【BRIAN SHINSEKAI インタビュー】
80〜90年代のポップスと
EDM以降をつなぐアーティストは
自分でも面白いと思う
BRIAN SHINSEKAI
10代から“ブライアン新世界”名義でアーティスト活動を開始した彼が、改名して新プロジェクトを始動。80~90年代のポップスをベースにEDM以降の音像で、郷愁とシュールさを併せ持つ世界観を表現する音楽性の背景を探る。
新たなプロジェクトとしてスタートされた動機はどういうところなんでしょうか?
ジャンルは比較的幅広く吸収するほうではあるので、かなり広くアウトプットしてきたんですけど、2017年の直近の音楽シーンもある中で、自分が作りたい、自分しかできない音楽と、今の時代を全て照らし合わせていった時に、80〜90年代のポップスとEDM以降の音楽をつなぎ合わせたような音楽を自然と作っていて、それがフィーリングが良かったんです。客観的に見ても、今の音楽シーンにこういうアーティストがいたら面白いだろうなと思いながら作り進めていった感じですね。
今作『Entrée』の「首飾りとアースガルド」のビートはカルチャー・クラブやデヴィッド・ボウイの「モダン・ラブ」を思い出しました。80’sからの影響だとどういうところが大きいですか?
80’sは70’sの濃い部分やロックスター然としたきらびやかなところと、シンセサイザー全盛っていうテクノロジー感のバランスが好きですね。しかも、実験的でありながらもちゃんとメロディーがある。ニューウェイブは歌モノが多いのでかなり影響を受けてます。
今回、配信でひと月に1曲ずつ先行配信するというスタイルをとられていて、発表する曲の順番も練られてるなと思いました。
アルバム自体にコンセプチュアルなストーリーが作ってあって、そのヒントを少しずつ出していって最終的に紐解けるようにっていう意味合いはあって。今みたいにサブスクリプション・サービスに勢いのある時代だと、先にアーティスト名とジャケットを出して、あとからピースを埋め合わせていくっていう、新しい面白みを作っていけると思ったんです。
特に最初が「首飾りとアースガルド」と「2045(Theme of SHINSEKAI)」という両極端な2曲だったのも面白い。
「首飾りとアースガルド」はエレクトロでありながら、ある種神話的でちょっとオリエンタルな響きもあって、このアルバムを作っていく上でかなり根幹になった曲なんですね。しっかり歌モノでこのアルバムでのBRIAN SHINSEKAIっていうものを表してる曲だと思うんですけど、「2045(Theme of SHINSEKAI)」はかなり実験的に作ってできた曲なので、懐古主義なだけではないっていうところを同時に見せたかったというところはあります。
「東京ラビリンス ft. フルカワユタカ」のイントロのギターリフはプリンスの「Kiss」か!?と。
おっしゃる通りですね(笑)。ヒップホップのケンドリック・ラマーの感じというか、他ジャンルから持ってきて自分なりにミックスしていく感覚っていうのも、かなり2017年に入ってから自分の中で身に付いたもので。前だったらそういうことはしなかったんですが、プリンスが亡くなったということもあって、敬愛の意を1秒でもいいからこういうかたちで表すことによって、曲の意味性が深まるんじゃないかと思って、あえて突っ込んだりしてますね。
ニューウェイブの歌モノ的な影響が大きいとおっしゃいましたが、本作の音像の中でもブライアンさんのヴォーカルの存在感は大きいですね。
トラックメイキングのみをやってきた人間というよりかは、ヴォーカルとして歌を歌ってきたので、そこに対しては自然なんです。トランシーなビートで踊らせる光景よりは、自分の意思が伝わる音楽をライヴで聴いてもらってる様子がイメージとしてあるし、あくまで詞とメロディーが根幹にあるというか。そういう意味ではエレクトロでありながら、無機質なエレクトロではないかもしれないです。
アルバム全体にコンセプチュアルなストーリーがあるとのことですが、ブライアンさんとしてはどういう体験というか、何かを仕掛けた意図はありますか?
基本的にある男女の物語になっていて、それはフィクションではあるんですけど、自分の人生観とかを落とし込んでる感じですね。フィルターを通したほうが自分の感性を生々しく表現できたりとか、より深くなるっていうことは以前にも経験したことがあって。一貫して全て同じ男女が登場してるストーリーになっていて、場所は違うんですけど、アルバムをフルで聴いた時に合点がいくと思います。1曲目から最後の曲まで時系列がそのままになってるってわけではないんですが、出会いのシーンはどの曲なのかとか、どこで衝撃的な出来事が起こったのかとか、そういうのは曲を聴いて音色だったり歌い方で紐解いていただけたらまた面白く聴けると思います。
言葉のセンスも独特なものがあって、例えば「クリミアのリンゴ売り」。そのタイトルには不思議なデジャブ感があります。
そういうのはタイトルを考える時や歌詞を考える時に、多少意識はします。今までにこういう曲名はないと思うんですけど、そこはやっぱり海外のエレクトロポップだったり、ニューウェイブだったり、ニューロマンティックが好きでありつつ、J-POPも歌謡曲も大好きでっていう、そういった音楽の好みがミックスされてこういうタイトルが自然と出てきてるのかもしれない。
ラストの「トゥナイト」には90年代の小室哲哉さん的な音像やビートも感じます。
ありがとうございます。小室さんはTM NETWORKでやっていらした頃はハードロックの影響が強かったと思うんですが、その中でも日本人として一番良いと思うメロディーを追求していらっしゃったと思うんです。僕も同様にハードロックの影響は受けていますし、サウンドにトレンドを次々に取り入れる中で、トラディショナルなロックな部分も入れているので、もしかしたらバランス感としては近く感じていただける部分があるのかもしれないですね。
ロックやエレクトロの取り入れ方が全部ポップスとしての強度に昇華されているというか。
最終的なアウトプットはポップスとしてっていう意識で作っているので、そういうふうな意識で聴いてもらえたり届いたらいいなと思いますね。
取材:石角友香
「トゥナイト」MV
/アルバム『Entrée』ティザー
アーティスト
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