝わってきました。
ハルカ:やっぱりポップな曲だし、前向きなことを歌いたいって気持ちがあって。もともと自分はすごくマイナス思考なので(笑)、歌はできるだけプラスに書こうっていつも思っていて。一握りでも、マイナス思考の人がプラスになれたらいいなと。
──自分自身にも向けた詞の数々ですか?
ハルカ:そうなんですよ。だから歌っていて気持ちや感情もさらに入りやすくて。
──12曲目「You & I」は、ギターアレンジにクイーンのブライアン・メイを感じましたが?
コウイチロウ:そうですね。ギターソロを録るときに、ちょうど映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観たんですよ。“じゃあ、あんな感じにしよう”みたいな(笑)。もともとクイーンは大好きだし、XERO FICTIONとは違うバンドも僕はやっているんですけど、そこではクイーンのカバーもしてるし。映画を観て、やっぱりいいなと思って。そのイメージでギターソロを弾きました。
ハルカ:ピアノはもうちょっとできたかな?と自分では思っているんですけど(笑)。でも、ギターソロでグッと来るメロディがあるから、ピアノソロはちょっと遠慮させていただきました(笑)。
──アルバムタイトル『POP OVERDOSE!』はアルバムの中身をそのまま物語っていますが、どういった意味合いで考えたタイトルなんですか?
コウイチロウ:ちょっと待っててくださいね。この間、買ったやつを持ってきて説明するので(と、席を離れる)。……これです! 1980年代のオランダパンクバンド、the SQUATSのアナログ盤シングル「NOISE-OVERDOSE」。ずっと前からものすごく欲しくて、探していたんですけど、やっと買うことができた。これの入手記念で、タイトルを元にしました(笑)。XERO FICTION流にするなら、NOISEではなくPOP。それで『POP OVERDOSE!』です。ピッタリだなと思います。他のメンバーは、このタイトルになった経緯を知らないんですけど(笑)。僕がアルバムジャケットもデザインしていて、そこにもthe SQUATSのテイストが散りばめられています。
──先ほど、「次作の構想や曲もすでに形になっている」という話がありましたが、どんなことになるんですか?
コウイチロウ:曲はほぼできています(笑)。日本語の曲をライブで主にやっているんですけど、ライブがやっぱり楽しいんですよ。なので、もっとライブに特化した曲を作りたいって話になって、ライブで楽しめるテンポのポップな曲を意識して作りました。そういう面でも、今回、日本語詞をやって良かったなと思います。
ハルカ:XERO FICTIONは常に変化を求めているというか。ずっと同じ場所にいたらつまらなくなっちゃうじゃないですか。マンネリ化したら成長は生まれないし、いいものができると思えないので。どんどんいろんなものを取り入れて変化しようって気持ちは、メンバーみんなにあると思いますね。
コウイチロウ:でも、耳にこびりつくようなポップさを軸として、曲調をいろいろ考えていますね。
──これからのライブやツアーに向けて、どんな意気込みですか?
ハルカ:お客さんとより共鳴してライブができるんじゃないかなと思っているのんで、自分自身も楽しみですし、みんなで楽しめるライブにしたいと思っています。
コウイチロウ:正直、“ライブ活動はどっちでもいいかな”って結成したとき思っていたんですよ。曲を作るのが楽しくて、そっちにばっかり力を注いでいたんです。そのへんで今は意識が変わってきました。
ハルカ:結成した当時、「ライブはやらずに音源だけのバンドにしよう」って話も出ていましたから(笑)。
コウイチロウ:でも、また違う遊び方を見つけて、意識も変わっていったんです。ライブをやるのが楽しみでしょうがないですね。ここ数年、ハードコアバンドと対バンしてなかったんで、今年は自由に一緒にやれたらいいなとも思っています。
ハルカ:今年は本数を増やして、できるだけライブをやりたいと思っていますから。
──これからXERO FICTIONを知る人たちにメッセージをいただけたらと。
ハルカ:見た目はパンクっぽい感じなんですけど、曲はみなさんも楽しめるポップな感じに仕上がっていて。分かりやすい日本語で歌っているので、一人でも多くの人に聴いてほしいなと思っています。
コウイチロウ:見た目とは違うポップさがあるので、そこに引っかかったらライブを観に来てほしいですね。気になったらYouTubeでも何でもいいので曲を一度聴いてみてほしいです。多分、想像とは違った曲をやっていると思います。
取材・文◎長谷川幸信
■3rdフルアルバム『POP OVERDOSE!』
2019年05月22日発売
PZCJ-9 2,500円(without tax)
02. The Voice
03. Round and round
04. Over the thousand night
05. SEVENTEEN (remix ver.)
06. Maiking the new world
07. One by one
08. Inst.
09. I want you back
10. Remember you...
11. Silent Story (remix ver.)
12. You & I
■レコ発ツアー<XERO FICTION“POP OVERDOSE! TOUR”>
05月29日 浜松窓枠
06月02日 サカエスプリング
06月08日 神戸108
06月09日 新栄RED DRAGON
07月21日 今池HUCK FINN
07月28日 札幌KLUB COUNTER ACTION
08月03日 碧南芸術文化ホール
08月14日 熊谷HEAVEN'S ROCK VJ-1
08月31日 岡山CRAZYMAMA
09月01日 浜松G-SIDE
10月19日 東京某所 ※後日発表
10月20日 名古屋某所 ※後日発表
11月02日 大阪某所 ※後日発表
11月23日 大須oys
11月24日 大阪 堺GOITH
12月21日 下北沢THREE ※ワンマン
12月29日 名古屋CLUB QUATTRO ※ワンマン
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