【西川貴教 インタビュー】
いかにして限界値を超えられるかを
試されているんだなって
西川貴教
昨年デビュー20周年イヤーを終えたT.M.Revolutionが、西川貴教名義での新プロジェクトを始動。第一弾「Bright Burning Shout」では作詞に田淵智也、作曲に神前 暁(MONACA)を迎え、T.M.Revolutionとは違う史上最強のヴォーカルを響かせている。
今作は西川貴教名義ですけど、何かT.M.Revolutionとの明確な違いはありますか?
T.M.Revolutionとして昨年5月に20周年記念イヤーを完遂しまして、ここで改めて自分磨きというか、枠にとらわれない活動を積極的に行なっていこうと思ったんです。実際に今回の楽曲「Bright Burning Shout」では、今までありそうでなかった楽曲アプローチで、新しい自分の可能性が発見できたと思ってます。
T.M.Revolutionより、すっぴんに近いような感覚?
今回は僕の声を素材として、そこにどういった作詞家と作曲家を組み合わせるかの妙も楽しんでいただければと。生身ではあるけどボーカロイドのような感覚ですね。僕自身の声を素材としていろいろに遊んでほしいと。
その第一弾として今回は作詞をUNISON SQUARE GARDENの田淵智也さん、作編曲を神前 暁(MONACA)さんが。
アニメ『Fate/EXTRA Last Encore』という作品とのタイアップがありきだったので、そこに寄り添いながら新しいものを生み出すというところで、同作の劇伴を担当している神前さんと、『イナズマロックフェス』に出てくれたことはあるけど、一緒にやることは想像もしていなかったUNISON SQUARE GARDENの田淵くんに白羽の矢を立てました。神前さん、田淵くん、そして僕という、音楽界でもアニメ界でもパワーのある満貫がずらりと並んで、そこに『Fate』シリーズというドラが乗った、数え役満みたいなラインナップです(笑)。
田淵さんからは“強めの言葉でも西川さんの歌の説得力で成立すると思った”とコメントがありましたが。
“Bright”と“Burning”と“Shout”と個々でもインパクトのあるワードがひとつになっていて、最初にこのタイトルを見て“マジか!?”と思いました(笑)。でも、このプロジェクトってざっくり言うと大喜利みたいなものだと思っていて。お題を与えられてどう整えるかみたいな(笑)。いかにして限界値を超えられるかを試されているんだなって。
いきなり限界を超えちゃいましたね。タイトルを何度も叫ぶサビメロが頭から離れません。
我々はアニメを観て育った世代ですからね。それこそロボットアニメでは必殺技の名を大きく叫ぶみたいな(笑)。
“ロケットパーンチ!”って。
そうそう。“ブレストファイヤー!”みたいな。そういうノスタルジーも少し感じたりして。そこは1周も2周もして、『Fate』の視聴者だけじゃなく、世代を超えて楽しんでいただけるものになっていると思います。
また、“Bright Burning Shout”という言葉は、西川さんの声のことを言い得ているようなところもあって。
これが西川貴教としての1stシングルですから、スタートに相応しいタイトルじゃないかと思いますね。西川貴教の声という素材を見事に言い表したワードでもあるかなと。
楽曲というところで、神前さんの曲を聴いた印象は?
非常にゴシックな世界観で、ポップスではあるけどどこかクラシックな雰囲気があり、アカデミックな曲だなと思いました。歌唱曲ではあるけどオーケストレーションだけでも成立する、壮大で厚みのあるアレンジも秀逸です。
それにしても、このメロディーは聴くとすごく親しみやすいですけど、実際に歌うのは相当難しいですよね?
ミュージシャンの後輩からも“こんなのよく歌えますね”と言われるくらい技術的にも難しい楽曲ですけど…神前さんからは“普通はこういうオーダーはしないんですけど、やってみていいですか?”と言っていただいて、見込んでくれていると言いますか、できる前提で作ってくださっていて。
“西川さんなら余裕ですよね?”と言われたら…
“もちろんです。やりましょう!”となりますよ(笑)。
作る側も普通は作れない曲が作れる楽しみがあると。
神前さんも作家としてのリミッターを外して臨んでいただいたところがあると思います。実際にカップリング曲の「awakening」は、譜面を見ると臨時記号が山ほど出てくるんです。非常に難解ですけど、歌ってみると気にならず、むしろ歌いたくなる。実際に歌って気持ち良かった。
その「awakening」はDメロが実に独特ですね。
そこはラテン語で歌っていて。オペラみたいですね。実際に神前さんの知人のオペラ歌手の方が本場のラテン語で仮歌を録ってくださって、それを聴いて参考にしながら歌いました。歌詞カードではわずか2行という短いフレーズなんですが、アクセントの置きどころとか発音とかがすごく難しかったですね。でも、このパートがあることによって、より歌劇という印象が強くなっていると思います。
どこか民族っぽさも感じましたけど。
8分の6というリズムが、そう感じさせるのかな。ワルツの印象もありながら、それでいてゴシックでロックなアプローチにもなっていて。良い意味でちょっと懐かしいイギリスのハードロックのような感じもありますね。作詞の毛蟹さんはこれまでも『Fate』シリーズの楽曲でたくさん歌詞を書かれている経験のある方で、より『Fate』という作品の世界観に寄り添いながらも新たな視点で聴くことのできる楽曲に昇華できたと思います。
さて、今後についてはどんなふうに考えていますか?
このシングルを聴いていただいて、“こういうことができるんだ! こういうことをやっていいんだ!”と追随して手を挙げてくださる作家さんが増えたらいいなと思います。
どんどん曲の難解さとレベルが上がりそうですけど。
そこは少し不安ですけど(笑)。逆に、だからこそやる意味があるプロジェクトだと思います。今後どんなカードを切っていくか、ワクワクしながら楽しみにしていてください。
取材:榑林史章
「Bright Burning Shout」web CM
アーティスト
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