【ライブレポート】Be Choir、1stシ
ングル発売記念ライブ「想いが皆さん
にも届くと信じて歌いたい」
その最大の魅力は、人が奏でる楽器の中で、アコースティックな最たる存在である“声”にある。たとえば、いくら初対面の人でも、相手の声を聴けば、その人の喜怒哀楽が手にとるように感じ取れるはずだ。このように声には、人間の感情、もっと言えば“魂”が宿っていると言える。その声が幾重にも連ねられ、時に美しく響き、時に爆発的に轟くことで、ゴスペルには、他の楽器では表現なしえない、聴き手の五感を震わせる力を持っているのだ。
そうしたゴスペルに、新たに日本人的な情緒や感性、美意識を結い合わせ、オリジナルのゴスペル・シーンを生み出そうとしている存在が、クワイヤ/マスコーラス(大人数でのコーラス)グループ“Be Choir”ではないだろうか。そんな彼らが、5月23日に、1stシングルCD「天涯 ~そらのはて~」をリリース。そのリリース記念ライブが、2018年5月27日、鶯谷・DANCE HALL新世紀で行われた。
長谷川が率いるBe Choirは、2012年にデビュー・アルバム『Be』、そして2015年には2ndアルバム『Lift』と、既に2枚のアルバムをリリースしており、つまり今回、“1stシングル”のリリースと言えども、その実力は既に折り紙付き。さらに、多彩なアーティストと積極的なコラボレーションを展開しており、ゴスペラーズ黒沢薫のソロ10周年記念シングルに収録された「LOVE LIFE feat. Be Choir」で共演するなど、まさに知る人ぞ知る存在といえる。そのBe Choirが満を持して完成したのが、今回リリースされた1stシングル「天涯 ~そらのはて~」なのだ。
タイトル曲は、日本音楽界を代表する売野雅勇氏が作詞をし、マンハッタン・ジャズ・クインテットのリーダーで、グラミー賞受賞者でもあるDavid Matthews氏が作曲を手がけるというスペシャルな1曲。他にも、「Echo」「雑草の勇者」、そして彼らのライブではお馴染みの曲「聖なる人(Live Recorded at ゴスペル Vol.2 on 2017.9.30/Piano by David Matthews)」」の計4曲を収録。今回のライブも、この4曲を軸にしながら、過去2枚のアルバムからも楽曲がチョイスされており、いわば現時点でのベスト・セットリスト的な内容となっていて、さらにそこに多彩なゲスト・シンガー&ダンサーが加わることで、とてもカラフルで、奥行のあるステージを魅せてくれた。
18時10分、暗くなった会場にミラーボールがきらめくと、オープニングSEとして彼らの楽曲「Lift」が流され、約30名のメンバーとバンドがステージに登場。スポットを浴びたダンサーのソロ・パフォーマンスが終わると、会場は一転して明るくなり、Chihiro(Vo)がメイン・ボーカルのアップテンポな「Echo」、次いで、鈴木と同じく『歌唱王』に出演した田中惇平(Vo)、そして平澤野安(Vo)の2人がフロントを務めた「Keep On Tryin'」が歌われた。この2曲を聴いただけで、Be Choirが作り出そうとする歌の世界がハッキリと見えてくる。
そうした集団を指揮し、手を叩き、踊り、そして曲のエンディングに合わせて高々とジャンプする、そんなシンガーが、長谷川雅洋だ。彼の歌唱力の高さについては、百聞は一見に如かず、ぜひともシングルを聴いてみて欲しいところだが、ライブを観ていて感じたのは、この集団の個々の主役を紡ぐ力、さらには、観客とも一体になろうとする包容力の強さだ。つまり、観客ですら傍観者にはさせず、主役の一人にならしめようという彼の姿勢によって、Be Choirの歌声は、聴く者にとって、いつのまにか自分の歌声と同化していく。そんな感覚になれることが、Be Choirライブの醍醐味なのだろう。
「「天涯 ~そらのはて~」は、我々が常に感じている、人は誰でも感じることのある郷愁、故郷などをテーマに書きました。我々は一体、どこまで行くのだろうか。そして、僕たちが観ている夢はどこまで行くのだろうか。そういった、ノスタルジックな曲になっています。誰でも感じる心の中にあるノスタルジーへ訴えるような曲を書いたつもりです」――売野雅勇
そして長谷川も、この日のライブを締め括るかのように、バラード調のピアノのイントロをバックに、MCでこのように語った。
「この曲は、いろんな方の想いが込められていて、僕も、故郷というか、父親や母親を思い出すような歌詞になっています。きっと、皆さんにも届くものだと信じて歌いたいと思います」――長谷川雅洋
こうして本編を終えると、アンコールの拍手に応じて、再びメンバー全員がステージに登場。「聖なる人」を歌い上げると、最後は、ゲスト・ボーカリスト、そしてダンサーも総出演で「Joyful,Joyful」が歌われた。この曲で、ソロ・パートを歌い上げたmerryleyの抜群なボーカル、楽曲にキュートで華やかな彩りを添えたダンサーたち、力強くグルーヴを支えたバック・バンド、そして何よりも、この日の主役であるBe Choirのクワイヤに、気が付けば観客までもが総立ちとなった。
まさに売野氏のコメントに凝縮されたような、音楽の喜びと楽しさがあふれ出した、実に爽やかで華やかなラストシーンであった。
取材・文:布施雄一郎
1stシングル「天涯 〜そらのはて〜」
発売日:2018年5月23日(水)
SMCD-0001 ¥1,200+税
【収録曲】
1.天涯 〜そらのはて〜
2.Echo
3.雑草の勇者
4.聖なる人(Live Recorded at ゴスペルVol.2 on 2017.9.30/Piano by David Matthews)
【iTunes配信】
https://itunes.apple.com/jp/album/1392228143?l=ja&ls=1&app=itunes
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