【The Floor インタビュー】
泣けるんだけど、体が自然と動く音楽

L→R ササキハヤト(Vo&Gu)、ミヤシタヨウジ(Ba&Cho)、コウタロウ(Dr&Cho)、永田涼司(Gu&Cho)

北海道札幌市在住の4人組、The Floorが完成させたメジャー1stアルバム『ターミナル』。爽快感抜群のヴォーカル、雄大なスケールを描く曲調、切なくも心温まる音色を封じ込めた、バンド史上最高に外に開けた極上のポップ作となっている。

メジャー1stアルバムが完成しましたね。全曲新曲という内容ですけど、最初のアルバム像はどんなものでした?

ササキ

“泣きながら踊れる”みたいなイメージがあって。泣けるんだけど、体が自然と動く音楽をやりたくて、今回もそれは意識しました。ただ、メジャーに行くタイミングでいろいろ考えすぎて上手くいかないことも多くて…。それを乗り越えた作品ですね。ちょっと開けた印象はありますね。

泣きながら踊れる感じは結成時から意識していたこと?

ミヤシタ

徐々にですね。最初はライヴも内向的だったけど、2年前に「リップサービス」という1stシングルを出した時に、曲もライヴも外向きになったんですよ。

ササキ

あと、メンバー4人が海外のインディーロック/ポップスにはまって。メロディーは切ないんだけど、演奏はポップみたいな。ライヴを重ねてきて、キラキラした顔で観てくれるお客さんも増えましたからね。

外に開こうと思った時に何が一番変わりました?

永田

今までも意識していたけど、聴いて5秒でいいと思う音楽というか、即時性やキャッチーさをさらに意識しました。それと同時に、じっくり流れを作ってメロディーに持って行く挑戦もできましたからね。

今作はそのメリハリも付けられたと。The Floorの音楽はこのジャンルと言えないところが面白さだと思うのですが、お客さんにはどんな感想をもらうことが多いですか?

永田

“さわやか”とはよく言われますね。僕ら自身はあまりさわやかとは思ってないんですけどね(笑)。

ササキ

さわやかに歌おうとは思ってないけど、楽しい感情は大事にしたい。

聴く時の精神状態で受け取り方が変わる音楽だなと。そのグラデーションの幅が魅力のひとつだと思います。

永田

切なさと明るさが同居するみたいな。その日によって耳が行くところが違ったり…聴く人の感覚を大事にしてほしくて。僕らは景色みたいなものを提示できればいいのかなと。

コウタロウ

ただ泣ける、ただ踊れる、というよりも、1曲の中に多くの要素が詰まっているほうが楽しめるから。

それは聴いてる音楽の影響も大きい?

永田

10年代に出てきたシンセポップ系の音楽は好きですね。パッション・ピット、ヴァンパイア・ウィークエンド、トゥ・ドア・シネマ・クラブ、The1975、ウォーク・ザ・ムーンとか。エレポップだけど、メロディーは切なくて心にくるみたいな音楽に、みんな青春を感じちゃって。

コウタロウ

『サマソニ』に行って、みんなで同じアーティストを観て、やばいね!という気持ちも共有しているので。

このバンドは青春性も大事にしているそうですね。

ササキ

自分たちが持ってる青春性…楽器を始めた頃、純粋に好きな音楽を聴いた時の気持ちとか、音楽が好きだ!という感情を突き止めていきたくて。

ミヤシタ

無敵感じゃないけど、この4人で音をジャーン!と鳴らした時に何でもできそうに思うみたいな、その感覚は今後も失くさないようにしたいですね。

永田

普段キラキラしてないから、キラキラしたものに憧れがあるのかもしれない。そういう音楽に憧れがあるので。

なるほど。今回の曲作りはスムーズに進みました?

永田

まったくですね(笑)。頭でっかちになって、視野が狭くなって、それを打開したのが“全員ででかい音を出して楽しい!”みたいな感覚だったんですよ。それこそ青春感というか。

ササキ

その上で、みんなの拠り所になれるような音楽を目指しました。アルバム名の“ターミナル”というのは、みんなが集まって、それから先に向かって走り出す場所だから、未来に期待できる作品にしたいなと。いろんな人に向けて“全部を包み込むよ”という気持ちで作りました。

今作は多彩な楽曲が揃ってますが、新しい挑戦というと?

コウタロウ

「Wake Up!」はひとつのドラムフレーズをループさせたんですよ。それは新しかったですね。

永田

あと、「イージーエンターテイメント」もシンセを入れてますからね。ここまで入れた曲は珍しいですね。

ササキ

単純に転調は今までなかったけど、「18」「Flower」ではやってますからね。あと、歌詞に関しては自分の主観で歌うことが多かったけど、「煙」は自分が思ったことじゃない、誰かの物語を自分の感覚で書けたなと。

ミヤシタ

それと、今まで“君”という言葉が歌詞の中に出てきたけど、「ファンファーレ」はそれが出てこなくて。自分を鼓舞する歌詞はあまりなかった。

ササキ

そうだね。「18」もそうだけど、自分にとって始まりの歌になればいいなと。人間がいて、こういう歌が生まれて、聴いてくれる人がそれを置き換えてくれたらいいなと。自分勝手な歌詞は僕らの中では新しいですね(笑)。

なぜそういうアプローチになったんですか?

ササキ

制作にあたって挫折があったから、何かから脱却したい気持ちもあって。良いことも悪いことも自分次第だから、その全部を包み込んで俺は前に進みたいと思ったんですよ。その意味で自分自身、より素直になれたかなと。

より生々しい感情が出てきましたね。「Wake Up!」の童謡っぽいやさしいメロディーもすごく良かったです。

永田

童謡も小さい頃から好きで、もともと女の子が歌うような感じをイメージしてて。今、ハヤトが歌ったらいい感じで聴かせられるかなと。

ササキ

この曲を含めてもっとポップに、もっとリズミカルに、今まで以上に歌い方ひとつにもこだわりました。

では、今作のレコ発ツアーに懸ける気持ちを!

永田

音楽以外のことは考えられない。その空間自体がアホみたいに楽しめる場所にしたいですね。

ササキ

無になるというか。カッコ良い、楽しい、感動する…とか、音楽が全てみたいな気持ちになれたらいいなと。

取材:荒金良介

アルバム『ターミナル』 2018年2月7日発売
ビクターエンタテインメント

  • 【初回限定盤(DVD付)】
    VIZL-1307 ¥3,241(税抜)
    【通常盤】
    VICL-64925 ¥2,315(税抜)



『The Floor Presents 「In Train Tour」』

3/09(金) 北海道・札幌Sound Lub mole
3/20(火) 大阪・心斎橋Music Club JANUS
3/23(金) 東京・渋谷WWW

The Floor

ザ・フロア:2012年10月に結成された北海道札幌市在住 4人組ロックバンド。海外インディーロックの系譜を持った世界水準のサウンドと抒情的かつ温かな歌声が絶妙なバランスで共存し、無邪気に“音”と遊ぶバランス感覚はフェスシーンからJ-POPシーンまでを横断する。18年2月にアルバム『ターミナル』でメジャーデビューを果たした。

「18」MV

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