【吉澤嘉代子 インタビュー】
自分自身と向き合う
アルバムにしたいと思った
吉澤嘉代子
シングル「残ってる」の高評価も記憶に新しい吉澤嘉代子が、1年8カ月振りとなる4thアルバム『女優姉妹』を完成させた。バラエティーに富んだ収録曲がリンクし合いながら、“女性”というテーマを描き出す、見事な作品集である。
アルバム『女優姉妹』は連作の短編小説集のような独立した楽曲が1作品にまとまることで、より奥深い世界観が感じられる作品になりましたね。
以前から“性”をテーマにしたアルバムを作りたいと思っていたんですけど、そこにいろいろな要素を盛り込んでいくうちに“女性”をテーマにしようと枠を広げまして。なので、そういうアルバムに入ることを想定して、シングル曲「月曜日戦争」も「残ってる」も「ミューズ」も作っていたんです。
1曲目の「鏡」の歌詞にある“鏡”や“貴方”という言葉が、その後の「月曜日戦争」「怪盗メタモルフォーゼ」「女優」にも登場することで、楽曲の世界観がつながっていく感じがとてもいいです。
“女性”がテーマなので、誰かに何かをしてもらうんじゃなくて、自分自身との対峙、自分と向き合う作業から起き上がっていくような着地にしたいと思っていて。そうなると、“鏡”というのは大きなモチーフになると思ったんですよね。“貴方”や“ダーリン”は“親愛なる私”というふうに置き換えて聴いてもらえたらと思っていたし、自分自身と向き合うアルバムにしたいなと思ったんです。前回の『屋根裏獣』ではどんどんシーンが切り替わっていく、いろいろな世界を描きたいと思ったんですけど、今回は短編読み切りがいくつか入っていて、“鏡”というモチーフがアルバムを通してリンクしていく物語にしたくて。
サイケデリックロック色の濃い「鏡」「女優」「恥ずかしい」など、サウンド面もいろいろと興味深いのですが、もっとも注目なのは「洋梨」でしょうか。シングル「月曜日戦争」のジャケットを手掛けた、たなかみさきさんとのデュエット曲ですね。
たなかさんはイラストレーターなんですけど、素敵な歌を歌われるんです。Instagramに上がっていた、たなかさんが「残ってる」を歌っている動画を観て、ぜひともご一緒したいなと思ったんです。あと、たなかさんがいつもイラストに添えられている一文が素敵で、歌詞も構想から一緒に作れたら…とも思いまして。それで、直接電話でお願いしたんですけど、“楽しそう! やります!”って。歌の上手な人はたくさんいると思うんですけど、オリジナリティーがあるというか、“たなかさんの歌”という感じがして好きですね。
「洋梨」は南米系のダンスビートで、打ち込みありウォールオブサウンドありと、そのサウンドのごった煮感を含めて、奇想天外な感じが“吉澤嘉代子ワールド”といった印象でした。
「洋梨」はアルバムのバリエーションを広げてくれたなぁと思います。今回、あんまりひょうきんな曲がそこまで入らなかったので、「洋梨」にはそこを担ってもらったのかなと思ってますね。
アルバム全体としては、さっき言った歌詞がリンクしている様子がサウンドの幻想感と相まってリスナーの想像力を喚起させるようなところがあって、今まで以上に“音楽って面白いなぁ”と思わせる作品に仕上がっていると思います。吉澤さんにとっての音楽は、やはり聴き手の想像力、空想力を広げるものであってほしいという意識は強いですか?
音楽…何だろう? アレンジのことも考えたんですけど、歌詞というのはすごく難しいって特に思っていて。単に聴く人に向けて投げるんじゃなくて、誘導しつつ、だけど言いすぎない…そこはかなり調整しました。日本語って限りがあるので、“難しいなぁ”って今回改めて思いましたね。でも、やっぱり“これだ!”って思う言葉を当てはめることができた時に、それまでの疲れが全部飛んだり、“全然眠らなくても大丈夫”みたいな部分があって、やっぱり辞められないんですよね。
ご自身では今回一番上手くはまったと思う歌詞はどの楽曲のどのフレーズでしょうか?
そうですねぇ…自分の歌詞が大好きなんで、いっぱいあります。というとあれですけど(笑)、「洋梨」の《熟れた果肉を齧るなら 黒い種ごとのみこんでね アナタの腹から発芽する子供たちが 根を張る夢みてる》ですね。子供って女性が身ごもるじゃないですか。それを“アナタ=男性”に置き換えると急にグロテスクになるっていう気持ち悪さが不思議で面白いと思って好きです。
(笑)。そんなホラーテイストもありますし、4thアルバム『女優姉妹』はバラエティーに富んだ作品である一方、ラストの「最終回」でサウンドも言葉も力強く締め括っていて、全体としては前向きなアルバムである印象が強いです。
ありがとうございます。最初、「残ってる」で美しく終わらせるか、それともどんでん返しするか迷ってたんですけど、最終的に自分がこのアルバムでのやりたかったことは“どんな辛いことがあっても笑い話にして生きていたいな”というところだったので、こんなふうに開き直りのコースにしてみました。
取材:帆苅智之
「ミューズ」MV
「残ってる」MV
「月曜日戦争」MV
アーティスト
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