SHISHAMOの夢が結実したコラボライブ
『「カルピスウォーター」 × SHIS
HAMO SPECIAL LIVE!!! 』を目撃した

「カルピスウォーター」 ✕ SHISHAMO SPECIAL LIVE!!!

2018.9.17 恵比寿ザ・ガーデンルーム
“SPECIAL LIVE”というタイトルに偽りはない。この日だからこそ、この組み合わせだからこその特別なステージとなった。2018年9月17日、恵比寿ザ・ガーデンルームで行われた『「カルピスウォーター」 ✕ SHISHAMO SPECIAL LIVE!!!』。キャンペーン期間中に「カルピスウォーター」を購入して、ポイントを集めて応募した人の中から抽選で選ばれた500名が招待されるライブ。通常のSHISHAMOのライブでは赤白タオルを持っている人が多く、客席が赤っぽいのだが、この日は観客全員が入り口で配布された限定青白タオルを持っているので、スタンディング・ゾーンが青っぽい。バックドロップも青地に白い文字のバンド名という配色だ。
SHISHAMO・宮崎朝子
青白タオルを手にした吉川美冴貴(Dr)、さらに松岡彩(Ba)、宮崎朝子(Gt&Vo)がステージに登場してライブは始まった。3か月ぶりのステージとなった日比谷野外大音楽堂での『SHISHAMO NO YAON!!! 2018』の翌日のライブ。前日は野外だったが、この日はオールスタンディングのライブハウス仕様となっている。ステージが近くて、メンバー3人の表情もはっきり見える貴重なライブだ。1曲目に演奏されたのはこの日のステージの始まりにふさわしい、「カルピスウォーター」の春のCMソング「水色の日々」。ブルーのライトが照らされて、会場内にせつない世界が広がり、観客のハンドクラップが加わっていく。卒業式をモチーフとした歌だが、出会ったその日に別れがやってくる一期一会のライブにも当てはまる部分が多々ある。エネルギッシュであることとエモーショナルであることが両立した歌と演奏がいい。「量産型彼氏」、「ドキドキ」でも観客がハンドクラップで参加。歌ったり、手を上げたり、レスポンスしたりする参加型コンサート。MCの途中で宮崎が「カルピス!」と言うと、観客が「ウォーター!」と応える。「カ」と言うと、「ルピスウォーター」と客席が返して、「委ねすぎ」と吉川が発言する場面もあった。それくらいSHISHAMOと観客との意思疎通が取れているということだろう。
SHISHAMO・松岡彩
「『カルピスウォーター』のCM、ずっとやりたかったんですよ。『カルピスウォーター』との歴史をひもとくと、高校の軽音楽部で結成して卒業して、ちゃんと活動していこうという時に『恋する』という曲を、『カルピスウォーター』のCMソングをイメージして勝手に作りました。しかも仮タイトルは『カルピス(仮)』。その後、初めてのシングル曲の『君と夏フェス』も『カルピスウォーター』のCMをイメージして作った曲です。もう1曲、ダメ押しで本気でCMを取りにいこうとして作った曲で、取れなかった曲」という宮崎のMCに続いて、「恋に落ちる音が聞こえたら」が演奏された。そんな説明の直後のせいか、もはや本物のCMソングのように聞こえてくる。恋のせつなさやときめきを描きながらも、バンドの演奏はダイナミックでエネルギッシュ。だからこそSHISHAMOの音楽は恋する人々の頼もしい味方になっていくのだろう。
SHISHAMO・吉川美冴貴
SHISHAMO
「僕に彼女ができたんだ」のイントロのギターのカッティングが鳴り響くと、大きな歓声と拍手が起こった。バンドの生み出すグルーヴに合わせて、会場内が揺れて、熱気の密度が濃くなっていく。間奏で宮崎がステージセンターに出ると、大きなどよめきが起こった。メンバーの一挙手一投足に対しての客席の反応も実にダイレクトだ。と同時に、客席の熱気や感動がステージ上にもしっかりフィードバックしていく。これがライブハウス的な空間の醍醐味。バンドの白熱した演奏と観客のテンションがシンクロしている。さらに躍動感と開放感あふれる演奏が気持ちいい「好き好き!」へ。たたみかけていくスピーディーな展開が気持ちいい。1曲1曲、待ってました!という喜びと興奮が伝わってくる。“好き”という気持ちの連鎖がさらなるエネルギーを生み出していく。
SHISHAMO・宮崎朝子
「『カルピスウォーター』の夏のCMがすごく良くて。マネしてみたくね?ってことになり、3人で再現をした動画を作って、TwitterとLINEの公式アカウントに乗せました」と松岡からのMC。撮影の苦労話も紹介されて、3人のCM映像への思いも伝わってきた。宮崎のアコギで始まったのは「夏の恋人」。夏が過ぎようとしているこの季節に聴くと、一段と染みてくる曲だ。宮崎の歌声からはせつなさが滲むというよりも、ほとばしる瞬間もあった。松岡もマイクを通さずに歌いながら演奏している。吉川も思いを込めてリズムを刻んでいる。夏という季節を越えるたびに、この曲に込められた思いも深く強くなっているのではないだろうか。「熱帯夜」もこの季節にぴったりな曲。冒頭でリズムのつまづきがあって、やり直す場面もあったのだが、歌も演奏もさらに表情が豊かになっていた。
SHISHAMO・松岡彩
この日のライブへの参加は「カルピスウォーター」の購入が大前提となっていた。何本購入したのか、直接、客席に聞く場面もあった。ちなみに300本買った人もいれば、1発(3本)で当選した人もいた。「みんな、持ってるってことだよ」と宮崎。さらに「カラダに」とコールすると、会場内がいっせいに「ピース」とレスポンスが返ってきた。「すごい平和な空間だね。多分ここが一番平和な空間だよ」。
SHISHAMO・吉川美冴貴
そんなMCに続いて夏のCMソング「ねぇ、」では歌詞のとおり、“フェンスの向こう側へ”と越えていくかのような気迫あふれるプレイがスリリングだった。恋愛で躊躇している人へ勇気を与えるラブソング。松岡のベースで始まった「BYE BYE」ではバンドのソリッドなアンサンブルにしびれた。悲しみや痛みやさびしさまでもをエネルギーへと変換していくような歌と演奏だ。さらに「タオル」へ。いつもとは違って、赤白ではなくて、青白タオルが回る中での演奏。歌詞も“青白タオルを回しましょう!”と特別バージョンになっている。これも SPECIAL LIVE!!!ならではだ。さらにはこれも「カルピスウォーター」のCMソングをイメージして作った「君と夏フェス」へ。観客もハンドクラップで参加して盛り上がっていく。間奏で松岡がセンターに出て、ベースソロを演奏すると、大きな歓声が起こった。本編ラストは「明日も」。観客ひとりひとりに向かっていくようなヒューマンで、ひたむきな歌と演奏によって、感動的な空間が出現して、3人の渾身の演奏でフィニッシュ。
SHISHAMO・宮崎朝子
アンコールではまず「魔法のように」が演奏された。観客もシンガロングで参加。女性だけでなく、男性も加わって、幅広い年齢層による混声の“ラララ”という歌声がかけがえのないもののように響いてくる。この場所のこの瞬間のすべてが魔法のようだ。「楽しかったです。秋ツアーで会いましょう」という宮崎の言葉に続いてのアンコールのラストもやはり「カルピスウォーター」のCMをイメージして作られた「恋する」。デビュー前にこの曲を作ったことが、この日のステージに繋がったわけで、通常のコラボレーションでは使われないであろう《運命的》という言葉を使いたくなった。このコラボレーションを恋愛に例えるならば、一方的な片思いから始まり、時を経て、理想的な両思いとなり、恋が成就したようなものかもしれない。「カルピスウォーター」の公式CMソング2曲、非公式CMソング3曲が演奏されたスペシャルなライブ。SHISHAMOの3人の楽しそうな笑顔がさらなるたくさんの笑顔を生んだ。カラダにピース、そしてココロにもピースな夜だった。願えばかなうほど、現実は甘くないかもしれないが、願って、その願いを着実に形にしていけば、いつか実現する可能性があることを、この日のSHISHAMOのライブが示していた。

取材・文=長谷川誠 撮影=岡田貴之
SHISHAMO

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