reading note、14年の軌跡と
感謝を記すワンマンライヴで
自主企画イベントシリーズ完遂
2月24日@TSUTAYA O-Crest
まず1曲目の「性癖」でやわらかな音像が会場を包み込み、その後は「エクストラタイム」や「たゆたう」など、マイナー調の日本的なメロディーが平田勝久(Vo&Gu)の歌声とともに音の上を華麗に滑り抜ける。一音一音を観客ひとりひとりに手渡すような、丁寧な演奏と歌唱。暗然たる空気感だけでなく透明感と解放感を孕んだ音の渦に、観客たちも身を委ねる。
本編中盤の「clap hands」と「Q」では、観客参加型の演出企画『TETRO』とのコラボステージが展開。観客のハンドサインによってステージ上の演出装置が起動するというもので、人差し指をかざすとステージ上の火花が噴射し、狐のサインを出すと上手と下手から同時にシャボン玉が飛び出す。観客もクラップとハンドサインに興じ、会場全体で躍動感あるパフォーマンスを繰り広げた。
平田はMCで今年1月に体調を壊したことに触れると“上京した時に声が出せなくなって、1カ月、誰とも会わずに部屋にいた。その頃と同じような気持ちになった”と続け、その上京時に書いたという「name」と「プール」を届ける。隅々にまで集中力が通った緊張感のある演奏には、自分たちの音楽とそれを愛する人々へ向けた混じり気のない誠実さが表れていた。
本編ラストの前、平田は6月29日のTSUTAYA O-WESTでのワンマンライヴをもってバンドを活動休止することを発表。気持ちを誤魔化さずに言葉にしていく彼は“(活動休止前ラストライヴまでの)4カ月でみんなに感謝の気持ちを伝えていきます”と目の前の人々へ真っ直ぐ語り掛けた。「五月の雨」の音色はその言葉の通り、切々とした温かい想いに満ちる。その様子は、このバンドが14年という歳月でたくさんの財産を得てきた証のようにも思えた。
アンコールで「人間味」と「エンドロール」を披露し、11回にわたる『otonication』を締め括ったreading note。悲壮感や暗雲が立ち込めるような雰囲気などはなく、自然な笑顔がこぼれる感謝の念が貫かれたステージだった。活動休止前最後のライヴとなるTSUTAYA O-WEST公演。彼らは足を止めるその日、いったいどんな空間を作るのだろうか。
撮影:nishinaga "saicho" isao/取材:沖 さやこ
アーティスト
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