【ジュリアナの祟り
ライヴレポート】
『~第54週目~ 風雲!バブル城
ビヨンド最終決戦!ワンマンRAVE
「向かえ!殿のお膝元」』
2018年4月12日 at マイナビBLITZ赤坂
2018年4月12日 at マイナビBLITZ赤坂
CDもちゃんとリリースしていないインディーズバンドが、BLITZでワンマン。これまでにもフリーライヴは当たり前で、逆に3円あげちゃうライヴなど、誰もやらないバブリーなライヴを“誰もやってないし、面白いから”と、やり続けてきた彼ら。この日もステージセットの階段やのぼり旗、バックに映し出す映像やスタッフTシャツなどを自作して、大赤字覚悟で開催した。しかしフタを開けてみれば結構な動員数。これはジワジワとキテるかも? と思わせてくれた。
“バブル時代の高揚感を現代に甦らせる”というコンセプトのもと、通常ではタブーとも言えるお金にまつわるネタが随所に散りばめられている。たとえばライヴのかけ声は“バブリ〜!”で、サイリウムの代わりにジュリ扇を振り、曲によっては紙吹雪のようにお札がばらまかれるといった具合(しかもお札は今回のためお金をかけて発注したメンバー写真入りのオリジナル)。観客を煽る言葉も普通なら“みんなまだまだイケますか~”だが、ここでは“みんな、まだまだお金出せますか~!”だ(笑)。笑顔で“ハーイ!”と応える観客は、実に笑いを分かってるとも言える。タブーを笑いに変えるのはお笑いでも常套手段で、たけしさんもそのあたりをしっかり見抜いた上で、“ジュリアナの祟り”と命名したのかもしれない。
ライヴは、アンコールを含めて全21曲を披露した。紅一点=蕪木蓮(Vo)が美声をふるって聴かせる歌謡曲風の曲もあり、バラードの「キミリウム」では、観客がうっとりとその様子を見つめる。パフォーマーの佐川 ネル 秋吉の軽快な煽りと、翌桧 ダンク 冬雪(Pf)の持つ巨大なカンペに導かれ、ステージと観客が一体となって踊って歌うダンスナンバーは、ジュリ祟ライヴの真骨頂だ。「【事勿れ主義】SNSメッセンジャー【痛い人】」という曲では、卍ポーズを取り入れた振り付けや、アイドル現場でよくあるミックスをジュリ祟流にアレンジしたコールをみんな大声で叫ぶ。終盤には、ジュリアナ東京を彷彿とさせるバブリーなトランステクノもあり、パラパラのようなダンスを一緒に踊って楽しむ。それら楽曲の合間には、さまざまな映像や“ヘドバン講座”などバラエティ要素も入り乱れ、そのカオスが他のライヴでは味わえない未体験の楽しさを生んでいた。まさしく新感覚の体験型ライヴといった感じだ。
しかし、せっかく夜なべして作ってきた映像が出せなくなったり、「寝子life」の間奏中に観客の背中を渡って反対側へ行こうとするも失敗するなど、さまざまなトラブルも発生。今回一番頭を抱えたのは、たけしさんのお膝元ということでBLITZを会場に選んだのだが、直前になんとたけしさんがオフィス北野を退社してしまったこと。なぜ赤坂なのかという根本を揺るがすこの事態ではあったが、持ち前のポジティブシンキングで笑い飛ばし、新事務所に乗り込むという動画のネタにまでする始末。“何としてもたけしさんにゲスト出演してほしい”という熱意が少しは伝わったのか、ロビーにはたけしさんからの花が届いていた。
アンコールも歌い終え、すべてのプロデュースを手がける江夏亜祐(Dr)は、“こんな素敵な光景をありがとう”と、無謀なチャレンジについてきてくれたたタタラー(ファンの愛称)への感謝の気持ちを口にした。“BLITZは、我々バンドマンにとって感慨深い所。一生かかっても行けない場所で…”と思わず涙で言葉を詰まらせる。“1年前は100人規模のライヴハウスを埋めるのが手一杯で、その前は2~3人しかいなかったのに。それが今、上までいっぱいにしてくれて…自分で俺は天才だ、なんていつも言いますけど、本当は自信なんてなくて。でも、そう自分に言い聞かせなければ立ってられなかった。だけど、今はみんなのお陰でここに立ってられます。本当に有難うございます。日産スタジアムまで俺が連れて行くんじゃなくて、俺はただ、みんなの手を引っ張っていくから!! みんなが連れて行ってください! よろしくお願いします!”と、決意を新たにした江夏。“今回はシーティングだったから寝子life渡りきれなかったんで次はスタンディングでもっとギュウギュウにして走って渡って帰ってきたいと思います!!”と、もちろん最後には笑顔で締め括り。
BLITZワンマンという目的を遂げ、さらにここから始まるジュリ祟の新章のスタートを、高らかに宣言するライヴになった。
撮影:株式会社 撮れ高/取材:榑林史章
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